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スキルを創って異世界最強!? 〜つまらない日常から一転、非日常へ〜  作者: 日下辰巳
第3章 獣人国王都アガレーヌ編
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第128話 完全に理解出来ぬ者に止める資格無し

すいません!昨日執筆中に眠りこけてしまいました!最近生活が不規則になってきました。やばいです。治さないと、また投稿が遅れる気がします。てなわけ(どういうわけ?)で、土曜か日曜に書こうと思います。(絶対書くとは言ってない)

湯船の中に腕を突っ込んでいた妹ーーー


その湯船の中は紅く染まってーーー


腕を引き上げた時の肌は冷たくーーー


大切なものを失った時の絶望感ーーー


何をしても2度と開くことのない瞳ーーー




この男の、辛く重々しい慟哭を聞いた時、あの時の光景、感触、感情さえもがフラッシュバックした。


どうすれば良いのだろう。俺は、あの男の思いを理解出来た。いや、理解出来てしまった。止めなきゃいけない。止めなきゃいけない・・・だけどーーー




ーーーside ココ


ミル様を攫った犯人である男は、どうやら自分の娘を蘇らせたいようじゃった。男の叫びを聞いた妾は、少し共感してしまうところがあった。妾の家族も、大半がバハムート・エレという化け物に殺されたのじゃから。妾は、家族の全てを失った訳では無いが、それでも辛く悲しい思いをした。そんな気持ちが分かるのは、妾と・・・恐らく、子供の頃に父親が殺されてしもうた、ニノくらいじゃろう。

この男を物理的に倒すのは簡単じゃ。が、その為には、邪魔をする機械兵に囚われた女子おなご達の魂ごと壊さねばなるまい。

じゃが、妾とてそんなことはしとうない。少しでも気持ちが分かるであろう妾が、説得を試みるのが1番かもしれぬな・・・


そして、妾は口を開こうとした時、リークは突然、ニノの頭に手を乗せた。どういうことかと思うたが、リークの次の台詞で、妾は固まった。


「・・・このは、つい最近、数年前に父親が殺されていた事を知らされた。母親は生きてるし、あまり父親のことを覚えていないかもしれないが、それでも家族を失ってる。きっと悲しんでると思う。」


「ーーーっ」


息を呑んだのは誰じゃったのか。それは分からぬが、リークの言わんとすることは分かった。恐らくは、妾と同じように、説得するつもりなのじゃろう。ならば、次に妾の境遇も話すのであろう。


その予想は的中し、リークは妾の頭に手を置き、


「・・・このは、少し前、自分の家族が治める国を、家族、国民と共に、SSSランクの化け物に壊された。国民や家族の殆どは死に、生き残った兄弟達とも、奴隷商によって生き別れた。別の所で暮らしていた祖母や、恐らくまだ生きていると思われる兄弟達以外、死んでしまった。完全に自我のある時での出来事で、死ぬところも目の当たりにした。その時の悲しみ、絶望感は凄まじかったはずだ。それこそ、復讐を考えるくらいには、な。」


リークの言う通りじゃ。旅の最中や、お祖母様に当時のことを話したりした時に全部話した。その時に泣いたところをリークに頭を撫でられて慰められたのは、少し恥ずかしかったの。

・・・って、そんなことは良いんじゃ。とにかく今は、それを聞いた男の反応じゃ。多少なりとも共感を得られたと思うんじゃが・・・と思った妾の期待は、いとも容易く破られた。


「だからなんだと言うのだ!!確かに家族を失った辛さは分かるかもしれん。だが!一人ぼっちになった私とは違う!!失ったのはたった1人の家族なのだ!その家族が死んだ時、その時の寂しさ、辛さを理解などし切れるはずがない!その2人には!私のやることを理解し、納得はしないだろう。所詮その程度なのだ!!」


妾達も十分に辛い。じゃから、その程度と言われるのは不本意じゃが・・・男の気持ちを理解し切れぬのもまた事実じゃ。やはり説得は・・・


「そうだな。2人には、完全になど理解は出来ないんだろうな。」


目を瞑ったリークは、そんなことを呟いた。しかし、皆リークのその言葉の意味を理解することは出来なかった。一体どういう意味なのじゃろうか?そんなことを思っておると、リークの口から、衝撃の事実が知らされてしまった。そして、妾はーーー否、妾達は、完全に固まってしもうた。


「貴様・・・それはどういう意味だ?」


「俺は昔、両親を亡くした。それは特に気にしていないことだ。だがーーー俺はついこの間、たった1人の家族であった妹を・・・死なせてしまった。俺のせいで・・・俺が、俺が・・・っ!」


『ーーーーーーーーー』


皆、凍りついた。リークが別世界から来たという事情を知っておる妾達にとっては、特に。何時の事であるか、分かっておるのは妾とニノだけじゃろう。何せ、リークが別世界に帰ったのは・・・


