アマゾネス、光で戦う Side B
『羽付大顎』は普段は見る機会はほとんど無い。見る事があるなら数年に一度の大発生の時だ。そんな羽付きが今回の魔石洞窟の遠征で見つかった。初回の討伐はたまたま数匹で済んだが、恐らく奥には何百と言う数がいる可能性がある。
トウカが天井までの高さにより、持っている照明では暗くて発見しにくいと指摘した。そしてそれを埋め合わせるように照明を明るくする改良をしてくれる。色々苦労してたみたいだが、それによってとても助かるだろう。
隊員全部が集まっても四十八名、下の階層からも呼んでいた。いつもの発生時みたいに羽付きが沢山いるとなると例えこの数でも相手にならない。残念だが、今回は羽付きの群れの位置と遠目からでも数が確認できればいい方だろう。
トウカの改良が済み次第出発する。水晶玉で魔獣の反応を見ながら慎重に進まねばならない。さっきは坑道の途中で魔獣の数が制限されてたから良かったが、この先にある採掘場では困る。
採掘場だと平屋の建物が入るくらいの広さがあるし、なにより何本もの坑道へ繋がっている。その何本かの坑道の先に羽付きの本隊みたいな群れがあるのだろう。
そうだ、トウカに進む先以外の坑道の入り口を塞いでもらおう。そして一本一本調べて行けば良い。それからは採掘場までに単独の羽付きとか大顎が現れたが、それらは問題無く倒していけた。
採掘場に着き、まずは全坑道の入り口で水晶玉の確認、問題なければ端の入り口だけを残して後はトウカに塞いでもらう。
「一つの入り口だけ残して、他のは壁を作って塞いでくれないか?」
「入り口だけ塞ぐのですね、分かりました」
地面から壁が出てきて入り口を塞いでいく。四つの内、三つを塞いだらこの場所に四人残して入り口に入って行った。水晶玉には単独の魔獣が時折り反応しているが、まだ本隊は現れない。後方に残した隊員と連絡をとってもまだ現れてないそうだ。
突き当たりの採掘場に二匹いたが、ここは外れのようだ。中間地点になっている採掘場まで戻り、隊員を交代させて次の坑道へ、今来た道を塞いでもらい、次の入り口を開けてもらったら、軽く装備の点検後、入って行く。
次の坑道を最後まで進み、何もなかったのを確認の後、中間まで戻り次へ入る。
ここも外れかと思い始めた時に水晶玉を見ていた隊員が叫んだ。
「当たりです! まだ坑道の途中ですが、何十匹といますよ! 恐らく突き当たりの採掘場が群れの中心でしょう」
「……よし、こちらには気付かれてないか?」
「動きはありません、止まったままの様です」
「ここまで確認できれば十分だろう。──トウカ、この坑道を厚い壁で行き止まりにしてくれ! 閉じ込めて、十分に装備を整えてから殲滅したい」
「分かりましたが……、この先は行き止まりですか? 他の道と繋がってたりしないんでしょうか?」
「いや、この坑道は一本道で、先には少し広めの採掘場があるだけだ」
トウカは壁を作りながら、俺に地形を聞いてくる。持っている地図もそうなっている。何も問題ないはずだ。
「そこの広さで何百の羽付き大アリは収まるんでしょうかね……?」
トウカの言葉に俺は一瞬固まってしまった。
●〇●〇●〇●〇
念のために他のの坑道にも入ることする。塞いでいた隣りの坑道を進んで行くと危惧していた通りに反応が現れた。ここもトウカに頼んで壁を作ってもらう。しかし、まさか羽付きが自ら掘り進めて坑道を繋げるとは思わなかった。
中央斜面まで戻り、地形的に群れの近くと思われる坑道に入って行く。間が悪いことに戦士大顎の数匹の群れと当たり、全て倒すまで手間が掛かる。死骸の処理は後回しにして先を進んだ。
結局は最初に見つけた坑道の他に、三本の坑道に反応があり、一応はトウカの壁で塞いであるが、洞窟を羽付きが自分たちで掘るという予想外の行動にこれからの作戦に悩んだ。とりあえず、レナード隊長の所まで戻って、指示を仰がねば。
「アリだから、女王っているんでしょうね」
「──女王?」
「え? えーと、アランさんは普通の、大アリでもいいですけど、アリの生態って分かりますか?」
「普通の蟻がいて、それを守る戦士蟻がいる。群れを作る。たまに羽付きが飛び回るくらいか、知っているのはこれくらいだ」
「あの、アリは女王から始まって、巣を作り、働きアリとか兵隊アリがいます。繁殖期になると羽アリが生まれるんだったかな?」
「群れの中心になる蟻がいて、それが女王と呼ばれるものなのか!」
「ここでの生態が同じものと限りませんけどね」
くそっ! だから何年も討伐を続けても減らないのか! あの羽付きが繁殖期の印だと? 増え続けるだけじゃないか!
