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勇者がお手伝い  作者: こたつねこ
アマゾネス、戦う
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アマゾネス、風で戦う Side B

 トウカの助力により大した怪我人も無く魔獣の群れを討伐出来た。

 

 その後の始末に死骸を遠くへ捨てた後、中継地点の辺りに魔獣の体液やら毒の匂いが漂ってしまった。俺たちは慣れているんだが、トウカには我慢できなかったようで魔法を使って地面を洗い流したり乾燥、匂いを他の場所に流したりしてた。

 それに俺たちに染み付いた匂いも我慢できなかったのか、俺に許可を取り、皆を風呂に入れてた。何か俺のお袋みたいだなと思った。まあ、風呂に入るのは気持ちいいし、さっぱりするので文句は無かった。ついでに軍服の洗濯まで始めたのには驚いたが。

 

 そんな贅沢な魔法の使い方をしたトウカには頭が上がらず、昼食時は好きな物を食わせ、果物の土産も多かった。うーん、攻撃魔法を使わなかったのに、貢献度が高いよな。補助魔法を専門にさせた方がいいのかも。

 

 さて、今回の問題は魔獣の群れが出たことじゃなくて、その討伐に使った特殊針の補充だ。幸いな事に使った針は七割を回収出来たが、特殊針の後部に取り付けられている破裂体の消耗が激しい。恐らく全体の五割を使用したと思う。

 本部に戻ればまだ同じくらい残っていると思うが今回の遠征期間が短くなる。砦まで人をやって、持って来てもらわないと駄目だろうなぁ。今から頭が痛い。

 

 縋る思いでトウカに破裂体を見せ、これが破裂することにより針を飛ばすと説明した。そして、それと同じ物が出来ないか? と依頼した。本来なら加工が難しく、軍事機密に近い扱いなんだが、トウカには構わないだろう。

 トウカの質問に色々答えた。材質は魔石、二重になっててそれぞれに火と水の魔力が封入されてる、ついでに膠で針に付着させる。トウカはいつもの唸り声を上げて、まず近くの壁から魔石を取り出して色々試していた。

 

 火の魔法を使わせるのに不安を覚えたが、小さいものだから大丈夫だろう。そんな俺の甘い考えを裏切り、いきなりポンッ! という音をたてたと思ったらトウカが「ギャー!」と叫んでた。……怪我してないよな?

 

 どうやら鉄の筒の中で破裂させる物を、そのまま何も無い場所で破裂させたらしい。幸いにも破片で怪我や火傷はしてなかった。俺は慌てて石でも使って筒を作らせてその中で試してみるように注意した。ちょっと遅かったが。

 ついでに装填してない長針弓を渡し、もし壊れても問題ないからとそれで試験させることにする。トウカは実際の破裂体を見て、試作品を作ることにしたようだ。

坑道の少し離れた場所で試しているのか、フシュやらボンッとか音が聞こえる。


 その後、トウカはどうやら上手く作れなかったようで俺に謝って来た。まあ、いつも駄目で元々のつもりでやってもらっている。トウカが期待に答えてくれるので今回も無理を言ってしまっただけだ。作れなくて当然なのである。

 トウカにも職人でも加工が難しい物だから気にしなくていいと言っておく。どうやら魔石に使用しない時に魔力を発動させないようにするのが難しいらしい。俺にも分からないんだ、どうしようもない。

 

「それで試作品を作っている時に、音が大きくてうるさかったので色々耳栓みたいのを作ってたんです。そしたら急に良い考えが浮かびまして、コレ、作ってみました」

「うん? 何だろこれ? 耳に付ける物?」

「はい、こうやって耳に入れて……そう、そしてちょっと離れて試しますね」

「え?」


 俺の耳に付けた物をトウカも付けている。それを付けたまま俺をこの場所に置いたまま少し遠くに離れた。何をするつもりだ? と思っていると、

 

『聞こえますか? 聞こえたら何か話してみて下さい』

「──ああ、聞こえる。これは一体何の魔法になるんだ?」

『えーと、音を響かせるために風を利用して、それを遠くに運ぶ感じかな?』


 話ながら戻って来たトウカ、これを付けていると遠くの者と話が出来るだと? ちょっと待て、それで何が有効になるのか……、いや、他の班と連絡がいつでも取れる、連携が出来るようになる? 他には今はちょっと思い浮かばない。

 

「何人でも連絡が取れるのか?」

「試してみないと分からないですね。とりあえず同じ物を五個ほど作りました」

「よし! 試してみるぞ」


 近くに居た隊員を呼んで同じように耳に付けてもらい、それぞれが見えなくなるまで離れる。三人には坑道の角を曲がって隠れてもらった。一応、水晶玉を見て魔獣がこの層にはいない事を確認した。

 

『あー、トウカです。聞こえますか?』

『おお!? びっくりした!』

『嬢ちゃんがすぐ近くに居るみたいだ!』

『何だこれ? 不思議な感じがするなぁ』

『これも魔道具なのでしょうか? アラン隊長、すごいですね』

『おー! すごい、すごい!』

「やかましい! お前ら一遍に話すな!」


 とりあえず、名前や番号で呼びかけて、それに答えることにした。そうしないと収拾がつかなくなりそうだった。せっかくの素晴らしい魔道具なのだから、有効に活用しなくては。



