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勇者がお手伝い  作者: こたつねこ
ヴァルキュリヤ、行動する
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ヴァルキュリヤ、中央に赴く

 内部で使えなければ、外部で使えばいいんだよね。

 

 羽付きの大アリが外に溢れ出す可能性に思い当たって、山の外側から攻撃してみようという話になった。炎を出そうとしたら何故か空中で燃えてた。視力の問題なのかな? ピントが合わなかったんだよねー。

 そんな時にふとこの世界に来た日に雨を降らしたのを思い出した。水が欲しいと思ったら雨雲が出来てピンポイントで私の場所に雨が降ってきたんだよね。イメージで場所を想像しただけで降ったのだから、今回もそうしてみたらどうかな?

 

 最初に炎で燃やそうとした岩場を見る。あそこに雨を……お? 雨じゃ意味が無いかな? いっそ雷を落としてみるとか? なんちゃって。雷を出すのに魔石と放電石が必要になったじゃない、私じゃダメだよね。

 そんな事を思いながらも、軽い気持ちで雷を想像した。──ほら、ダメじゃないの。あ、あれ? 雲が出来てる? 少し光っているような? 目の前に光の筋が立ったと思ったら、数瞬遅れて轟音がした。

 

 バリッ! ドォオオオオオン!! ……ゴゴゴゴゴ……

 

 凄い音! あわわわ、しかも地面が揺れてる! 雷、落とせたけど怖い! 

 

「トウカ……、洞窟内で実験しなくてよかったな」

「はっ!? そ、そうですね。アハハハ」


 後ろからアランさんに声を掛けられてハッと我に返る。軽い気持ちで攻撃魔法なんて使うものじゃないよね。氷結はともかく、炎とか雷は隊員の人たちが近くにいたら絶対怪我人が出てるよ! 

 

 その後は他の人たちに、羽アリが出て来るであろう予想ポイントの監視をしてもらっていた。まだ明るいからいいけど、夜になったら見つけられない。でも、今までの記録ではほとんどが日の高いうちに飛んでたらしい。

 明るい内に出てくるのはいいけど、私の魔法で全部を相手に出来るのかな? 数だって数百? 数千? とか言われているのだから、取り逃がしがありそうで心配だった。

 

「まあ、今まで何も出来なかったのだから、何割か倒せるだけでも運がいい。それに外に出て来る直前の群れを発見出来たのも悪く無い。トウカはそんなに気にせずにやってみるといい」


 レナード隊長さんが気楽にやれと言ってくれる。気持ちが楽になった私は落ち着いてその時を待つ事が出来た。

 

『出ました! 西側、予想地点より少し下です!』

「トウカ! やっ」

「たぁー!!」


 私も羽アリが顔を出して、今にも飛び立ちそうになっているのが見えてたから、アランさんが何か言いかけたのと同時に魔法を使った。んー、昔見た、雷が何本も落ちている写真を想像しちゃった。少し気合を入れ過ぎたかな?

 

「あれ? 空が暗くなったな」

『今、目の前の空に黒い雲が……』

『あっ、別の場所からも羽付きが顔を出しました!』

『上の方からも何匹が這い出てます!』

『攻撃はまだですか!?』

『飛びました! 次々に飛び立ってます!』


 どうやら沢山出て来たみたい。ゴメンね、発動するのがちょっと遅くて。

 

 皆さんが大騒ぎになっている時に、空一面に黒い雲が現れ、数回の稲光がしたと思ったら、光の柱、そうとしか表現できない何本もの太い稲妻が落ちた。

 

 ババッ! ドンッドドンッドドドドドォォォォン!!!

 

 

 ──最初に来た体を叩きつけられるような音の衝撃の後、私を含めて皆さんが気を失った、らしい。



  ●〇●〇●〇●〇



 後から聞いた話では、雷の魔法、その光と音は砦の残ってた人たちや、遠くの街や中央の塔からでも観測されたらしい。まるでこの世の終わりでも始まったのかと人々の噂になり、恐怖に慄いたと。スイマセン。魔王じゃないのよ?


