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勇者がお手伝い  作者: こたつねこ
勇者トウカ、帰還する
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勇者トウカ、翻弄される

 光る魔石の壁から受け取った思いは……、前に中央で感じた物と同じ、怒りや苦しみや嫉妬。そしてもう一つ『安息への渇望』だった。

 

 私はそれを確認した後、壁を粉々に砕いた。これでもう魔獣を呼び寄せることは無いだろう。砕いた魔石はドミニクさんたちで回収してもらって、何かの役に立てば良いなと思う。まだ洞窟には魔獣がいるけれど、私の役目は終わりだ。

 結局あのヒドラモドキは首が長い間生きていたので、私が氷結で一本ずつ凍らせて、その後をフレッドさんたちに任せて終わらせた。あそこまで大きくなると強い生命力になるものなんだね。

 

 それからの数日、しばらく坑道内を回った後に砦に戻る事になる。そこで私はドミニクさんに話を切り出した。

 

「ドミニクさん、ある程度目的を達したので、次の場所『タルシス山』に移ろうと思います。どちらの部隊に行った方がいいですかね?」

「そうか、行ってしまうのか。それなら我々と共に一旦キュリオ村まで戻って、そこの馬車を使わせてもらうといい。そこから南に下って『ケルベルス』の砦に行くことになる。そこの部隊がタルシスの担当だ」


 本当ならエルダニアの反対側になる『リピュア』の砦が近いけど、そこの部隊は特殊な役割があって、魔石洞窟の遠征はやってないとの事。それからキュリオ村まで戻り、ドミニクさんから村長さんに頼んでもらい、小さい馬車を用意してもらう。

 どうやらパテラ山から南に行けば、割と近い場所に村があったのだけれど、私への礼のために送別会と言うか、宴を開くためにキュリオ村に戻ったみたい。そんな事をしてもらえるなんて、最初の頃を考えると思ってもみなかったよ。

 

 ドミニクさんを始め、フレッドさん、他の小隊長の人たちや他の隊員のみなさんに礼を言ってもらった。この国の人たちは皆さんが親切だから嬉しいよね。こちらも最後のお礼にお風呂を作らせてもらった。……村の人たちの分も。

 

 翌朝、村で用意してもらった馬車に乗り、次の村『レムリア』に向かう。この馬車は一応その村に用があるらしくて、わざわざ私のためだけじゃ無い事を知ってほっとした。話を聞くとそこまで四五日掛かるらしいからね。

 最後にドミニクさんからケルベルスの砦の隊長さん宛てに手紙を預かり、この村を後にする。結構短い間だったけど、皆さんお世話になりました。



  ●〇●〇●〇●〇



「お嬢ちゃんが上級魔道士さまってのは聞いてたけど、ほんとに凄いんだねぇ」


 今、道中のパテラ山が見える場所で夕食を一緒に取っているのは、馬車の御者をしてもらっている少しお年を召したウォルターさん。レムリア村にいる兄弟の所に用事があって、そのついでに私を運んでもらう頼みを受けたらしい。

 夕食を作るときに私がお手伝いをして、その時に魔法で出したお湯を見て驚いてたという訳。キュリオ村でお風呂を作ったんだけど、あの時は確かに魔法でお湯を出すのは見せてなかったかも知れないね。

 

「魔道士の人って、あまり見ないんですか?」

「魔法を使えるような人は、中央に行くらしいからねぇ。昔は魔法を使えた人が多かったみたいなんだけど、使わないから必要無くなって、その内段々と使える人が少なくなったって聞いたなぁ」


 魔法を使う機会も場所も無くなったのかな。使うといっても魔獣相手で、それも長針弓みたいな武器があれば済んじゃう。後は魔石洞窟ぐらいだけれど、そこにいる魔獣が問題なんだよね。

 

 

 それから二日後にリムリアの村に着き、そこからまた南に向かう別の馬車に乗って、南の『エリシウム』の街を経由してケルベルスの砦に着いた。何か途中で全然お金を使わなかったのが、不思議というか申し訳無いというか……。

 

 前と同じ様に門番の人に子供と思われながらも手紙を渡して、隊長さんに取り次いでもらう。砦に入って案内された部屋にいた隊長さんは太っ……ふくよかな、ブラウンに近い金髪の、鳶色の瞳の柔和な感じの人だった。

 

「トウカ・サツキと申します。よろしくお願いします」

「ようこそケルベルスの砦へ、私がここの部隊長をしておりますジーン・ケイフォードです」


 今までの砦の隊長さんと違って優しそうなのはいいんだけれど、ちょっとやりにくいかな? もしかして、上級魔道士と言う肩書きが変に作用した? それともドミニクさんの手紙に何か書いてあったとか?

 

「それでトウカさんは、タルシス山の魔石洞窟への遠征に協力していただけるらしいのですが、何故この砦にいらっしゃったのですか? タルシス山に行くならオリンポスの塔が最も近いと思うのですが」


 はい? あれ、遠征に出てるのはこの塔の部隊だよね? まさか私が一人で行けるとか思っているんじゃないよね?

 

「あのー、さすがに魔石洞窟に一人で行くのは難しいの思うのですが」

「ああ! これは説明不足で済みません。確かに我々の隊でタルシス山の魔石洞窟へ遠征に行ってますが、魔獣の討伐はほとんどしておりません」

「え? どうして倒さないのですが?」

「あそこにいる魔獣は『皮翼』、蝙蝠の魔獣でしてねぇ、これがいくら攻撃しても針が当たらないのですわ。ですから遠征に行っても他の魔獣が入り込んでないか調べるくらいでして。皮翼は人間には襲い掛かって来ませんし」


 ──なんですと? いや、ちょっとまって。何か見落としてない?

 

「ま、まさか私みたいな小娘でも中に入って行けるような場所なんですか?」

「普通の者ならちょっと大変かも知れませんが、トウカさんの様な魔道士なら大丈夫だと思いますがね。それこそ荷物持ちと照明持ちが居れば問題ないかと」

「あ、この砦に中央から魔道具が届いたりしませんでしたか?」

「さて? こちらには届いてませんが」


 届いてないってことは、この砦には必要ないって、中央にいるエセルバートさんが判断したって事だよね? うーん、どうしよう。

 

「ドミニク隊長さんの手紙には何て書いてあったか、お聞きしてもいいですか?」

「いいですよ、この手紙にはトウカさんへ、タルシス山に住む魔獣の種類を教えるようにということと、オリンポスへの馬車を用立てて欲しいと書かれてました」


 あー、ドミニクさんも一応知ってたけれど、この砦で話を聞くのも悪く無いと考えた? まあ、確かに聞いてみないと分からない事もあるからねぇ。でも、教えて欲しかったよ。いくらお金が掛からないと言っても。

 

 その後はあと何日かするとタルシス山への遠征があるけど、どうする? ってジーンさんに聞かれた。万が一、パテラ山の時みたいに強い魔獣が居るのなら、このまま留まって遠征に一緒に行った方がいいかも知れない。

 でも、ちょっと時間の無駄と言うか、オリンポスに行ってエセルバートさんに話を聞いてみたいと言うか、そっちの方が良い感じがした。それでジーンさんにお願いしてオリンポスまで送ってもらうことにする。どちらにしても最後は中央へ戻るつもりだったから。

 

 複雑に思いがするけど、あと一ヶ所で終わるのだから、最後まで頑張ろう。

 

 

 

 

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