  ●〇●〇●〇●〇



 昼前に色々あって、昼食を食べるのも遅れた。トウカの強い要望により風呂と洗濯もしたから後半の探索は止めにする。第一、魔獣の群れを討伐するのにも疲れたからな。その後は俺たち小隊長とそれぞれの班長が集まり、明日の予定を立てる。

 今日の探索は遅れたが、新しい魔道具のおかげで明日からの探索は捗りそうだ。

地図、魔獣の位置、そして連絡、水に関しては問題が無くなっているし、針の数には不安があるが、トウカの柱の魔法でもしもの時の退却も楽になるだろう。。


「水晶玉があれば、わざわざ端まで行かなくていいと思わないか?」

「確かにそうだな、他の虫や獣は気にしなくても特に問題無いだろう」

「まあ、隅々まで地図が作れないと言うのは後で問題になりそうだがな」

「さすがにそれを嬢ちゃんに頼むのは悪いでしょう?」

「トウカには自由にさせる方が良い物を作るからなぁ」

「自由過ぎますけどね、いえ、風呂と洗濯は有り難い事です」

「これで戦力まで高いと自分たちの意味が無くなりますからねぇ」

「能力はともかく、女性に戦わせるのも嫌なもんですよ」

「それが一番問題だな」


 何故かトウカの話題が多かったが、とりあえず明日は水晶玉を存分に活用し、昼前まで行ける所まで行ってみる事になった。何か問題あればすぐに連絡する。帰る指示も同時に出来るから楽だ。それと群れを見つけても戦いは避ける事にする。

 とりあえず本部まで何人か消耗品の補給に行かせているが、中央層からの魔獣の戦いで足りるかどうかも分からない。もうちょっと少ない群れでも見つければ、トウカの攻撃魔法の練習になったのに。

 

 班長会議の後、少し早めの夕食を取る。トウカも協力して作ったようで、パンはともかくスープがいつもより上手かった。材料はいつもと変わらないらしい。トウカが作ったと聞かされたからかな? 上手い夕食の後は、交替で見張りを立てて就寝した。

 

 

 次の日は昨日の遅れを取り戻すつもりで早めに出発する。この場所に八人ばかりを残して行くつもりだ。その分、それぞれの班が持つ特殊針の予備数を多くしている。太陽が見えずに朝の感覚が分からないトウカはふらふらしてた。

 やはり訓練してたから俺たちは何となくでも時間の感覚が分かるのだろう。特に魔石洞窟での遠征の回数は多いから。とりあえずトウカがちゃんと目を覚ますまでしっかり見ていることにする。

 

「武器と装備の点検はもちろん、魔道具の確認も忘れるな!」


 昨日の耳栓は『レシーバー』というものを参考に作った物らしく、言葉の意味が分からないので、耳栓としようとしたらトウカに駄目出しされた。通話栓と言ったら難しい顔をしながらも了承してくれる。別に俺にはどっちでもいい。

 班にはそれぞれ番号をつけて、通話時の呼び出しにする。一番から五番へ、という様に。ああ、レナード隊長の所にも通話栓を持っていって欲しかった。補給が届いたのは昨日の夕食後、遅くなってからだったからしょうがない。

 

 中央の斜面を登り、次の階層にたどり着く。昨日から見てると水晶球にはこの階層の魔獣がチラチラと映っていた。念のため今回は二班一組で組ませて探索する。群れを発見した場合は連絡した後、即座に中央斜面まで戻る手筈になっている。


「魔獣の反応あり! 数匹こちらに向かっている模様、けっこう早いです!」


 いきなりか、何十匹が来るよりマシだが、後から群れが来るかも知れない。

 

「こちら一班、数匹の魔獣を発見。念のために後退する」

『了解』

「殿には三名で付く!、ゆっくり下がるぞ」


 トウカを先行させ、俺を含めた三人が殿となり後退する。移動速度が速いって何だ? もしも『千脚』だとこの人数ではちょっとキツイな。

 

「来ます! これは……上?」


 上の階層に居る魔獣を反応してしまったのか? そんな事を考えて上を見ると照明に照らされて、薄っすらと輪郭が浮かぶ黒い体を持つ虫型。羽ばたいている? 飛んでる魔獣って、『羽付大顎』か!

 

「うそだろ!? 何でこんな場所にいるんだよ!」

「大発生するっていう、あの羽付きの?」

「追いつかれる! もう走って逃げろ!」


 ビュウウウオオオオオ!!


 指示を出し、全速力で逃げようとしたら羽付きの一匹を中心に竜巻みたいな物が発生した。それに何だか引き寄せられる感じがする。慌てて隊員同士で掴まり、それに耐える。

 

「少し我慢してて下さい!」


 トウカがその竜巻みたいな物を操って、他にも追ってきた羽付きを巻き込んでいく。四五匹居たと思われた羽付きはその竜巻から抜け出すことが出来ず、最後にはまとめて地面に叩き付けられた。

 

「まだ生きてます、止めをお願いします!」


 何が起こったのか把握出来てなかったが、それでもすぐに我に返り、言われるままに地面でもがいている羽付きを撃っていき、何とか全部倒せた。

 

「すいません! 風を使っちゃダメって分かってたんですけど、あんな大きなアリが飛んで来て驚いちゃって……」


 いや、風が駄目なのは吹き飛ばしであって、あの竜巻みたいな吸い寄せ巻き込む魔法だったら問題無いと思う。そうか、竜巻か、それは忘れていたなぁ。

 

 申し訳無さそうにしているトウカを見ながら、そんな事を考えていた。

 

 

 

  

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