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勇者がお手伝い  作者: こたつねこ
ヴァルキュリヤ、行動する
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ヴァルキュリヤ、第二の迷宮を攻略す

 エリダニアの砦へ来て、最初に会ったドミニクさんは今まで見た人の中で一番背の高い、怖い顔をした隊長さんだった。橙色に近い髪の毛と淡褐色の瞳でその怖さが倍増している。私を見る目も何だこの小娘は? って感じだった。

 

 エセルバートさんが手紙に書いてくれた上級魔道士とか言う職業? に、勇者とどちらがマシだろう? と思ってしまいながらも、ドミニクさんに言われて訓練場で雷の魔法を使ってしまった。アルバ山で成功した記憶からつい。

 それからの日々は森への巡回で、私はついて行くだけだったり、炊事場でパンの新しい製法を広めたり、お風呂と洗濯の重要性を説いて回ったりした。決して自分がお風呂に入りたい訳でも、汗の臭いに我慢出来なかったからからでも無い。

 

 一応、エセルバートさんから魔道具の製作は出来れば自重して欲しいと言われている。お、お風呂くらいはいいよね? 洗濯や人と服を一緒に乾燥しちゃったりしてるけど。

 それでも第一の目的は魔石洞窟の開放なんだから、ドミニクさんにいつ洞窟に向かうのか? と聞いている。この砦では定期的に森の巡回と洞窟の遠征をローテーションしているらしく、しばらくしたら行くだろうと言われた。

 

 そのパテラ山の魔石洞窟はどんな感じ? と聞いてみるとヘビの魔獣がメインとか言われた。しかも、毒持ちで人間が掴みかかって戦うとか。お、恐ろしい! 毒持ち大蛇を手掴みで! しかも頭が二つ有るのも居るとかって何て酷い。

 大きなヘビには毒は無いんじゃないかな? って何となく思ってた私。その前にヘビを見たら失神しないか心配になるけど、何とか頑張ろう。えーと、ヘビって何に弱い? 火? 氷? 電流とか試してみないとダメだよね……。

 

 ヘビの魔獣は砦の近くには居ない、向こうに行ってからのお楽しみだとか言われて憂鬱になる。しかも私には砦近くて攻撃魔法禁止って言われている。遠征間近となったある日、中央から砦へ荷物が届いた。

 隊長さんが持っているのを見ると、何故か私が作った水晶玉とレシーバー。え? どういうこと? 中央でエセルバートさんが作った? ドミニクさんに聞いたところ、試験的に作られて、今までクロニウスで使っていた、と手紙に書いてあるとの事。

 

「トウカはクロニウスの砦で、この魔道具は使ってなかったのか?」

「はぇ? あ、めっちゃ使ってました! 使い方は完璧です!」


 ──なるほど、私が作ったと言わずに中央の方で作った事にしたのか。追加で作らなくていいもんね。絶対そっちがいい。そしてレナード隊長、取り上げられたのですね? 心中お察しします。

 

 個数を見ると、どうやら四分の一ぐらいの数。四分の三をそれぞれの砦で使わせて、残りを中央で保管と研究をするのかもね。魔道具の説明をすると、ドミニクさんは驚いて、これがあればなんて声が聞こえてくる。

 

「うーん、素晴らしい、だが、あと三倍、いや二倍あったら……!」


 エセルバートさん、ありがとう。お陰で魔道具職人にならずに済みました。



  ●〇●〇●〇●〇



 それから三日後、普段の予定通りにパテラ山に向かう事になった。初日はこの砦から南下した場所にある『キュリオ』の村で宿泊する事になる。部隊の人数は八十人くらい、距離があるので一回の探索が大多数になるらしい。

 武器にはいつもの大型ナイフと長針弓、それと先が二つに分かれた槍みたいな武器、これはナイフと似ている魔道武器で、魔獣の体を押さえつけるのに使われるらしい。他の魔獣には効果が薄いけど、ヘビの時には重要だとか。

 

 二頭立ての馬車で十台、人員八台と物資用荷馬車が二台と言う、前と比べると大掛かりな遠征になる。隊員の人たちも体つきが大きい。やっぱり力仕事になるからだと思う。私は隊長さんたちの馬車と離れて炊事係の人とご一緒させてもらった。

 ドミニクさん以外の小隊長さんたちも厳つい顔で、話しかけにくかったからね。私はあちらへ行っても魔法を色々試してみて、効果的な魔法を見つければいい。そして隊長さんの言うことを聞いていればいい。

 

 本当は一回の遠征で、あの魔石の岩とも言うべき英雄の遺物を見つけられたらいいんだけど、簡単にはいかないだろう。クロニウスの方は、レナード隊長さんやアランさんたちに頑張ってもらうしかない。

 

 まだ気が早いけど、もしも遺物を見つけたら……、エセルバートさんには見つけ次第、細かく砕いて欲しいと言われている。ダメならそのままでいいとも。どうなるか分からないけど、やるだけやってみようと思う。

 

 

 初日の夕方頃、キュリオの村に着いた。残念ながら隊員全部を村で泊める事は出来ないそうで、そんな事をよく分かっている皆は村の中央でテントの準備を進めている。隊長さんが私に村の宿に泊まることを進めてくれたので、ありがたくそのご厚意に甘えた。

 そのお返しとお風呂を作ったら、何故か村人まで入りたいと頼んできたので、ドミニクさんに許可をもらって十人用のお風呂を三つ作った。その代わり、今日の洗濯は無しにしてもらう。そんな事をしたら、村人の分までってなっちゃうからね。

 

 その後はすごい魔道士だとか、お礼に食材だとか、お酒……は隊長さんに禁止にされ、隊員の皆さんの嘆きが響いたりした。私はごちそうをもりもりと黙って食べていただけ。あ、お風呂作ったのを後でエセルバートさんに怒られちゃう?


