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雲上のシャーマン  作者: 盥 朔楽
序章
1/1

#01 前史


──1979年。


こう言われて、多くの人は一体何を頭に浮かべるだろうか。


WHOによる天然痘撲滅宣言、米中国交樹立、サッチャーの首相就任……


歴史的な出来事は数あれど、その中でも印象的なのは12月のソ連によるアフガン侵攻だと答える人が多いだろう。


兵力差およそ10万。ソ連は腐敗しているとは言え近代的装備に縦深戦術などの完成された戦術を使う、アメリカと覇を競う世界の軍事大国だ。


対するアフガニスタンは貧相な装備に、マトモとは言えない指揮系統。


勝敗は、誰の目にも明らかだった。


しかし、蓋を開けてみればソ連軍は総兵力12万のうち、4万人を失う大損害を受け、何の成果も得られず撤退。アフガニスタンの独立は守られたのだ。


この大番狂わせに、アメリカを始めとした西側諸国は歓喜するよりは呆然とした。何故、ソ連が何の支援も受けていないアフガン軍にあれ程の損害を与えられたのか。


すぐさまアメリカなどの西側諸国はCIAなどの諜報機関がアフガンに送り、現地調査を行ってその原因を調べようとした。


3年に及ぶ調査の後に行われた米政府による会見で明らかになったのは、今の軍事バランスを丸ごと変えてしまうかのような衝撃的な事実だった。


現地の言葉で《聖戦士》を意味するムジャヒディンと呼ばれた彼らは、大地を操る異能を持ち、アフガン軍は限られた彼らの力を生かして12万のソ連兵を打ち破ったというのだ。


この会見の後、各国では《霊能者》と呼ばれた者達が姿を現し始め、大地を揺るがし雷鳴を轟かせる異能を、国家に提供した。


多くの異能力者を用いた実験の結果、1990年代前半には《異能力》は素質があれば扱うことの出来る《技術》となり、広く大衆に受け入れられるようになった。


また、《異能》を研究していた者達は《霊能学者》と呼ばれるようになり、それ単体でノーベル賞が設けられるほどに急速に規模を拡大していった。


しかし、急な技術進歩は新たな戦争の火種となることを学んでいなかった人類は、愚かにも3度目の大戦を引き起こすこととなった。


第4次台湾海峡危機から始まった中ソを中心とした同盟国と、米英を中心とした連合国による第三次世界大戦は、核兵器の使用こそなかったものの、化学兵器や近代兵器─そして、《技術化》された《異能》を用いた、虐殺合戦となった。


たった12年の戦争で14億人の犠牲を出して2006年のワシントン講和会議で終結した第三次世界大戦により、人類人口は47億人にまで減っていた。


《無事な国などない戦争》と呼ばれたこの戦争により、敗戦国となった中国、ソ連は勿論のこと戦勝国となったアメリカやイギリス、フランスも国内復興に多大な時間を費やした。


そんな世界的不況の中で、いち早く息を吹き返したのが日本である。


比較的被害が少なかったこともあり、大戦時の虐殺などから疎まれていた《異能技術》の市場を切り開き、ファッション性のある《霊具》や、高機能な《霊具》などを異能武器の枯渇していたアメリカなどに売りつける事で経済復興を遂げたのだ。


国内経済が戦前と変わらない、むしろ伸びた日本政府が次に取り掛かったのは、《異能》関連の法制定と教育環境の整備だった。


「特殊技能を用いた犯罪に対する刑罰」などの、大戦時に問題となった異能を用いた犯罪の厳罰化や、「異能」を《神通力》、「異能力者」を《神通師》と呼ぶ事で統一し、表記揺れなどからくる混乱を防ぐことを行ったのだ。


これにより、大戦で悪化していた治安は急激に回復した。


しかし、異能犯罪の取り締まりで問題となったのが政府の持つ異能力者の数の少なさである。


過労死する異能力警官が出てきたこともあり、政府は当時の国家予算の2割と、国民からの基金を用いて神道総庁の管轄で「国民祈神高校」を設立した。


安定した《神通師》の供給が可能になったことにより、日本は《異能大国》としての地位をいち早く築くことに成功した。



──2010年代に起きた『東洋の奇跡』から50年。


2054年の世界は、再び冷戦期へと突入しつつあった。


ドイツでのファシズムの台頭、ソ連の後継国家であるロシア連邦で燻る共産主義、中華人民共和国の台頭、隣国・高麗共和国との対立。


そんな激動の時代の最中、国立第一祈神高校/通称”三鷹本校”に、1人の神通師が入学しようとしていた………

作者は魔法科を連載時から読んでいるファンなので、少なからずこれ見たと言うものが出てくるかと思いますが、優しい目でスルーして下さい。


あと、三戦とかマラッカ・ジレンマときたま気取った言葉が出てくるかと思いますが、作者は現代史や国際情勢、ミリタリーを少し齧ってるだけなので「違うだろ!いい加減にしろ!」と言う時はバンバンお願いします。

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