※エピローグ※
初めての投稿です。
どうぞよろしくお願いします。
昔か未来か、ある所で戦がありました。そこは細長く伸びた大きな島。大陸よりもずっと小さく、島と呼ぶには大きい、海に囲まれた国の一点。
彼らは自国の事を日の国と呼び自分達を日の本の民と呼んでおりました。
其処は緑が溢れ、生き物がそれぞれ暮らし営み、人々も此処は楽園だと思っていました。
ーーーーそう、鬼が現れるまでは、、、。
カキン、キンと金属のぶつかる音、うあぁぁぁー!!と人の叫び声、悲鳴、怒声、、、
砂ぼこりの舞う中、手に剣や槍、棒など各々武装した人間が裸の人間と戦っていた。
裸の人間は鬼と呼ばれ突如この日の国に現れた。ぬらりと現れた裸の人間は只々その民を殺し始め、あっという間に日の国の西の土地を奪ってしまった。
そして、これはその鬼たちの進行を防ぐ戦い。そうして近年は拮抗状態が続いていた。
阿鼻叫喚、血の匂いが蔓延み始めたその世界でーー
ーーそんな世界で戦場を軽快に飛び回る青年が1人いた。
「よ!ほい!そら!よっと!」
素早い動きで距離を置きつつ、隙をみては相手の懐に入り確実に仕留める。その正確さと戦さ場に似つかない大袈裟な動作で彼は大勢の鬼の注意を引いていた。
「ほれ!さ!そいや!さ!」
青年の周りにはいつの間にか鬼で溢れていた。
「こんなもんかなぁ?あそれ!」
それでも気後れせずに寧ろ余裕綽々と青年は相手の間を縫う様にして倒しながら移動する。
「もっとマシな声は出ないのか」
それを少し離れた所から静観する大小2つの影。大きい方の1人が不機嫌そうに言うが小さい方のもう1人は視線を変えずに
「アクロバットみたいだな。」
と呟く。
「??あくろ?なんだそれは?」
大きい影が訝しげに言い返した所で
「モモ兄!チョウ兄ー!あとは頼むわー!」
2人に向けて声が飛んできた。
見ると、鬼に囲まれていたはずのその青年は、いつの間にか高い木の上で手をブンブン振っている。
そしてその木の下にはこちらに向かってまっすぐ歩いて来る裸の男の集団が。
目は虚ろ、歩き方も覚束なく動きも散漫だが、一度スイッチが入ってしまうと身体能力はとても高く、死も恐れず此方を殺しにかかって来るので日の国の人々はとても恐れていた。見た目がまだ子どもと大人の中間、青少年に見えるのも厄介で、相対した者は必ず一度は戸惑う。そうやって士気も下がるから近年、突如として現れたその殺戮集団に日の国はあっという間に幾つかの村や町、要は西の土地を奪われてしまったのだ。
「あああああ、、、」
「あ、あ、あああぅあ、、、」
とゆらりゆらりと歩いてくる裸の集団。
(ゾンビみたいだ)
「おい、なんか予定よりもこっちくる鬼の数多くないか?」
先ほどの不機嫌な声を出した大きな男が片眉をあげる。
表情までもが不機嫌になった。
「まぁ、もともと予想よりも鬼の数が多かったからな。」
もう1人の小柄な男が肩に留まっていた鷹より少し小さめの燻んだ橙色の鳥を空に放つ。
鬼と呼ばれるその殺戮集団を目の前にしてモモ兄、チョウ兄と呼ばれた身長差のある2人は悠然と立っていた。
「今回、ここには区長様もいるとか。派手に暴れて顔を覚えて貰うには丁度良い。」
不機嫌そうに眉を顰めているが、大男の口角は少し上がっていた。
「そうだな。」
「まぁ、そんじゃ行くか!」
2人は鬼の集団に駆け出した。
ーーーーーー
怒涛と雄叫び、金属のぶつかり合う音、それらが響く戦場でノナーガ区長は3人の人物に目を惹かれた。
1人は遠目からも分かる大男。身長もさる事ながら筋肉モリモリ。その逞しい身体に似合わず動きは俊敏。大人2人分の重さはあるだろう、彼と同じぐらいの大なたをブンブン震わせ鬼を蹴散らす様は圧感だ。いったいどれだけバカ力の持ち主なのか?片手で鬼を掴み投げ飛ばすなど並みの人間の出来ることではない。鬼は人間の倍以上の力がある。一匹の鬼を3人がかりで倒すのが定石だ。力だけでその鬼達を投げては捨て、大ナタで打っては捨てと赤子をひねるかのような姿は同じ人間でも恐怖を覚える。ポイポイ、ドゴーン!ポイポイ、ドゴーンと2つの擬音語が同じ空間にある不思議。命名しよう!戦場の不思議の大男。それが彼。短髪の黒髪が男の太い首筋を露わにし更に男の威圧感を上げていた。
対するもう1人は大層小柄。筋肉も見えるわけでなくどちらと言うと華奢。まだ少年だろうか?しかし彼の周りは無残に切断された鬼の身体が無数に散らばっている。彼の周りは赤い血の海のおかげで其処だけ異様に目につく。飛び道具を使う様で、投げた道具は鬼の身体を切断しながら弧を描き、また小男のもとへ戻っていく。それを何度もするうちに赤い水溜りは赤い海になって行ったのだ。目元から下を隠された彼の表情は読む事が出来ず不気味にすら写り、栗毛の髪の毛はその中で異様に明るく感じた。
きっと(サイコパス)倫理観が異常。それが彼。
返り血さえ浴びず、ほとんどその場所から動かない彼は不気味さを余計に際立たせている。
もう1人は他の2人に比べまず格好が異様だ。頭を白い布で巻き、その前側に小さな六角の帽子、両肩から1つのヒモに等間隔で付けた丸いぼんぼりを垂らし、服そのものも全体的に白で纏めている。白は死に装束だ。こんな戦の場では不吉以外の何物でもない。服そのものも手首足首の部分が萎まり日の国の一般的な服装とは正反対だ。しかし妙に纏まりがある。そしてその服の何処に隠してあるのか無数の暗記を彼は次々に鬼に打ち込んでいく。その様は正確無比。そして鬼を巧妙に誘いあらかじめ仕掛けておいたのであろう罠にはめていく。爆発させたり串刺しにしたり。最初に動き、鬼を彼ら側に誘導したのも彼だ。策士と言うべきか。しかしこの様な戦術を鬼相手にやってのける人間を見た事がない。戦う軍師、それが彼。
3人とも1人で数十ものいやそれ以上の鬼を平気で相手にしているのだ。
ノナーガ区長は両脇に控える近衛兵2人に声をかけた。
「のう、金さん銀さん。あの3人だがどう思う?」
「は、この戦の功労者と思います。」
金さんと呼ばれた男がすぐさま答える。中々のマッチョだ。その目は面白いものを見つけた時の様に光っている。本当はすぐにでも彼処に行きたいのだろう。金さんの周りにはキラキラと輝くオーラが見えるかの様だ。
「ですが、出で立ち、そぞろ全てが異様です。」
隣の銀さんと呼ばれたこちらもマッチョな男がそのキラキラしたオーラを低い声で搔き消す。
「うーむ、、どうしたものかのぉ、ここまでの働き無視するわけにもいくまいし。」
髭を撫でながら暫し思案する。
髭を離し
「この戦が終わったら、ちょいとわしの元に呼んでくれ。」
ノナーガ区長は告げた。
「「はっ。」」
金さんと銀さんは揃って返事をした。