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辛くて愉快な珍道中。 ※毒キノコに始まりツッコミで終わる

この国は元々は東西南北4つの地方(又の名を土地)で構成されていた。今は西の地方が鬼に支配されているので、実質残りの3地方で成り立っている。そして西の地方に一番辺境が多く接しているのが東の地方だ。実質鬼の進行は殆どが東の地方が防ぐ形になっていた。


モモ、サル、チョウはその東の地方の西側つまり鬼側の土地、ノナーガ区の管轄に先日の戦の功績が認められ所属する事が出来た。



「あ? あー!!モモ兄また毒キノコ食ってる!」

いーけないんだーいけないんだー!毒キノコ食っちゃいけないんだー!


サルに注意されてムキムキマッチョの大男モモは固まった。


モモは腹が空いて美味そうだと思ったらなんでも口にする。そう文字通りなんでも。毒キノコでも毒リンゴでも彼には御構い無しだ。なぜなら彼の身体はとても丈夫だからだ。もはや丈夫とかの問題ではないとも思うがモモとはそういう男であった。


大声出したサルの前で顔を半分隠したチョウも振り返りモモを見る。


周りは木ばかりの森で、よく見れば彼方此方にキノコは生えている。目的地へは平野続きの道を幾つかの村や町を通りながら行くのが一般的なルートだが、今は最短距離を使って山越え中だ。この3人には山越えも平野と大して変わらない。

今3人はノナーガ区の最西にある村へ現状の視察という名目で向かっていた。一応、ノナーガ区長からの勅令だ。ついでに近隣の様子も見て、鬼の現状も確認する手筈になっている。ガタイ地方側の町村は其々のやり方で鬼の侵攻を防いでいるらしく、其処に新たな鬼の対策法があるのではと目を付けたのもある。


「前にも言ったけど、なんでも口にすんな!」

ーーーやるかなとは思ってたが、本当にやりやがった!

サルはビシっとモモを指差し


「一応やめろって行っただろ?

ぺってしなさい!ペッ!」

厳しく言う。共に旅に出てすぐ最初に毒キノコを食べた時はサルも驚いたが今ではもう慣れっこだ。それでも一応的確に指示を出す。


子供扱いされたのが気に食わなかったのか、プイと横を向くモモと呼ばれた男に

「そんな可愛らしい仕草してもダメ!

ムキムキマッチョの大男がやっても可愛くないから!キモいから!」

サルはズンズンとモモに詰め寄った。


「あん?」

モモが不機嫌そうに顔を向けるも


「それね!今食ってるやつアノヨダケって言って食ったら死ぬの!モモ兄以外死ぬの!あんただって腹壊すぐらいはするかもしれない猛毒なの!」

サルは唾を吐く勢いでまくしたてた。

「残りはポイしなさい!ポイ!」


その勢いにちょっと押されながらもモモは

「大丈夫、チョウがいる。」

とんでもない言い訳をする。

「チョウ兄を下痢止め代わりに使うなっての!」

「うん?」


巻き込まれたチョウが間抜けな声を出す。

顔半分を隠し唯一表情の読み取れる両目がパチパチ瞬いている。

(おーチョウ兄反応に困ってる。)


その横でプーイと横向いてモグモグ続けるモモ。サルはハァと溜め息をついて、水を飲んだ。



ゴッキュン、ゴッキュン、、



「あ?」


モモは水筒を持ってるサルを見て取り敢えず声を出した。


というか勝手に出た。キノコは食べ終わった。


「おい、サル。その今おまえが持ってる水筒は誰のだ?」


ギロリと睨むと


「え?やだなぁ?モモ兄、もうボケちゃった?自分の水筒も分からなくなるなんて。」


サルはすっとぼけてもう一度その水筒の中身を飲む。


「ふざけんなこの馬鹿!!なに人の水筒の中飲んでいる!!?おまえのはどうした!自分のを飲め!」


怒るモモにサルはヘラリと顔を崩して


「俺の終わっちゃったからさ」


テヘペロと舌を出した。

俺のありがたい忠告を無視した罰だ!ウキャキャ。


「こーっっんのっぶぁかざる〜」


ギリギリとモモが青筋を立てサルの頭を鷲掴みにし締め上げる。


「ぎゃぁぁぁぁ!頭が割れるぅぅ!」


とのたまうサルとモモの前に差し出されたのはもう1つの水筒。


「もうすぐ目的地だから。

モモ、俺のをやる。」


おそらく目的地の方に顔を向け、2人に顔を合わせずチョウが言った。


ーー!身体を張った甲斐があった!!ーー


チョウのちょっと分かりづらい優しさが発動した。最近、こうやってサルを助けてくれる?行動が増えたように思う。出会ったばかりの当初とは比べ物にならない程チョウは自分達に関わってくれるようになったのだ。先日もサルを庇うかの様に金さん銀さんとかいう男どもの前に立ち塞がってくれた。思い出してサルの胸は、ジィ〜ンと震えた。それとは対で頭はガンガン。でもそんなのカンケーねー!!!



「いや、大丈夫だ。それよりあとどれくらいだ?」


冷静に返しているのはモモ。モモはサルには厳しいがチョウには優しい。何故ならサルみたいにモモをからかわないから。

サルはチョウが好きだが、からかうとまっすぐ反応してくれるモモの事も大好きだった。


ここは東の土地ノナーガ区の最西。鬼に占領された西の土地ガタイ区と東の土地ノナーガ区の境目だ。


モモが言う。

「いいか!?

あの戦を取り敢えずだが、俺たちは勝利した。

だがこちらの打撃も大きい!

俺たちが動かずして誰が動く!

俺たちはピクニックしてるわけじゃないんだ!もっと緊張感を持て!」


(緊張感を持つのはあんただ。)

サルは心の中で突っ込む。


モモは青筋を立てて自分の水を飲んだサルとついでに横にいたチョウに説教をする。

毒キノコを食っていたのは完全に棚に上げていた。


サルは正座をして説教されるのは慣れっこであった。何故正座かというと、立っているのが疲れるから。

ちなみにチョウは肩に止まっている橙色の鳥に水をやりながら近くにいる岩に腰掛け聞いている。


この差。


「俺たちはどこに向かっている!?」

「鬼の出る西地方ガタイ区側にあるノナーガ区内の村です!」


「行って何する!?」

「鬼による侵略等ないか現状の視察です!」


「誰に報告する!?」

「ノナーガ区長です!」

「強いては?」

「皇様に伝わります!!」


質問にキビキビと答えるサルにモモは良しとようやく溜飲を下げた。



「ところで、モモ兄は皇様とノナーガ区長がどれくらい偉いか知ってるのか?」

今度はサルが聞いてみた。きっとよく分からないに違いない。モモがサルに確認したのは、ノナーガ区長から言われた事そのままだから、ちょっとお馬鹿なモモはきっと返答に困る!

体つきも逞しく顔も整いとても真面目。ただ、本人曰く記憶喪失。見た目は1番大人でしっかり者に見えるが、その実中身はポンコツなのがモモと云う男だ。よく分からなくて焦るがいい。


可愛い仕返しだろ?

ウキャキャキャキャ。



しかしモモは自信たっぷりで

「馬鹿にするな。ババ様より偉い。」

と胸を張り、サルをずっこけさせたのだった。



「大体は【ババ様よりも偉い】に入るっつーの!!!」

『っつーの!』『っつーの』『っーぉ』


思わず大きな声になったサルの声が山びことなって辺り一面にこだました。

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