1.
今朝、喫茶店で朝食を食べていたら逮捕されたことについて報告しよう。
町外れに小さな喫茶店が一軒、ぽつんと建っている。外見こそ古ぼけているが、その店がだす料理や飲み物は一級品の味で、僕はその店を大変気に入っていた。休日の朝になると僕はその店に一人で出かけ、焼きたてのハムサンドと熱い珈琲を味わうことを習慣としていたのだった。
今朝もいつものようにその店の玄関をくぐり、カウンター席の一番端に腰かけた。大抵の場合僕が店の一番乗りだったのだが、今日は珍しく先客がいた――初老の男がカウンターに座り、新聞を片手にバタートーストに食いついていた。その男は注文が届くのを待っている僕に向かって、馴れ馴れしく話しかけてきた。
「なあ、あんた。星の衣って連中のことを知ってるかい?」
「……名前くらいは。なんでだい?」
「ほら、先週ユドンの街ででっかい爆発事故があっただろう?」
ユドンというのは僕の住む町から西方にある町である。三方を森で囲まれたその田舎町で起こった奇妙な事件については、世間に疎い僕の耳にさえも届いていた。
簡単に言えば、森が突然爆発したのである。
未明ごろに起こった爆発は広大な森の半分を焼き払った。幸いにして命を落とした者はいなかったが、それでも多数のけが人が出た。国中の警察が出張らって調査を試みたが、爆発の原因は未だ明らかになっていない。隕石が降ってきたという説や前時代の不発弾が起爆した説など様々な憶測が飛んでいるが、結局のところはっきりとしたことは分かっていないという。
「……その爆発事故の犯人が、クロークスの一人なんじゃないかって噂だよ」
「馬鹿馬鹿しい話だ」
僕は男の話を真面目に聞いてしまったことを後悔した。――馬鹿馬鹿しい。星の衣だって?