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勇者がお手伝い  作者: こたつねこ
勇者トウカ、帰還する
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勇者トウカ、走馬灯を見る Side B

(エセルバート視点)

 ドォン! ズズズ……

 

 塔が大きな音を立て、埃や天井の破片を落としながら揺れました。一応トウカさんに言われた通りに下の階に待機して、いつでも外に逃げられるようにしています。もし、トウカさんがあの飛竜を打ち破ったのなら塔の外に飛竜が落ちてくるはず。

 しかし、そんな気配が見えないばかりか先程から塔の崩壊が進んでいるようですねぇ、もしかすると苦戦しているのかも知れません。上に向かうのは私には荷が少し重いので、様子を伺いながら外から見てみましょう。

 

「グゥアアアアア!!」


 ──大きな翼が生えた大蜥蜴の様な魔獣が、塔に掴み掛かりながら頭を窓に突っ込んでいるのが見えます。その姿はこの世のものと思えません。あんな怪物と戦うなんて、想像しただけで震えてきます。トウカさんが戦っているのが信じられないくらいです。

 

 もしかすると……、あの怪物は英雄たちが呼ばれる原因となり、その英雄たちに滅ぼされた『破滅の怪物』でしょうか? 最後の試練のために態々残していた? 勘弁して欲しいです。我々だけで戦っていたらどれだけの死傷者が出ていたことか分かりません。

 トウカさんが居るから戦えている、トウカさんが居る今なら怪我人も少なく出来るでしょう。こうなれば私も見ているだけにはいきません。少しでもお手伝いしなければ。

 

 私も院長と肩書きが付きますから、それなりの魔法を使えるつもりです。それでもあの魔獣には効き目は薄いでしょう。幸いな事に先程、トウカさんが良い物を見せてくれました。私もそれに倣ってみたいと思います。

 トウカさんがやったのは槍に破裂体を組み込んで、魔獣に槍を突き刺し、体内で破裂するようした事です。私では槍の構造を魔法で変えるような事は出来ません。破裂体と雷石を一緒に組み込むなんて発想も出来なかった。

 

 それでは私は槍の一部に『炎玉』を発生させるようにしましょう。ついでに槍の石突部分に取り付けられている破裂体を増加、私では筒の強化は出来ないので一回撃ったら故障するかも知れませんね、予備としてもう二つ、作っておきましょう。

 後は……出来るだけ上の階に行き、飛竜を狙って撃つだけですが、私の腕で当たるのでしょうか? それだけが心配ですねぇ。



  ●〇●〇●〇●〇



 塔が先程同様に揺れています。飛竜の攻撃が続いている様子。それは同時にトウカさんがまだ無事でいる証。しかし、トウカさんが攻撃している訳では無いみたいです。何かあったのでしょうか? 怖いですけど、向かってみなければ分かりませんね。

 塔は揺れていますし、建物の中は砂埃や壁と天井の欠片が散乱してます。短槍弩三丁を抱え、苦労しながら上に向かっていますと時折、飛竜の咆哮が聞こえてきます。恐怖に身を竦めそうになりますが、もう少し頑張りましょう。

 

「院長!? なんでここに来たんですか!」


 ……トウカさんは飛竜の大きな頭を目の前にしながら、私に向かって叫んでいます。左手には軍の特殊半剣、驚いた事に飛竜は口から汚れた液体をトウカさんに飛ばしています。恐らく毒なのでしょう、辺りに刺激の強い臭いがします。

 トウカさんはそれを風の魔法で逸らしながら、炎の魔法で攻撃していた様子。それでも飛竜には効き目が無いのでしょう。飛竜の辺りには石で出来た大きな棘がありますが、それもトウカさんがやった事なのでしょう、それでも駄目だったと。

 

「短槍弩は効かなかったのですか?」

「外に飛び立ってくれないと使えません! 狙おうにも、こう忙しいと無理です、それに飛竜は風の魔法も使ってきて大変なんです!」


 おお……、確かに急にトウカさんの周りに風が吹いたと思ったら、床と壁に爪あとを立てています、風の刃で攻撃している様子。トウカさんはそれに合わせて自分の周りに石で壁を作って防いでいました。

