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勇者がお手伝い  作者: こたつねこ
ヴァルキュリヤ、行動する
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ヴァルキュリヤ、国をめぐる旅に出る Side B

(アラン視点)

 結局何があったのか、トウカは話さないままに他の砦に向かった。出来れば自分も付いて行きたいが、自分の仕事を放り出す訳にはいかない。トウカには軍の関係者の証明として特殊半剣を渡した。これで何かあっても困る事はないだろう。

 

 トウカが旅立つ日、院長が俺に話があるから残ってくれと言われた。どうも何かに怒ってるみたいだ。詳しく聞くと、トウカに色々させ過ぎだ、魔道具の量がありえないと怒られた。た、たしかに水晶玉、通話栓とか、あ、風呂もそうか。

 いや、風呂はトウカの厚意だったはず? それでも隊員たちの要求に答えたのだから、同じだな。今更ながらにトウカに頼りすぎたなぁ、本当に済まなかった。

 

「出来るだけトウカが帰るまで、勇者だと他にはを黙っているように隊長さんに頼んでおきます。アランさんもよろしくお願いしますね?」

「分かりました、……それは面倒を掛けないようにですか?」

「本来、私たちが努力して、武器の研究・開発や、魔獣の生態を調べていかなければならない事を、トウカさんが何十年、いやもしかすると百年分の先まで、縮めてくれましたからねぇ、これではご先祖に怒られてしまいます」


 うーむ、これだとトウカを砦に連れ戻して、続きをしてもらう予定だったなんて言える訳が無い、黙っていよう。

 

 それからは院長にウチの隊長宛の手紙を受け取り、トウカが作った魔道具の半分を寄越すように言われた。院長にそれほど強い命令権など無いはずなのに、俺にはとても逆らえそうになかった。魔道具があまりに便利すぎたのがいけない。

 そして俺はクロニウスの砦に戻る。出来ればトウカが帰る時に、最後の別れぐらい言いたいが、その願いは適うだろうか?



  ●〇●〇●〇●〇



(ドミニク視点)

 中央から研究者兼戦闘時の協力者が来訪したと言うので会いに向かった。自分の目の前には髪の短い、大人の真似事をしているような小娘。しかし、腰には軍用の半剣が下がっている。あれでも軍の関係者だと? わざわざ中央から派遣されて?

 

 手紙には『上級魔道士』と書かれている娘は、トウカ・サツキと言った。軍の者にしては、身にまとう空気が戦う者じゃ無い。それでも魔道士、それも上級と付くぐらいの人間だ、戦力としては申し分無いのだろうが。

 見た目や雰囲気と、魔道士の職との差に違和感を感じる。もしかして実戦は初めてなのだろうか?

 

「中央で実力を見出されてここに来たのか? 実戦は経験した事はあるか?」

「あ、はい、最近までクロニウス峠にいまして、アルバ山の魔石洞窟で戦っていました」

「魔石洞窟で? クロニウスの部隊長の名は?」

「えと、レナードさ……、隊長です」


 ふむ、間違っていない。レナードの所か、この娘には丁度良かったかもな。

 

「了解した、魔道士なんて会うのも久しぶりだ。実力を見せてもらおうか」

「あ、あの、どうすればいいですかね?」

「なに、訓練場の的を狙って魔法を撃ってくれればいい」

「……分かりました」


 今、少し悩んだな? 上級なんだ、実力が不足している訳でもないだろう。それとも攻撃魔法には自信が無いのか?

 

 トウカを連れて野外の訓練場へ行く。その場には何人か隊員がいて、俺が連れて来たトウカを見て話し合っている。隊長の娘? 俺はまだこんな娘が居るような歳じゃないぞ。

 

「あの的でいいだろう、さあ、見せてくれ」

「どのくらいがいいでしょうね? あ、壊しちゃったらダメかな……?」

「何? 全力でやってもいいぞ? 別に一個や二個程度、壊しても構わぬ」


 何故かトウカがこっちを見て、引き攣った顔をしてる。俺が前に見た魔道士の時は、的が軽く燃えて、焦げ付いたくらいだったからなぁ。トウカぐらいだと、真っ黒に燃えるだろうか?

