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勇者がお手伝い  作者: こたつねこ
アマゾネス、戦う
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アマゾネス、土で戦う Side B

 トウカが何も無い場所で水晶玉らしき魔道具を作り出した。後で聞いた話では、地面にも硝子の材料や水晶の粒は含まれているので、もしかすると土から抜き出しているのではないか? と言う事らしい。

 それはトウカの言うところの『ジーピーエス』という物を参考に作ったらしい地図を表示させる魔道具だった。通った道を描き出し、ある程度の範囲の道順を記録する。残念ながら水晶玉からはみ出たものは消えるらしいが、それでも十分である。

 

 トウカが持っていなければ使えないのかと思ったが、試しに俺や他の隊員に持たせてみても問題無く使えた。トウカは何も無いところから魔道具も作れるのか? それだったらすごいことだ。それならばと長針弓の針を駄目元で作ってもらう。

 しばらく悩んでいたと思ったら、地面に小さな壷が出来た。なんだこれ? 何をするのかと見てたら壷の底から炎が吹き上がる。それを見て慌てて中止させる。トウカが言うには、金属を作るのには坩堝で高温にして作らねばならないからと言う。


 ……たった今、水晶と言うか硝子の玉、作ったばかりだろう。

 

 炎を使うのは禁止、そして態々そんな事しなくてもトウカは作れるはずだと説明すると、手をぽんっと打って納得してた。やはりトウカから目を離すのは怖いな。何を仕出かすか分からない。

 改めてトウカは目を閉じて唸ってた。しばらくすると壁に異変を見つけた隊員が叫ぶ。壁の魔石の光が小さくなっていると。その声に驚いたトウカが眼を開けると足元に音を立てて針が落ちていた。

 

「えーと、何とか出来たみたいです。はいっ! アランさんどうぞ!」


 壁の魔石の変化を考えると、どうやら周りの魔石から材料を取り出して針の形に固めているらしい。渡された針を驚きながら見つめる。携帯してる特殊針は割りと多目だが、群れに対しては心細い。だがトウカが居れば継戦能力が上がるかも知れない。

 

 そんな期待を込めて針を握ると簡単に曲がった。

 

 ……うーむ、焼き入れしていない金属の様だ。どうやら鍛冶の者に鍛えてもらわないと駄目なのかもな。屑魔石からトウカが作り出せるのは有効だが、わざわざ作らせるほどでは無い。残念だが諦めよう。何故かトウカも残念そうだった。

 

 昼食前に本部に戻り、隊長に水晶玉の報告をする。すると隊長は誰にでも使える地図の魔法具に驚き、ぜひ全突入班の分を作れないかとトウカに依頼した。トウカは素直に頷き、それぞれの水晶玉を作ってはうろついてた。

 

 魔道具の製作と使用時の試験を一緒にやっていたから疲れたのだろう。全部を作り終えたトウカにその日はもう余計な事はさせず、夕食時に好きなだけ食べさせて、早めに休んでもらった。今日一日ご苦労さま。



  ●〇●〇●〇●〇



 二日目には上の階層に向かう。上に行くためには最下層中央部にある坂道というか斜面を登る。そのまま斜面を登れば中央階層まで行けるが、下から魔獣を殲滅しながらじゃないと万が一の退路が確保出来ない。トウカも居るし無理はしない。

 俺たちの班はゆっくり向かう。その途中で『大顎』や普通の大アリが出る事もある。トウカは自分も攻撃した方がいいのか? という風に見てくるが、洞窟内でトウカに長針弓は使わせない事にしている。レナード隊長にも指示されている。

 

 何故かトウカがやる気になって、荷物を他の者の二倍は持っていた。役に立ちすぎだろう勇者。

 

 他の隊員が水晶玉から地図に写し取っている時間にトウカは周りで光っている魔石を調べたり取り出している。別に遊んでいる訳じゃなく、何か考えがあるのだろう。取り出した石を持って、俺たちの戦闘を見たり、隊員に話を聞いたりしてた。

 しばらくすると、また水晶玉を作り出した。同じ物を作っているのか? うんうん唸るトウカを見るのは今じゃ日常風景になりつつあるな。あーとか、うーんとか唸り声を上げていたと思ったらトウカが持っていた新しい水晶玉を差し出した。


「アランさん、ちょっと見てもらえますか?」

「なんだい? 地図の魔道具を改良でもしたのか?」

「魔獣の位置が分かるようになった……と思いますが、どうでしょう?」


 ──今、何て言った? 魔獣の位置が分かる?