 これでは私が居るとかえって邪魔にしかなりません。それでも別の場所から攻撃して、飛竜の注意を逸らさないと、トウカさんがいつかは体力が消耗して倒れてしまうかも知れませんね。

 

「私が下の階から攻撃して、飛竜の注意を引きます! そうしたらトウカさんは短槍弩で攻撃して下さい!」

「院長が!? ま、まって! 危険ですから止めてください!」


 止められませんねぇ、私も院長としての責任があります。それに勇者のお手伝いが出来ますし、英雄たちの戦いを少しでも味わえます。おっと、わくわくして顔がにやけそうになってしまいました。私もまだまだですね。

 飛竜の咆哮と塔が揺れている中を息を切らせながら下の階に向かいます。飛竜は丁度、自らの腹を下に向けているはず。私が攻撃するのに、これ程の機会はありません。

 

 恐らく飛竜の真下だと思われる場所の窓から上を覗いて見ますと、思ったより腹は見えません。ここからは壁に爪を立ててしがみついてるのが見えます。そして同時に塔の壁を長い尾が鞭の様に叩いているのが分かりました。

 このままだと塔が崩壊するのが早まりそうです。ああ、全てが終わったら塔の修理を、いえ、建て直しまで考えないとですかねぇ。そんな事を考えながら一丁目の短槍弩で少しだけ見える腹に狙いを付けます。

 

 ボシュゥゥン!!

 

 おっと! 撃てましたが、筒の後ろ部分に亀裂が入り壊れてしまいました。槍は腹の表面に少しだけ刺さり、体表付近で炎が発生しましたが、まるで効いて無いみたいですね。少しだけこちらを見て、尾の鞭を振るって来ました。

 私は慌てて中に体を引っ込めて壁に隠れます。バシンッと大きな音の後にぱらぱらと壁の一部が剥がれ落ちていくのが見えました。しばらく壁に隠れたまま様子を伺いましたが、飛竜はそれでこちらの存在を忘れたみたいでした。

 

 そーっと壁から注意して上を見て、飛竜の注意がこっちに向いてないのを確認、もう一度新しい短槍弩で狙いを付けます。今度は壊れても驚かない様に、そして狙いを外さない様にしっかり持って、祈るように引金を引きました。

 

 バシュン!!

 

 今度は壊れもせず、狙い通りに腹に向かって飛び、飛竜の下腹部辺りに槍の三分の二が突き刺さりました。飛竜は驚き、こちらを見て高い叫び声を上げて、尾で攻撃しようと振り上げてます。私は再び急いで壁に隠れて結果を待ちました。

 

「グゥアアアアアア!!」


 尾での鞭攻撃が来ず、隙間から覗くように上を見ると腹が灼熱化したように光って、煙を上げてます。飛竜はその熱さに耐えられなくなったのか、空中へ身を投げ出して空を飛び始めました。

 

 トウカさん! 今が狙い目です! 祈るように上を見ると、トウカさんが窓から短槍弩を構えて、飛竜に狙いを付けているのが見えました。その直後、低い破裂音と共に槍が射出され、飛竜の胴体に深々と刺さるのが分かります。

 トウカさんは結果を見る間もなく二射目を発射、それが刺さると同時に一発目が破裂、ボンッ! という音がして血肉が飛び散っているのが見えます。続けて二発目が破裂して、大きな穴を開けました。

 

「ギィアアアァァァァ!」


 飛竜が切なそうな叫びを上げながら地面に落ちて行きます。……どうやらこれで終わりみたいですね。ほっとして上を見ると、何やら黒い雲がいっぱい。はっ!? 驚いてトウカさんの方を見ると凄い表情で両手を天に向かっていました。

 

「トウカさん! もういいです! そこまでやらなくても大丈夫ですよ!」

「え? あー、ちょっと遅かったみたいです……、院長! 耳を塞いで物陰に隠れてください!」


 あー、最後は締まらないですねぇ……、でも、まあ、いい事にしましょうか。

 

 それからの事は、後の記録に残るくらいの魔法、見た者を恐怖させた『雷の嵐』が吹き荒れました。

 

 

 

 

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