 決心が付いたのか、もしかして諦めたのか、トウカは眉をキリリと引き締めると的を睨んだ。そして……何も起こらない? まさか失敗した? そんな事を思った時、トウカがこっちを見て耳を塞ぐように叫んだ。

 

 え? なんだって? 何を言っている、と聞き直すところで光の柱が立った。

 

 バリッ! ドゴォォォォンンン!!

 

 

「……さん、隊長さん! 大丈夫ですか? しっかりして下さい!」

「あ?ああ、大丈夫だ、問題ない」


 気が付いて辺りを見ると、砦の人間が何事が起こったのか、それを確かめるために訓練場に集まっている。砦の窓にも何十人の顔が覗いていた。ううむ、甘く見ていたな。これが上級魔道士の力か、これなら確かにトウカ一人で来れる訳だ。

 

 最初に見た時には四つの的が有った場所に、一つの抉れたような穴と、三つの的の残骸が飛ばされていた。いかんな、トウカには練習もさせられない。よくレナードはこんな娘を扱えたな。

 

「すいません、張り切ってしまいました。最近使ったもので、これでも弱めたんですけど……」

「ハハハ……」


 これで弱かったのか、本気を出したら山が吹き飛ぶとかなんて、止めてくれよ?



  ●〇●〇●〇●〇



 トウカにはいつもの森への巡回に、攻撃魔法を一切使わないように厳命し、長針弓でのほどほどの攻撃をしてもらうことにした。魔法を使う場所はやはり魔石洞窟が主の目的地になる。それまではお客扱いでいいだろう。

 そんな事を思っていたのに、何故かトウカは炊事場でパンを焼いたり、洗濯場で風呂を焚いていた。そう、風呂である。意味が分からない。この塔に風呂なんて無いはずだ。普段なら濡れた布で体を拭くか、近くの川で体を洗う程度だろう。

 

 話を聞くと風呂に入らないのは我慢がならない。ついでに洗濯もするから、隊員たちには風呂に入った後、衣服の乾燥を手伝って欲しいと言われた。言ってる事は分かる、だが理解が出来ない。乾燥って普通に乾かすだけじゃ駄目なのか?

 とりあえず、言われたままに風呂に入っている隊員を見る。普通なら水汲みや薪代だけで、とんでもない手間が掛かる。それが魔法で……、しかもその隅で洗濯していたトウカ、こちらも代金なんて無視の魔法、洗った服を隊員に持たせて魔法。

 

 トウカ、生活の魔法が便利過ぎるだろう。最後に魔法で壁を作り、一人で風呂に入っていたらしい。そんなトウカに砦の隊員たちは謝礼のつもりか、燻製肉や果物とか甘い御菓子などをあげていた。……俺も好きなだけ食べろと指示しておいた。

 

 すっかり隊員たちに気に入られたトウカだったが、その目的を忘れる事無く俺に魔石洞窟の遠征を進言してくる。ここから一つの村を挟んで、ほぽ三日の距離にある『パテラ山』。ここの洞窟には大蛇を更に大きくした『大口』や『二股大口』が見られる。

 トウカはそれを聞いて嫌そうな顔になった。蛇が苦手なのか? ああ、アルバは虫の魔獣が多かったか。あっちよりもパテラの方が大変だと思う。数は少ないが、一匹の強さが跳ね上がる。急所も狙いにくいからなぁ。

 

「どんな戦い方をしているのでしょう?」

「そうだな、首を掴んで巻き絞められる前に頭を撃つか、二人で首と尻尾を掴んで頭を撃つ、心臓なんて分かりにくいし。ああ、毒持ちが普通だから、毒消しも必要だ」

「……ええ~? さ、触らないとダメなんですか?」


 接近戦が当たり前と聞いて、トウカは信じられないといった顔をしてる。だが、そちらの方が手っ取り早いんだよ。見本を見せてやりたかったが、平地や森程度にはいないんだよな、向こうへ行ってから見てもらうしかない。

 

 

 

 

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