たが、トウカが教えてくれた事により、今回は少し遅かったかも知れないが、絶滅させる見通しが立った。周りから少しずつじゃなくて、女王と呼ばれる個体を倒せば壊滅を追い込めるかも知れない。
女王は普通なら一匹だけ、特殊な種類だと何匹もいる事があるから、ここでは一匹だけとは約束出来ない、トウカはそう説明してくる。出来れば一匹だけだと助かるんだがな。いや、その前に羽付きだ。あれを飛ばすとまた増えてしまう。
中央部斜面に二班八名を監視のために残し、残りは急いでレナード隊長がいる本部まで戻る事にした。出来ればそのまま砦に人を走らせ、全隊員と持てるだけの装備をここまで運んで欲しいのだが。
●〇●〇●〇●〇
坑道の中を急いで本部まで戻る。その途中でトウカに通話栓をいくつか作ってもらった。しかし、ここに来てからトウカは色々と便利な道具を作ったなぁ。理想を言えば洞窟に入る前に作って欲しかった。口に出して言わないけれど。
「隊長、羽付きの群れです。その確認後、一応は坑道を塞いであります」
「羽付大顎か、面倒なヤツが出てきたな。で? 一応とは?」
「どうやら自分たちで穴を掘っているみたいで、何本かの坑道が繋がっています」
「羽付きなら外に出て来る可能性が高い訳か、今から砦に行って、隊員と装備を補充して間に合うのか?」
「やるしかないでしょう」
「ああ、そうだな……」
急遽、馬車用の馬を外して、それで二人の隊員に砦まで走らせる。他にもトウカの通話栓を渡し、その能力を説明して驚いてもらった。砦に向かった隊員にも持たせているので、使用距離の試しにもなるだろう。
他に蟻には女王がいるらしい事、それによって群れの数が増えていく事をトウカから聞いたと報告する。もしもトウカが教えてくれなかったら、いつまでも蟻の討伐を続けなければいけなかった。とりあえず、女王の確認からだが。
「トウカ、他に何が考えられるだろうか?」
「……羽アリは態々洞窟入り口から出てくるでしょうか? 自分たちで穴を掘る事が出来て、空を飛ぶ羽根を持っている。それを考えればどこから飛び出しても不思議じゃないと思うのですが……」
──俺と隊長は顔を見合わせて、その言葉の意味をゆっくり理解していく。
「水晶玉と通話栓? を一緒に持たせて、山の外側を監視させろ!」
「了解しました! 一番から全員へ、水晶玉を持っている者に通話栓を渡して、山を外から見て、羽付きの群れがいた辺りを重点的に監視せよ」
『直ちに行います』
「なるほど、便利な物だな」
もちろん隊長にも通話栓を渡した。
「あれ? 外なら私、魔法の制限て無くなるのでは?」
「え? あ」
「ああ、炎の魔法だったかな? それは遠くでも使えるかな?」
「ちょっと試してみてもいいでしょうか?」
「……出来るだけ岩場でやってくれると助かる」
そうか、外だからな。トウカの『大炎』を使っても回りに被害が出ないか。トウカの後に付いて行き、山の中腹を狙ってもらう。しかし、魔法が届くのか? 案の定、狙いまでの中間の場所、空中で炎が出来た。もう少し近寄らないと駄目かな?
そう考えるてるとトウカはいつもの唸り声を上げて考え込んでいる。また何かを考え付いたのだろうか? 黙って見守っていると手のひらを上に向けてぶつぶつ言い始めた。すると空の一点に黒っぽい雲が出来る。
あれはトウカと最初に会った時に見た物と似ている。そう思い、そのまま見ていると雲の中で少し光ったと思ったら、いきなり山の中腹に雷が落ちた。
ドォオオオン!!
──近くに雷が落ちたのは初めて見たので驚いた。凄い音の後に地響きが来る。その音に驚いたのか、ドーナト隊長や他の隊員たちも出てきて何があったのか聞きに来た。トウカは自分がやった事なのに固まっている。その威力に自分でも驚いたのか?
「今の落ちた雷は、まさかトウカが?」
「はい、炎が遠くまで飛ばせなかったみたいで、その代わりに使ったらしいです」
「ははは、何故に雷だと届くのだろうな」
「さぁ……、自分でも驚いたみたいですからね」
未だに固まっているトウカに、何て言ってやろうと今から悩んだ。