 

 どうやら逃した羽アリはいないみたいで一安心した。倒れた時に怪我した人がいたみたいで、私は治療のお手伝いをしながら謝って回った。皆さんは大丈夫と言ってくれるけど、私から目を逸らしていた気がする。やっぱり怒っている?

 その日の残りは本部で、羽アリが空に飛び出していないのを確認したら休養に当てた。明日になったらもう一度洞窟に入り、羽アリの生き残りがいないか確認するそうだ。

 

 夕食後はいつもの湯船を作って、皆さんの服の洗濯をした後に早めに就寝する。やっぱり疲れていたのか、意識が遠のくのは早かった。

 

 次の日はレナード隊長さんも一緒に洞窟内を進んだ。もう上の階層を探索する事はしないけど、羽アリが全滅したのかを確認したいらしい。たまにあらわれる大アリを倒しながら進む。道順も一つだけだから早かった。

 二階層とでも言うべき坂道を一つ登った場所の奥で昨日、採掘場の私の魔法で閉じた壁の一つを開けて慎重に進む。水晶玉には反応が無いけど、もしも生き残りがいて、こちらに気付かれると危険だもんね。

 

「反応あり! ……しかし、数は少ないですね。せいぜい五匹程度かと」

「普段なら困るが、少しでも生き残っててほっとするのは何故だろうな」

「自分もそう思います」


 あれ? 何か失礼なことを言われている気がするね?

 

 それから塞いでいた壁を取り払うと、羽アリの生き残りと言っても弱々しく地面で這い蹲っている数体だけ、後は……死骸の山だった。そっとレナード隊長さんの顔を伺うと、頷いてくれたので無言で厚めに壁を作った。

 

「えええっ!? 隊長、いいんですか?」

「羽付きは元から長く生きられない個体なんだ、もう十分だろう」

「はあ……」


 その後は念のために壁で塞いだ坑道を回り、無傷の群れが居ないかだけ確認していた。どうやら他には羽アリらしき反応は見られず、かといって更に上の階層に行くだけの準備も出来ていなかったので外にでて砦に帰る事になった。

 

 

 一旦砦に帰り、改めて準備して再度魔石洞窟の攻略すると言われてた時に、この国の中央部から、勇者としての私に召喚状が届いた。



  ●〇●〇●〇●〇



「うーむ、このまま行けばアルバ山の洞窟を全部開放できたかも知れないのに、中央の奴等め、いいところで邪魔しおって」

「せめて、女王蟻? そんな個体だけでも倒しておきたかったですね。場所さえ分かれば簡単に行けたでしょう」

「トウカ、女王蟻の居場所は見当がつくのか?」

「あ、いえ、中央部分の奥深い所かな? って思うくらいで……」

「さすがに分からんか、トウカがいれば強引にでも進めたのにな」

「その通りですね」

「アハハハ……」


 二日後に中央に向かう事になった私に、レナード隊長さんを初め、アランさんたちが残念そうに言ってた。私が居なくなる事を残念だと思っているんだよね? 戦力が無くなるからそんな事を言っている訳じゃないよね、ね?

 すっかり便利な人間と思われてる事に微妙な気持ちになる。他の隊員の人たちも風呂がー、とか洗濯、メシがーとか言ってる。くぅ……、ここから離れるのに寂しくならないのは何故?

 

 それでも中央に向かう時に、第一発見者のアランさんと一緒に行くので心強い。何故か目を離すと暴走するとか思われている気がするけど。

 

 中央に向かう前までに、せめてお風呂だけでも入れるように風呂釜を作り、薪で炊いてお湯を沸かせるようにしておいた。洗濯場の井戸水をせっせと汲んで、苦労しながら薪を焚くがよい。

 

「トウカ、ここを出て行く前に、水晶玉と通話栓、もう少し作ってくれんか?」


 ……さすがアランさんの上司、最後まで容赦ないですね……

 

 

 

 

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