幼少期のハジマリ
ジルヴァは4歳になった。
一般的に会話の出来る年齢となった頃、流暢に喋れる子供は拙いだろうと思ったジルヴァは、近所の同い年くらいの子供のマネをしていた。が、それもそのうち嫌になって止めた。
子供のフリというものは、思いの外ジルヴァにストレスを与えたのだ。客観的になった瞬間の羞恥心に耐える事ができなかった。
今は愛想の良い、おませな口調の男の子という丁でのらりくらりと生活している。まわりの評価は前世と変わらず、上々だ。
とりあえず意思疎通に問題が無くなると、ジルヴァのやることはうんと増えた。
「“ステータス”……お、アナライズのレベルあがってら。アイテムボックスと同じでレベル9がカンストなら、あと2レベルか。長かったわー」
◆◇◆
ジルヴァ 4歳(LV.1)
種族:人間/リズヴェント王国-バルグート領:ヤトゥカ村
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職業:村民
属性:???
称号:祝福を与えられし者
【スキル】
・アイテムボックスLv.9/MAX(同アイテム99スタック可能。保有量:基礎レベル×5(現在5品目収納可)・鮮度低下無効)
・ジャッジメント Lv.7(鑑定)
・アナライズLv.7↑(識別)
【特殊スキル】
・-条件を満たしていません-
【魔法】
・火
・水
・風
・土
【ギフト】
・女神の祝福(???)
・神々の加護(各パラメータ上昇・経験値取得率上昇・言語及び文字の自動翻訳)
・死の神の守護(期間限定不死・老化によるパラメータ低下無効)
◆◇◆
以下HPやMPなどの定番のパラメータが並んでいる。
そう、ステータス画面を見られるようになったのだ。
初めてこの機能に気付いたとき、ジルヴァは非常に喜んだ。誕生日とクリスマスと正月が一気に来たかの如く。
ジルヴァは現状言葉にしてステータスを確認しているが、実は一々唱える必要はない。頭の中で言葉をなぞれば、普通に見る事ができるのだ。
その事実をジルヴァは知っているが、あえて言葉に出すようにしている。
その説明は追々するとして、ジルヴァがこの機能に気付いたのは1歳を目前に控えた頃だ。
気付いてからというもの、ジルヴァは淡々とスキルのレベル上げに励んだ。
ジャッジメントが対アイテム用、アナライズが対生物用のオープンソーススキルだ。この2つはレベルが低いと開示される情報に制限がかかり、使い始めた頃は品名や人名しか判らなかったが、これはレベル制である以上予想できたことだとジルヴァは一人頷き、地道にスキルアップを目指した。
こうした単純作業は苦ではない質であるし、むしろ有り余っている時間を潰すのにちょうど良いなとジルヴァはほくそ笑んだくらいだ。
RPGは、序盤の草原でレベル30位まで上げてから進めるタイプの男である。
アイテムボックスはその名の通り。
他人に関与される心配の無い保管庫であるこのスキルを持つ大抵の人間は、冒険者やポーター、商人。
さして珍しいスキルではないものの、これを赤ん坊が取得していることは珍しかった。
更に言えば鮮度低下無効はスキルレベルアップ時に超超超低確率で付与されるレア効果だし、保有量増加が自身のレベル依存なこと、スタック数が99なことはもはや異常だ。
保有量はアイテムボックスのスキルを取得した瞬間に確定するもので、以降スキルレベルが上がろうが、増加していくのはスタック数だけである。
つまり、当時チートが一番わかりやすく反映されている部分なわけだが、木片を出し入れして感動しているジルヴァ自身がそれを知るよしもなかった。
そして現在。
敏腕商人も真っ青な、審美眼と収納力を持つ子供に成長した。基礎レベルの関係上5品目に限るがスタック数は99だ。
アイテムボックスに関しては適当に物を入れておけば自動でパッシブ状態になりレベルが上がっていく。とはいえ、今のジルヴァにアイテムボックスのスキルレベルアップによる恩恵はない。これにはジルヴァも首を傾げるが、別にデメリットも無いので、アイテムボックスのレベルに関しては気にしない事にした。
通常こんなに早くレベルが上がる事はないが、有り余った時間と、神々の加護が大きく貢献し実現してしまった。
ただ、どんなに優れた能力を持とうとジルヴァはいまだ養われの身。
やろうと思えば、この年齢でも転売屋として大金を稼ぐ事が可能だろう。しかし、ジルヴァは戦える力を持たないうちは、チート能力を露呈させるつもりはなかった。下手をすれば家族を巻き込んで盛大な自爆をするかもしれないと思ったからだ。
冒険者になった暁には、一通りテンプレ的イベントを起こしてみたいとも思ってはいるが。
幼少期は幼少期らしく、のっぱら駆け巡って遊べばいい。それがジルヴァの持論だ。
つまり、やることが増えたといっても、能力値の底上げ云々ではなく日常生活に関しての事なのだ。
例えば、母親の畑に行き雑草を抜くのを手伝うだとか、父親が狩ってきた鳥獣の解体現場を見ているだとかそういったことだ。
2年前に産まれた弟、ギルの面倒も積極的に見るようにしている。
ラルガの仕事に関しては、まだナイフを持たせて貰えないジルヴァは観察しているだけだ。前世ではとんと縁のなかった事だったせいか、解体最中に吐き気を催す事もしばしばだったが、それもそのうち慣れたようだ。
「その歳から随分熱心だなぁ」
「うん。みるだけでも、勉強になるもんね」
「……! も、もしかしてジルヴァは狩人にな「冒険者にも、必要なぎじゅつなんだって」……そうかー。ジルヴァは冒険者になるのかー……」
ジルヴァから被せ気味に放たれた言葉に、ラルガは肩をがくりと落とす、なんてこともあった。
淡い期待ですら抱かせて貰えないその様はなんとも哀れである。しかし、ジルヴァは冒険者になりたいと明言しているのだからいい加減きれいさっぱり諦めればいいものをと家族の誰しもが思っていた。
もっとも、ラルガも半分位は諦めており、今はギルにどうモーションをかけていこうかと目下検討中だ。




