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100 略奪

 一瞬の出来事だった。

 光が瞬いたかと思えば、己の魔術が霧散した感覚と同時に腹部が熱いと感じた。


「ぐっ…!」

「はははっ、驚いたかな?」


 左の腹部を手で押さえて後退るロイドに、ジルバは嬉しそうに問いかける。


 ロイドは返事をする事も出来ず、取り乱しそうになる頭の冷却を図る。

 何が起きた、と慌てそうな頭で必死に考察する。


 痛みで思考が鈍るが、どうやら致命傷ではないようだ。内臓がやられたらこんな痛みではないはず、とロイドは適当極まりない自己診察で判断する。


 問題は今の攻撃だ。

 左手が光ったと思えば風の魔術とともに腹部をやられていた。


 ジルバの手を再び見やるが魔法具のような物は確認出来ない。

 では魔法かと推測するも、そのような魔法はロイドの知識にはなかった。


 あまりに不可解な状況にロイドは舌打ちしたくなる。


「何が起きたか分からないようだね。まぁそれも仕方ない事さ」

「……うるせぇよ」


 ロイドは吐き捨てるように返すが、切り口さえ見えない状況には変わりない。

 ジルバの挙動に注意してはいるが、攻める事はおろか動く事すら出来ずにいた。


「威勢は良いね」


 嘆息混じりにジルバはさっと右手をロイドに向ける。

 来る!とロイドは光が瞬くよりも早く、即座に風を全力で操りサイドステップで射線から外れようとした。


「くっ…」

「はははははっ!粘るじゃないか少年!」


 しかし躱し切れない。左肩を掠めるように抉る何か。

 服は焼き切れたような穴が空き、その下の肩から血が流れて腕まで伝っていく。


(目視も出来ない高速の攻撃に、焦げるような匂い…)


「もしかして、レーザーかなんかか…?」

「れーざー?ふむ、頭が沸いて言語が曖昧になってるのかな?」

「メイドごっこで悦に浸るお前にだけは言われたくなかったわ」


 ロイドは軽口のように毒を吐きながら考察を続ける。


 この魔法を連発されれば為す術なく倒される。

 だが、それをして来ないのは魔力の使用量が多いのかそもそも連発出来ないのかといった理由があるのではないか。

 

 もし余裕を見せつけてる為にあえてしていないのであればお手上げだが、今は前者の可能性に賭けるしかない。


 それにしても、だ。

 ラピスしかり四大魔法以外の魔法を扱う者が居る事は知っていた。

 しかし人族は基本四大魔法と身体魔法以外使えない。

 

 その為それら以外の魔法となればスキル等による魔法適正を外付けしないと扱えないとされていたはず。


 そうなれば、御光と呼ばれる防御のスキル。洗脳のスキル。この二つに加えてさらに特殊な属性魔法の適正スキルまで保有しているという事になる。


 そんなことがあり得るのか?とロイドは疑問に思う。

 であれば、確かめてみるしかない。


「しかしまぁ、スキルを3つ以上持つヤツがいるなんてな。正直驚いたわ」


 とりあえずカマをかけてみよう。ものは試し、という感覚で言ってみると。


「ははははっ!さすがに気付いたかい?そう、僕は選ばれし者なのさ!だからスキルを5つも扱う事が出来る!」


 あっさりと言いやがった。とロイドは内心呆れる。

 だが、その内容は呑気に小馬鹿にしていられるものではなかった。


「5つ…?!」

「そうさ!とは言え元は1つのスキルだったんだがね。スキル略奪、他人のスキルを奪う事が出来るスキルさ!」


 ロイドは動揺を隠せない。

 略奪がどういった条件なのかは不明だが、下手をすれば自分のスキルさえ奪われかねない。

 それがされなかったにせよ、これだけ窮地に追いやられているにも関わらずまだスキルをーー残り2つの内1つが略奪としてもあと1つ隠し持ってるというのだ。


「君が嫌がってるこのスキルは光魔法適正というものだよ。天使が扱うとされる属性魔法さ」


 悪役よろしく自分の手札を意気揚々と話すジルバに、しかしロイドはバカだなこいつと普段のように思う余裕はない。

 

 むしろ、絶望的な気分になりそうだった。


「扱いは難しいのが厄介だが、威力は見ての通りさ。さて、君がどれだけ粘れるかが楽しみだよ」


 そう言いつつジルバは再び手を翳す。

 ロイドは慌てて躱そうとするが、今度は右足を掠めてしまった。


「っ!くそが…!」

「ははははっ!大丈夫かい?脚をやられては躱せるものも躱せなくなるよ?」


 腹立たしいがジルバの言う通りだった。ズキズキと痛む脚、これでは次は躱す事は出来ないだろう。

 だったら少しでも威力を削ぐしかない、と魔力を全力で練り上げて風を喚ぶ。


「風ごときで僕の光を防げるとでも?」


 そう言って放たれた光。それは風の鎧をいとも容易く貫き、


「……?」

「うん?」


 ロイドの体に傷を付ける事はなかった。


 なんとも間抜けな表情で首を傾げる少年2人。

 なんとも言えない雰囲気の中、美しい銀色が空から舞い降りる。


「………!…バカな…」

「…は?如月…?」


 それは銀糸のような髪を揺らしロイドのすぐ横に降り立った少女、如月愛――もとい、クレアであった。


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