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水沢ながる短編集

HOUND

作者: 水沢ながる

 どうですか、たまにはいいでしょう、緑のある場所で食事をするというのも。

 本日の料理は、シェフが腕によりをかけたジビエです。ワインも、ソムリエに最高のものを選ばせていますよ。

 ほら、ジョン、おいで。……よしよし、いい子だ。ご覧下さい、これが私の飼っている猟犬(ハウンド)ですよ。

 まだほんの子犬の頃から育てて、ここまで立派に育ちました。毛並みもいいし、狩りの腕もいい。何より従順だ。最高の猟犬です。

 今だって、この通り私の横に控えて微動だにしない。忍耐強い子なんですよ。

 え? ジョンも一緒に食事をしないのかって? ジョンは利口な猟犬ですからね、今は控えているべき時だということをわきまえているんです。

 それに、ジョンは用心深い性質でしてね。一部のよく慣れた者が与えたものしか食べないんです。手ずから何かを食べさせることが出来るのは、この私くらいのものです。

 ……うん? 何だ、お客様との食事中だぞ。……ほう。なるほど、わかった。

 いえ、ノネズミが一匹、逃げているようでして。小さい奴でも、油断しているとこちらの蓄えを食いつぶされてしまいますからね、確実に捕まえないと。あいつらはなかなかすばしこいし、知恵も回る。

 ──ジョン。小さい獲物で悪いが、少し狩りを手伝ってくれないか。私はここでお客様と食事を楽しんでいるから、終わるまでに戻って来るんだよ。

 さあ、行きなさい。


 ……おや、ジョン、もう戻って来たのか。早かったね。

 どれどれ、……ちゃんと仕留めたんだな。よしよし、よくやった。ご褒美をやろう。

 ちょうどデザートが来たところだよ。そうだな、これがいいか。

 ほら、ジョン。食べさせてやろう。口を開けなさい。どうだ、旨いか。上質のチョコレートを使ったケーキだぞ。


「……はい、ご主人様(マスター)


 全く、おまえは従順で可愛いな。孤児院で会った時、おまえには才能があると見た私の目に狂いはなかった。

 ……何処の組織が潜り込ませたネズミかはわかりませんが、私の猟犬にはかないませんよ。この街でチンピラが河に浮かぶのは珍しいことではない。ニュースにもならんでしょうな。

 この屋上庭園は周りには高い建物もなく、天井や壁を囲んでいるガラスは全て防弾、防音機能も完璧です。

 つまり、ここで何が起こっても外には漏れることはありません。

 ……さて、デザートを食べながら商談の続きをしましょうか。何なら、食後のウィスキーもどうです? こちらもいい物が揃っていますよ。

 もちろん、私の従順な猟犬もご一緒させていただきますがね。

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