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勇者がお手伝い  作者: こたつねこ
勇者トウカ、帰還する
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勇者トウカ、翻弄される Side B

(ジーン視点)

 中央からの手紙を持って上級魔道士らしい、トウカと名乗る娘が来た。手紙は二通、中央からの物は、もし時期が合えばタルシスの魔石洞窟へ連れて行って欲しいと書かれていて、エリダニアのドミニクからの物は配慮を頼むみたい書かれていた。

 詳しい事は分からないが、上級魔道士が来るくらいだから何かあるのだろうが、運悪く遠征には時期が早く、もう少し待つ事になるとトウカに話しをした。すると中央に戻るので馬車に手配をして欲しいと言われてその通りにする。

 

 何か申し訳無さそうにしながら馬車に乗って去って行くトウカを見送る。結局、あの娘が何をしに来たのか、さっぱり分からない。


 

(エセルバート視点)

 パテラ山の洞窟攻略が終わったくらいだろうか、それともタルシス山の攻略に参加している頃だろうか? と思っていたらトウカさんがやって来た。タルシス山の遠征に参加しようとしたら、彼女一人で攻略出来そうだと言われたらしい。

 

 ああ、時期的に合わなかったのか。それでどうせならオリンポスから向かった方が良さそうだとこちらに来たらしい。申し訳無い事をしました。でも、それなら私も一緒に行って、魔石を確かめてみるのが良いでしょう。

 

「ケルベルス砦に魔道具が届かなかったのは、やはり必要無かったからですか?」

「まあ、それもあるのですが、クロニウス砦のレナード隊長さんに申し訳なくてですねぇ、四分の二をクロニウス、四分の一をエリダニア、残りを予備として、ここで預かることになりました」

「はあ……、レナードさん、嫌がったかも知れませんねぇ」


 駄目です、あんな便利な魔道具をあれだけの数は持ち過ぎです。

 

「あの、それでこの塔からタルシスへ向かうつもりなんですけど、問題ないでしょうか?」

「はい、構いません、ついでに私も御一緒させて下さい」

「ええっ!? それはいいんですけど、エセルバートさんがこの塔を離れて大丈夫なんですか?」

「全く問題ありません、やるべき作業は他の者がやってくれてますし、私は監督したいるだけ、普段はヒマ……もとい、今は時間が取れるのです」

「……」


 おや? 怪しまれてしまいましたか。しかし、勇者の力を間近で見れる機会というのは多分、これが最初で最後かも知れません。砦を回る順番を考慮して、トウカさんがこの塔に戻ってくるように小細工……いえ、調整した甲斐があります。


「それでは準備を始めますから、それまでこの塔で一休みして下さい」

「はあ……」


 トウカさんは今までの旅路でお疲れの様子、ゆっくり休養をとって頂こう。



  ●〇●〇●〇●〇



「それでエセルバートさん、準備はいかがですか? もうそろそろ、タルシスに向かいませんか?」

「ああ! そうですね、トウカさんの翻訳が素晴らしくて、ついうっかり忘れておりましたが、もう間もなく、すぐにでも出発出来るでしょう。今、馬車が出た所だと思います」

「うーん」


 申し訳無いですね、部下に任せていたらちょっと遅くなった様です。けっして準備をしっかり、ゆっくりでもいいから確実に、と言ったから遅くなった訳では無いと思いますが……。

 その合間に過去の英雄たちの記録を翻訳してもらっていたら、あまりにも素晴らしいので、部下にこちらを優先して下さいと言ったのが不味かったかも知れませんねぇ。院長たる私がこんな事ではいけません、反省しなくては。

 

「もう間もなく出発すると思います、それまでにこの場所の翻訳を……」

「うぇ!? まだやるんですか?」


 もうちょっとですから、あとほんのちょっとだけですから!

 

「もう出発出来るとの事です、現地までそんなに距離はありませんが、それまでこの部分の翻訳を……」

「ひ~!」


 馬車の中でもトウカさんの御協力により、大分翻訳が進みました。本当に有り難いですねぇ、出来ればしばらく残っていただきたいくらいですが……、いえ、それはさすがに駄目ですね、御先祖様を叱られてしまいます。

 後の時間は、休憩時間と、帰りの馬車の時間と、帰る日までのほんの僅かな時間しかありません。おや? トウカさんがこちらを見て震えていらっしゃる。これはいけません。もしもの事があったら、お休みして頂かなくては。

 

 

 今回、タルシス山の魔石洞窟に向かうのは、トウカさんと私、他に部下の研究者四名と護衛が六名の計十二名。一人が照明係、一人に水晶玉を待たせて、全員に通話栓を着けさせています。ほとんどトウカさんの魔道具です。

 トウカさんに御説明して頂いて、魔道具の作り方を聞きましたが、ここまでの物は作れそうにありません。残念ですが、いつか必要無くなる物だと思いますので諦めましょう。

 

「エセルバートさん、どの様に坑道を進んだらいいでしょうか?」

「そうですね、トウカさんのお好きに」

「はい?」

「トウカさんの思ったままにどうぞ」

「ちょっ!? 待ってください! そんな適当でいいんですか?」

「いいと思います、私もどうしたらいいか良く分かりません」


 私の答えを聞いたトウカさんが慌てて私の部下に聞いたり、護衛の者に聞いたりしてましたが、全員洞窟攻略の経験がありません。護衛の者が魔獣の討伐に問題ないくらいでしょうか?

 

「で、でも野営の準備くらいは出来ますよね、ね?」

「それは大丈夫です、ちゃんと野営の用意は頼んであります、他の人に」

「あああ……」


 おお、トウカさんが何だか悟り切った様な表情で、他の者に指示していますね。さすが他の砦に行っただけの事はあります。それから水晶玉の見方、通話栓の使い方、番号の振り分けをしています。もっともこの全員で進みますから、通話栓は要らなかったかも。

 それからトウカさんが水晶玉を改良して、照明の機能を付与して、首から吊り下げられる様にしてくれました。しかも照明は一定方向を向くようになっています。他の者が眩しく無い様になっている所が素晴らしい。

 

「端までいったら地図を写すのだけ、忘れないようにしてください」

「はい、トウカ様」

「トウカ様!? すいません、様付け禁止です!」


 これも勇者の風格と言うものなのでしょう。自然と部下がトウカさんに従っているのが分かりますよ。そして洞窟内に我々が入って行くと、こちらに攻撃はして来ないのですが、『皮翼』が飛び回るのが見えました。

 それは魔獣と言っても、鴉が少し大きくなった程度。それでもこちらの攻撃が当たらないと言うのは不思議な感じがします。トウカさんが言うには口から特殊な音を飛ばして、物に当たり跳ね返った音を大きな耳で聞いているらしいです。

 

「特殊な音ですか? それは私たちには聞こえないものでしょうか?」

「そうだと思います、多分……」


 その特殊な音を聞き分けて、壁にぶつからなかったり、他の障害物を避けているとか。長針弓が当たらないのは発射した時の音を聞いているのかもとの事。そんな話し合いをしていたら、トウカさんが何やら考えついた様子。

 しばらく考えていたと思ったら、手のひらを飛び回っている皮翼に向けた。それからしばらくすると急に皮翼が自ら壁に体当たりした様に不思議な行動をとり始めて、地面に落下しだした。

 

「トウカさん、これは?」

「空気を細かく振動させる感じで、魔獣に当ててみました」

「……さすがですね、素晴らしいです」

 

 それでもトウカさんは試してみただけなのか、他の場所では使いませんでした。

 

 

 

 

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