アマゾネス、光で戦う
耳に装着出来るワイヤレスレシーバーを風と言うか、空気が振動するイメージで作ったみた。本当ならば全員分を作った方が良いのかも知れないけど、試しに使ってみたら皆が同時に話し始めた。こりゃダメだと班長さんだけに渡す。
今日は中央の坂道を登って上の階層に行く。昨日の事や水晶玉にちらちらと反応しているので、二班で一組の八名で行動するらしい。本格的に群れが相手になるんだね。あまり多くないといいんだけど……、そんな願いも虚しく、数匹の反応がこの先にあるらしい。
どうやら水晶玉を見ている人の反応では魔獣の移動速度が速いらしく、アランさんはもしもの事を考えて後退することにしたみたいだった。それでもそろそろ追いつかれると思いきや、姿が見えない。そしたら上にぼんやり大きな影。
魔獣が来ると思ったら、あんな大きいのが頭の上を飛んでるんだもん、慌てて風を使って吹き飛ばしそうになったよ。でも、へたに突風でも使ったら他の人たちにも被害が出そうだったからサイクロン掃除を思い出し、そこからと言う訳で竜巻を作ってみた。
五匹ぐらいを竜巻で巻き込んだら魔法を止める。そのまま地面に叩き付けられた羽が付いてる大アリをアランさんたちに倒してもらった。いきなり風の魔法を使った事にアランに謝ったけど、特に怒られる事は無かった。
この大アリも魔獣の一種で、何年かに一度、大発生する事があって、別に人や他の獣に襲い掛かる訳ではないけれど、空に何百、何千と羽ばたく大アリの大群が見られるとか。何故かその後は地上に落ちて、ほとんどが死んでしまうらしい。
それでも結構な数が新しい群れを作り、増えていくのでそれを退治するのに苦労するとアランさんは言っていた。となると今倒したこの羽付きの大アリは外に出る直前なのかな?
アランさんを初め、他の人たちもその可能性を考えていたのか、難しい顔をしている。レシーバーで他の人たちに報告していると、どうやら嘆きの声が返ってきてるみたい。戦いたくないけど、後のことを考えればここで叩いておきたいとか。
念のために大アリを発見したこの場所に他の班を集め、全員で行動することにしたらしい。私にも先程の竜巻の魔法をお願いされた。出てくる時は多分、大群だから大雑把でいいから竜巻に巻き込んで欲しいと。
この場所で他の班が来るのを待つ。その間に皆さんは携帯食のすごく硬いパンを齧りったり、私が出した水を飲んでたりする。さっきの戦闘で気付いたんだけど、この層の天井は高くて、上まで十メートル近くありそう。その分、ちょっと暗い。
照明の他に壁も所々光っているけど、空中を飛ぶ魔獣と戦うにはちょっと大変だよね。火は使うなと言われているし、他には何があるだろう? 照明の魔道具に魔力を集めるイメージをする? その前に魔力のイメージが出来ない。
今まで何してたんだろ。魔力を通り越して現象のイメージばかりだったよ。ここに来て魔力がどんな物か分からないとは思わなかった。うう、しょうがないアランさんに聞いてみよう。
「アランさん、ちょっとすいません、魔力って何でしょう?」
「……」
●〇●〇●〇●〇
私の質問にアランさんは呆れた顔をしている。今まで魔法を使っていたのに、その魔法の元が分からないなんて言われるんだもんね。本当ゴメンね。
「──そうか、トウカは魔法が無い所から来たんだったな。今まで当たり前に使っていたから、分かっているか、分からなくても問題無いと思っていたよ」
「いやー、初めから何となく使えてたんで、考え無しでした」
「まあ、いいだろう」
そこからアランさんの説明が始まった。魔力自体はどこにでもある物で、見えないだけで見の前に漂っている。魔法が使える者や魔獣は、その魔力が使える生き物である。使える魔力の量はそれぞれによって異なり、どうやら私は使える魔力が多いらしい。
なるほど? 魔力が多いんじゃなくて、使える魔力の量が多いのか。えーと、つまり見えない魔力を、空気とかを集めるイメージで使えばいいのかな? 照明を実験で壊す訳にはいかないので、壊れてもいい屑魔石を取り出す。
この魔石と一緒に含まれている鉱石は何なのか分からないけど、この混合石に魔力を集めるイメージをする。魔力? 集まれー、集まれー。
──バチッ!
……最初、明かりが強くなったと思ったら、急に音と共に放電した。
え? 魔石に魔力を集めると、その魔力によって含まれている鉱石が放電して光るの? この石って電気の石なのかな。うーん、イメージが難しいけど電池と電球が一緒になってる? それともハンドライトに近い?
興味が湧いたので、照明の魔道具を借りて光っている部分を調べる。よくみると純粋な魔石とさっき放電した石が二つ並んでいて、スイッチを入れると二つの石が接触して光るようになっているみたいだった。
これは……単純に大きくすれば光も大きくなるかな? 持っている屑魔石を照明の魔道具のそばに持っていき、魔道具の石を大きくするように念じる。手に持っていた屑魔石は余分なゴミを残して消えていき、照明の石は大きくなった。
試しに他の人に持たせて明かりを点けてもらう。うん? 普通の明るさだね?
石を大きくしただけではダメなのかー、失敗。魔石は電池じゃなくて周りから魔力を吸い取って、ある程度の力しか出さないみたい。強くは出来ないのかな。
そうじゃなくて、石を大きくして私が魔力を集めれば明るさも強くなるかも。先程の失敗した魔道具をもう一回貸してもらって、魔力を集める。──おおー! 強い光になったよ! アランさんも興味深そうに見てる。
でも、私が居なくても強く光ったままになって欲しいんだよね。何かいい方法は無いかなー? それから色々調整してみた。どうやら魔石を大きく、放電の石を魔石よりも小さくすれば明るさが強くなるらしい事に気付いた。
なるほどー、これで薄暗いのが解消されるよね。アランさんに進言してみよう。確認のために魔石を小さくすると明かりは暗くなって意味は無い。魔石をもっと大きくして、放電石を小さくすれば?
バリバリッ!!
……石から小さな雷みたいなものが壁に向かって走った。壁に向かって実験してたから良かったけど、人に向いてたら怪我人が出たかも。その可能性に思い当たってぶるりと体が震える。実験中はちょっと気を付けよう。
その後はアランさんに説明して、照明の改良をさせてもらう。どうやらこの照明の魔道具は一般的な物で、中央にいけば明るい物もあるかも知れない、との事。それでも今は助かると言ってくれた。全員が集まり次第、取り掛かろう。
「先程、変な音がして光ってたみたいだけど、大丈夫だったのか?」
「あー、すいません、実験してたらカミナリ? が出ちゃって」
「雷が出たって……、そんな簡単に出る物なのか?」
「どうも照明の魔法具はカミナリの力で光ってるみたいなんですよ」
「それは知らなかったな……、照明以外に使い道はあるのか?」
「どうでしょう? あ、生き物に当たると痺れますよ」
「うーむ? 戦闘に使えるのか?」
「味方が前に出てると、向けて無くても誤射しそうです」
「駄目じゃないか!」
すいません、攻撃に使う事は考えてなかったんです。とりあえず明かりさえ確保しておけば、空中を飛んでる魔獣も見やすくなって戦いやすいと思うんだ。
しばらくたって、他の組が集まったところで私は照明の改良を始めた。




