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110 第二王子の招待

 駆け出したシエルとクレア。

 兵士も姿が見えず、あっという間に城壁を越えた2人。


「お待ち下さい」

「っ!?」


 その2人の目の前に、いつの間にか現れて声をかけた男性。


 過程もなくいきなり姿を見せた男性に驚きつつも警戒する2人。

 だが、男性は優雅な佇まいを崩さず、構えるどころかこちらに頭を下げて見せた。


「いきなりの事に驚かせてしまい申し訳ございません。ですが、抱えられた少年は早く治療した方が宜しいと思いまして」

「……」


 まるでお手本のような流麗な会釈から顔を上げ、警戒する2人に言葉を続ける。


「もし宜しければ、主人の命により私が治療をさせて頂きたく存じます」

「…主人とは?」

「はい、帝国第二王子、ブロズ様にございます」

「…っ!」


 その言葉に顔をしかめて警戒を強めるシエル。

 だが、クレアは数秒考えるように黙り込み、そして口を開く。


「……わかりました、お願いします」

「クレア姫?!」

「承知しました」


 シエルは信じられないものを見るようにクレアを見るが、クレアはそれをしっかりと見つめ返す。

 その瞳は信じろと言うかのように力強く、シエルは押し黙ってしまう。


 その間にこちらに距離を詰めた男性は、シエルに抱えられたままのロイドに手を翳す。

 シエルはいつでも動けるように構えていたが、男性はシエルへ微笑みかけつつ魔法を発動させる。


「『魔力譲渡』『天恵』」


 詠唱破棄で発動された魔法。

 それによりロイドの傷はみるみる内に治っていき、顔色も少し良くなったように見えた。

 その様子を油断なく見ているシエルに、クレアは話しかける。


「第二王子は現皇帝のやり方に反発していたようです。それにより軟禁されている、というのを帝城で聞いた事がありました」

「……そうなんですね」


 シエルは男性とロイドから目を離さず返す。が、目に見えて回復していくロイドにだんだんと警戒心は消えていた。

 その目の前で、男性は魔法行使を止めて2人に向き直る。


「さしあたりの治療は終わりました。あとは安静になされば大事はないかと」

「助かりました」

「……ありがとうございます」

「いえ。それより、差し出がましい話ではございますが、もし良ければ主人の元でお休み頂けませんか?」


 男性は人の良い笑みを浮かべる。

 なんとなく断り辛い、そんな風に思わせるそれに、シエルは黙り込むが、反対の気持ちが大きい。


 クレアとしてもさすがにそこまで気を許した訳ではなかったので断ろうとする。


「いいぞ。案内しろ」


 だが、いきなり割り込んだ声にそれを防がれた。

 シエルもクレアも、そして男性すらその気配に気付かなかった為ばっと声の方に目を向ける。


「その代わり美味いもん食わせてくれ」


 集まる視線に構わず続けて要望なんかも言っちゃってるのは銀と黒を纏う男、レオンだった。

 その立ち姿に滲む強者の風格に、男性とクレアは息を呑む。対してシエルは肩の力が抜けたように頷いた。


「えぇ、そうしましょう。私もお腹が空きました」

「…かしこまりました。では、こちらへ」


 了承を受けた事で戦慄した様子をすぐに引っ込めて歩き出す男性。なかなかプロである。


 一方、クレアは一転して警戒心を露わにする。まるで猫のように警戒するクレアに、シエルが声をかける。


「クレア姫、あの方は『国斬り』です」

「『国斬り』?」


 首を傾げるクレア。

 そんなクレアにレオンは淡々とした様子で言う。


「俺はレオンという。簡単に言えば通りすがりの不死身で、ロイドの面倒を見ている」

「レオン様、私はクレアと申します。宜しくお願いしますわ。ところでせんぱ…ロイドさんについて色々お伺いしたいのですが!」


 先程の警戒はどこへやら、即座に優雅な振る舞いで自己紹介。

 さらにはすっと詰め寄り至近距離で眼を輝かせて問い詰めるクレア。


 さすがのレオンもこれには予想外だったのか、目を丸くして言葉を失う。

 そして何とも気の抜けた沈黙の後、レオンは吹き出す。


「ぶっ、はっはっは!面白い姫さんだな。クソガキが必死に助けようとするのも分かる」

「クソガキという言葉は今だけ聞かなかった事にして、ぜひお話しをお伺いしたいのですが!」


 語尾を同じくして詰め寄るクレアにレオンは笑いの余韻を残したまま頷く。


「おう、色々面白そうだしな。いいぞ」

「ありがとうございますわ」


 優雅にお辞儀をかましちゃうクレアと楽しそうなレオンに、シエルは呆れたように言う。


「分かりましたから、とりあえずご飯にしませんか?ロイドくんも休ませないとですし」

「そうだな」

「もちろんです。さぁ行きましょう!」


 シエルはそれは見事な切り替えに溜息をつきながら、先を歩く男性を追ったのだった。


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