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勇者がお手伝い  作者: こたつねこ
ヴァルキュリヤ、行動する
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ヴァルキュリヤ、中央に赴く Side B

 うーむ、トウカは何を考えてあんな強力な魔法を使ったのだろう?

 

 今にも雨が降ってきそうな黒い雲が空の広範囲に現れた後、一本だけだと思った雷が何本も、それこそ昔の英雄たちの記述に残されている『雷雨』のごとく落ちてきた。光だけなら眩しい程度で済んだのだが、轟音と共に来た衝撃で気を失ってしまった。

 その後、気が付いた時には空には羽付きは見えず、地面にもその姿は見えない。その代わりに隊員たちが皆、気絶したのか転がっていた。

 

 幸いにも大きな怪我は無かったが、皆がトウカを怯えたような目付きで見てた。確かに怖かったなぁ。絶対、怒らせないようにしよう。そんなトウカは怪我人の治療の手伝いをしながら謝罪して回ってた。別に謝らなくていいのにな。

 

 その後は羽付きの生き残りを確認して、砦に帰る事になる。面倒な羽付大顎を殲滅できたのだから、後は女王蟻? とやらを倒せば、これからの行動も楽になるに違いない。

 

 そんな安易な考えをしていたら中央からトウカの召喚状が来た。レナード隊長なんかはこれからいい所だったのに! と憤慨している。俺たちだってトウカの力で魔石洞窟の攻略が楽に出来ると思ってたのにな。

 召喚状にはトウカを最初に見つけた俺にも来いと書いてある。面倒だがしょうがない。出来ればトウカを連れて戻れと隊長に言われているので、そうなるように精一杯努力しようと思う。トウカに魔法を使わせなければいいんじゃないか?

 

 出て行く前に、隊長がもしも戻れない事を考えてトウカに魔道具の追加を頼んでた。あまり無理を言うとトウカの方で戻らない選択をするかも知れないので止めて欲しい。ほーら、トウカも微妙な顔になっている。

 そんなドタバタした別れの後、俺たちは中央の『オリンポス』の塔に向かった。その手前には『チェリニー』の街もある。トウカのために隊長から今までの協力代としての金銭も預かっている。服とか小物とかを買うのもいいかも知れない。

 

 中央に向かう馬車には俺たち二人の方に、休暇で街へ向かう者が四人。二日掛けてチェリニーの街へ行き、そこから彼らと別れてオリンポスまでの乗り合い馬車を探す予定だ。

 

「トウカ、街へ付いたら最初に服を買った方がいいだろう。俺たちはもう慣れてしまったが、その格好はちょっと良くない」

「あれ? ダメですか? もう言われなかったから良いかと思ってたのに」

「駄目に決まっているだろう……」

「そうだぞ嬢ちゃん、アンタがもう少し大きくなったら、そんな格好してると襲われるぞ」

「襲われなくても野郎連中の目が釘付けだな、がははは」

「アンタが大きくなったら、嫁に来てくれって言われまくるな」

「えー? 私、もう成人してるんですけど!」

「何ぃっ!?」


 ……子供じゃなかったのか。

 

 皆の驚きの後に年齢を聞いて見た。こことの時間の差が分からないが、雪が降って消えて、また降る間を一回とすると二十一を数える歳らしい。

 

 うそだろ……、俺と二つしか違わないじゃないか。

 

 他にも残念ながら身長はこれ以上伸びない。体つきも非常に残念ながらこのままであると、間違って獣の胆のうでも噛んだような苦々しい顔で説明された。うーん、身長が低いだけで別に体つきは……いやいや、そんな事はどうでもいい。

 年齢を聞いてから隊員たちはそんな恥ずかしい格好で街を歩いちゃ駄目だ、とか髪の毛を短くしたのは可哀相だ、とか俺の嫁にならないか? とかドサクサ紛れで余計な事を言っていた。お前ら止めろ!