 翌日、村人のみなさんに手を振られながら出発した。

 

 それからの二日間は道中で何匹かの獣や魔獣が出たぐらいで、特に問題にならなかった。パテラ山が見えて、少し南下してから西口に向かったのが時間を取られたぐらい。洞窟の入り口が見えてくる。ヘビ、見ても大丈夫かな?



  ●〇●〇●〇●〇



「さて、トウカ、入ってもらう前に、何か良い手はあるのか?」

「とりあえず、魔法の相性を確かめてみないと分かりません。少し入った所で試したいのですが、よろしいですか?」

「いいだろう、この……通話栓だったか? これは本部の私と、それぞれ小隊長、トウカ、他分隊長三名に渡す。それぞれ番号で呼びかければよかったのだな?」

「それでいいと思います。水晶玉はドミニク隊長さんがいる本部以外の分隊へ、照明持ちの人に分ければいいと思います」

「うむ」


 洞窟手前で本部用テント、あとはそれぞれのテントと私専用のテントを立ててもらっていた。設営が終わり次第、装備の準備をして進入する。その前のわずかな時間にドミニクさんと話合いをしていた。

 私がいる、八人の分隊には小隊長のフレッドさん、実直そうな淡い金髪、緑の瞳のやっぱり厳つい顔の人。それぞれの明かり持ちの人に水晶玉の説明をし、隊長格の人に通話栓をしてもらって、番号で呼びかけの説明をする。

 

 隊の人には申し訳無いけど、私は魔法の試し撃ちをしながらの進行となる。それをフレッドさんにも了承してもらった。そして進入前にドミニクさんが一日の目的を説明し、装備の確認、通話栓と水晶玉の確認をして進入を始めた。

 

「フレッドさん、魔獣が現れたら私は色々な魔法を試したいと思います。よろしいでしょうか?」

「ドミニク隊長からも聞いている。この隊は遊撃のつもりで行けばいいらしい」


 皆さんの私への対応が優しい。パンとかお風呂を作ってよかった。後は進みながら魔獣の発見を待つことにする。

 

「おお、何か凄いなこの玉は、ぐるぐる動いても道が分かる。それで魔獣が出れば光るんだっけ?」

「あ、そうです、玉の中心の光はおいといて、玉の外側に光が現れたらそれです」

「なるほど、この光っている粒みたいのがそうか?」

「それ、魔獣だと思います!」


 慌ててこの先を見つめる。あー、水晶玉に照明の機能付けたらよかったかな? 今頃になって思いつく。そんな事を悩んでいたら、坑道の奥に前に見たムカデの魔獣より小さいくらいの、それでも大蛇と言うべき魔獣が現れた。あ、思ったより平気だ。

 

「トウカ、あれが『大口』だ、良かったら初めてくれ」

「分かりました。では最初、火から……」


 うーん、そのまま直接、火を付けてもいいのかな? あ、炎は坑道で使うなってアランさんに言われてたっけ。じ、じゃあ、ちょっとだけ……。

 

 そのヘビの手前にバスケットボールぐらいの炎をイメージして作り出した。ヘビは急にその炎に反応して、少し鎌首をもたげたと思ったら、驚いた事に炎に噛み付いた。あれ? 何で火に噛み付いたの? もしかして炎の温度に反応?

 消えない、噛みつけない炎に何回も攻撃しているヘビの魔獣。えーと、今度は氷結を試してみよう。ヘビの頭を中心に温度を下げてみる。すると最初は驚いたのか首を振り回していたけど、その内に動きが鈍くなって、最後は止まってしまった。

 

「──動きが止まったな?」

「えーと、そうですね、まだ死んだ訳じゃないと思いますけど」

「よし、攻撃が命中する所まで前進」


 その指示に少しずつ前に進んで、ヘビが動き出さないか確認している。そして長針弓がほぼ狙い通りに当たると思われる場所まで来ると、フレッドさん自ら一回だけ攻撃した。

 

 バシュッ!

 

 針が頭に命中した時だけ、体がうねっていたけど、しばらくしたらヘビは完全に沈黙した。その後、フレッドさんは大型ナイフで魔獣の頭を数回切りつけて確かめている。


「うーん、さっきの針で死んでたみたいだ」

「隊長、一撃でしたね」

「一撃だったな」


 あれ? 何で皆さん、私を見てくるの? ちょっと怖いよ?

 

「すげぇな嬢ちゃん……」

「さすが上級なだけの事はある訳か」

「トウカ、これが一番、効率的な魔法でいいのか?」


 いいと思います。

 

 

 

  

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