「リーク、それはまさか・・・あの時のこと、か?」


「あぁ、そうだよ。丁度、ベルが地獄に戻った辺りだったか。」


その言葉で、妾は確信した。それと同時に、ベルも何時のことかが分かったのだろう、目を見開いたのを視界の端に捉えた。そして妾は、あの時のリークの絶望を目の当たりにしたような表情をしていた理由を理解した。リークはあの時のことを頑なに語ろうとはせんじゃったが、そんな理由があったとは・・・


「・・・ぜだ。・・・ならば何故だ!?貴様も私と似たような目にあったというのなら、何故私の邪魔をする!?貴様がその妹を本当に大切に思っていたのなら、何故だ!私のように、蘇らせようとは思わなかったのか!?」


男は叫ぶ。自らと同じ境遇にあるはずのリークが、何故自分のやり方を認めず、邪魔をするのかと問う。リークも妹を蘇らせようとしなかったのかと問う。

じゃが、リークがその様なことを思うはずがない。妾とて、死んでしまったものは戻らぬと分かっておる。じゃからこそ、妾は生き返って欲しいとは思わないようにしておった。それは、リークも分かっておるはずじゃ・・・そう思っておったが、現実は違っておった。


「・・・そりゃ思ったさ。俺は自分の選択を後悔して、過去の自分を殴りたくなって、あの時の妹を救ってやりたくて、どうにかして妹に生きていて欲しかった。蘇らせようともした。けど出来なかったんだ!俺には!俺の力じゃ・・・死んだ人間を生き返らせることなんて、出来なかったんだよッ!」


リークも叫ぶ。過去を後悔してもしきれず、自身の無力を嘆く、悲痛な叫びじゃ。それを聞いた妾は、男と同じことを思ったリークを軽蔑するよりも、何か、別のことを感じた。それが何じゃったのか、妾は分からなかったが、とにかくリークの辛さが、妾達に突き刺さったような気がした。


「・・・俺は、あんたの気持ちは理解出来る。理解出来てしまう。俺も蘇らせようとした手前、あんたのしようとしていることを否定する権利は無いかもしれない。」


そんな事は無いと言おうとした妾の喉は張り付いて、結局何も言えなかった。このままでは、奴の説得が出来ず、ミル様までもが犠牲に・・・


そう妾が諦めかけた時、当のリーク本人が、それを切り裂いた。


「だが!俺はあんたを止めなきゃいけない!例えその権利が無いとしても・・・いや!同じ境遇であるからこそ!俺はあんたを止める!!」


止めると。リークはそう言った。まさか止めるという選択をするとは思わず、妾達は一瞬呆けてしもうた。


「・・・それがお前の選択か・・・だが、どうやって私を止める!?そこの少女達の魂を破壊するか!?」


その声に我に返った妾は、どうすればよいのか、考えを巡らす。じゃが、妾では何の策も思いつかぬ。妾が途方に暮れかけた時、またしてもリークがとんでもないことを言い出した。


「・・・なぁ。転生周期って、本当に20年なのか?」




ーーーside 陸魔(リーク)


この男の気持ち、感情を理解してしまった俺の出した答え。それは、分かるからこそ止める、だった。理解も出来ないやつに止められるより、理解してくれる者にこそ、止めることが出来ると思った。ただ一方的に悪だけだと決めつけられて止められるより、正義を認められた上で止められる方が良いだろう。・・・まぁ、俺のただの自己満足でしか無いのだが。


とにかく、俺はこの男を止めると決めた。だが、その為には機械兵が邪魔だ。どうにかしなきゃいけないが、壊すのは駄目。スルーしようとしても着いてくる。捕まえれば自壊の命令が出され、それを阻止するために男を殺してもまた自壊する仕組みだ。

・・・クソゲーにも程がある。何やったってクリアが見えないんですけど?こんなもん、ゲームだったらコントローラーとかゲーム機ぶん投げるレベルだわ。詰みだっての。えぇーマジでどうしよ・・・


俺:アイ、何か打開策無い?


A:打開策になるかは分かりませんが・・・気になったことが1つあります。・・・ですが、マスターは平気なんですか?


俺:ん?何がだ?


A:いえ、その・・・わざわざ妹さんの件を話して、あの時の悲しみがまた湧いてきたのでは・・・


俺:あぁ・・・大丈夫とは言えないけど、まずはこいつを止めることが先決だ。気になったこと、教えてくれ。


A:は、はい。えぇとですね、その・・・この世界の転生周期は・・・30年のはずです。


俺:・・・ん?あれ、でも奴は確か20年って・・・


そこで俺はハッとした。


俺:まさか・・・?いやいやでもそんな・・・そんなことって・・・?


A:マスター、何か分かりましたか?


俺:・・・いや、とにかく聞いてみるか。


そして俺は問いかけた。


「・・・なぁ。転生周期って、本当に20年なのか?」


そんな、この事件を根本から覆しかねない問いを。

ただ単に悪役をやっつけて終わりと思うことなかれ。普通に凄いことになる(かもしれない)です。てなわけで、次回をお楽しみに!

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