 

 渡された水晶玉を見ると、今使っている地図の魔道具とほぼ一緒だ。しかし中心に光っている粒みたいなのが見える。

 

「最初は感度を上げすぎて屑の? 魔石にまで反応しちゃったんですけど、何とか調整して魔獣だけが分かるようにしました。……中心の光は私です。どうしても消せなくてすみません。どうやら魔力に反応してるみたいで」

「みたいって……すごいじゃないか!」

「おや? 褒めてくれますか?」

「ああ、褒めるさ、今までで一番すごいぞ!」

「……何か微妙に嬉しくないですね」


 生の薬草でも噛んだみたいな顔をしてるトウカを褒める。これがあれば魔獣との戦いに絶大な効果が上げられる。群れの場所の手前で防御柵でも作って、魔獣を押し止めながら一方的に戦えるんじゃないのか? 話では今までの水晶玉に付与出来るらしい。

 本当なら本部に戻って隊長に報告してから全部の班に使わせたいが……とりあえず、中継地点場所に全員集まるんだ。そのときにでもトウカに頼んで付与してもらおう。隊員の安全どころか戦いにも有利なるぞ。

 

 移動中に見てると、たまに水晶玉の端に光の粒が現れる。自分たちの位置に近くなると確かに魔獣だった。大アリみたいな相手では光らないのはしょうがない。魔獣が来ると分かるだけでも精神的余裕が出来る。

 それにトウカは自分の位置が光っているのは申し訳無さそうにしているが、万が一、トウカとはぐれてもすぐに場所が分かるのは大きいのだ。トウカには可哀相だから説明しないけどな。隊員たちにも口止めしておいた。

 

 俺たちだけ少し遅れているが、その程度の些細な事は気にならないくらいの成果をトウカが出してくれたのだ。他の者も喜んでくれるだろう。そんな事を考えながら最下層中央に近づくと、隊員の慌てて叫ぶ声が聞こえた。

 

 水晶玉に、大多数の光が現れたと。



  ●〇●〇●〇●〇



 その場所までの経路は隊員も俺も分かっている。水晶玉の効果を確認しながら歩いていただけである。慌てて走り始める。トウカも水晶玉を見て、何かを察しているらしい。黙って付いて来ている。隊員二人と共に置いていった方がいいのか?

 少し悩んだが、トウカの戦闘時の力を頼りにするかも知れないから、何も言わずに一緒に行動してもらう事にする。もし最悪な事態になったら隊員と一緒に逃がそう。

 

「すぐ近くです。恐らく中央坂道の、中継地点で他の班と戦闘中だと思われます」

「戦闘準備! トウカ、君は攻撃に参加せず、皆の発射済みの長針弓と交換して、装填作業だけやってもらえるか? 交換と装填だけしてくれるだけでいい」

「わ、分かりました!」


 ……さすがに声が震えているか。いきなりこんな事になって申し訳無い。

 

 その場所に来ると、どうやら皆は坂道の下で、上から降りて来る魔獣の群れを迎え撃っているらしい。ちっ、見ると『千脚』がいるし、『戦士大顎』まで群れに混じっている。坂道で数が制限されているだけマシか。

 

 俺の班も三人で戦闘に参加する。予備の特殊針は一人四発ずつの八束。それでも中継地点にするために補給の荷物があって良かった。何回も外さなければ数は大丈夫だろう。倒すのに手間を掛けて押し切られるのが少し怖いが。


 トウカは装填済みの物と使い終わった物を交換しながら装填を始めている。最初は手が震えてたみたいだった。こんな状況だ、しょうがない。それでも時間が経つごとに熟練兵、いやそれだけをやっていた職人みたいな手さばきになっている。

 その内に俺たちの班だけじゃなく、近くの班の分まで交換と装填を始めた。正直助かる。早く撃っても弾切れじゃ話にならないからな。トウカの様子を見ながら攻撃してたが、何も気にしなくても撃てるくらいになった。

 

 ……それでも六七人だけ早くても抑え切れない。じりじりと魔獣が押しているのが分かる。トウカを逃がすか、それとも少し怖いが氷結を使ってもらうか? 氷結の作用地点はどうする? 範囲は大丈夫か? 効かなかったら?

 焦りから考えがまとまらない。班によっては危険な場所まで近寄られている。あまりに迷って時間が掛かると隊員が巻き込まれる恐れから氷結さえ使えなくなる。トウカの指示者は俺だ。さっさと決めないと……!

 

「石柱を立てます! 驚かないで!」


 トウカが何か叫んだと思ったら、俺たちと魔獣の群れの間に先が尖った棘みたいな物が何十本か、それ以上が土から生えてきた。生えてきたとしか表現出来ない。まるで柱が百本くらい飛び出している光景が目の前に起こった。

 俺たちは驚きで手が止まってしまったが、魔獣の方では柱が邪魔で前に進め無くなっている。大型の『戦士大顎』ぐらいだと杭を削り折っているが、折れるたびにトウカは追加で杭を立てていた。俺たちは我に返り、慌てて柱より先に出てくる魔獣を仕留める。


 それでも進撃速度が鈍った魔獣を狩るのは容易だ。何とか柱から抜け出た魔獣から撃っていくだけで済んだから。

 

 ──どうやら俺たちはトウカに助けられたみたいだ。

 

 

 

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