 

 その後の野営とかの食事の時に、隊員たちのトウカを見る目が嫁取りの目になっていた。何故かトウカの作る料理がいつもより上手く感じるらしい。いやぁ、砦に居た時に知られなくて良かった。

 

 トウカはもう砦には戻れないと思うな、色んな意味で。



  ●〇●〇●〇●〇



 二日目の夜に街に着き、ぎゃーぎゃーと五月蠅い隊員たちと別れて中央行きの馬車を探す。次の朝に馬車を探す手間を省くためだ。八人乗りの馬車を見つけ、二人分の予約を取り金を払う。その次は宿を探し、後で買い物の予定だ。

 街に入る前にトウカに服の裾を一番下まで下げさせておいた。髪の毛も短いし見た目も子供っぽいから大丈夫、だと思う。

 

 夜の商店や露店では良い物は見つからなかったが、トウカが選んだ深い緑色の外套を買った。とりあえずはそれを着させる。他に勇者っぽい衣装は無いかと探すと女性用の乗馬服を見つけた。金を積んで頼むと今夜中に調整してくれるらしい。

 ついでにトウカが見てた装飾品に見える頭冠を買う、トウカに着けさせてみると少しは似合っている。何故かトウカは顔を赤くして礼を言ってた。何故だ?

 

 宿の前にある食堂で、適当に何種類か料理を頼む。酒は……トウカも飲めるらしいが、明日も忙しいので果汁水にしておく。来た料理をそれぞれ説明しながら、二人で食べる。よく食べるトウカに言われるままに追加した。

 

 翌朝、朝食を食べ終わるとすぐに服屋に調整を頼んだ服を引き取りに行き、その店で着替えさせる。うーん、子供に見える。そんな俺の思考に気付いたのか、トウカは眉を顰めていた。おっと危ない、すぐに似合っていると褒めておいた。

 この街から塔へは大きな川を挟んだ場所にあるが、今日一日で付ける距離だ。後は着くのを待つだけ。念のためにトウカには武器は持たせてない。どっちにしろ、塔に入る時に取り上げられる。まあ、万が一でも暴れたりしないが。

 

 馬車に乗っていた他の人たちからトウカはじろじろ見られていた。恐らく髪が短いことを咎められているのだろう。あれ? 何でか俺に視線が集まってる? お、俺が髪を切った訳じゃないぞ! 勘弁してくれよ。

 そんな気不味い雰囲気の中、トウカだけは外を見てにこにこしていた。案外遠出というか、旅好きだったりするんだろうか?

 

 少し暗くなり始めた夕暮れ時に、中央の塔『オリンポス』に着いた。

 

「え? 塔と言うから背の高い、大きな建物だけと思ってましたよ。こんな大きな山の中腹から更に高い塔が伸びているんですねぇ」

「ここは最初の魔石洞窟だったらしい。この国が出来たと同時に魔石を掘る場所になってね、そのずっと後に魔獣が現れ始めて、まだ少ない内だったから排除出来たらしい、それでそのまま研究というか、学者連中の集まる場所になったんだ」

「あのー、王様とか、偉い人もここにいるんですか?」

「王様? あはは、居ない居ない、偉い人は居るけれど、学問に優れた偉い人という意味でだな」

「へえー、それでどうやって国を維持しているのかな?」

「うん? そうだな、ここを中心として五つの街にそれぞれ議会があり、役人はその街の人間に投票で選ばれる。行政、防衛、学術とかを司る人たちだな。あと、南には海からの守りとして、『ユートピア』の城郭都市がある」

「城郭都市ですか? 海から……何が?」

「この国が出来た時からある都市で、今では目的もよく分からないんだ。何でも南からの『何か』の来訪を防ぐ目的とか」


 トウカは心配なのか、色々聞いてきた。済まないが俺にも分からない事や知らない事は沢山あるんだ、勘弁して欲しい。後はここの偉い人にでも聞いてくれたら教えてくれるだろう。


 後はレナード隊長から預かった手紙と書類を院長に渡さなければならない。


 トウカの目的は元の場所に帰る事だ。アルバ山の魔石洞窟の開放が済んでなかったから、トウカとの最初の約束がまだ果たされてないが、それでも院長に会えたらトウカの目的を伝えなければならない。

 

 ……俺もこんな暢気で家庭的で、とても軍人に向かない女性を元の場所に帰してやりたいと思う。

 

 

 

  

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