Y9 サイコメトラー
すいません、本編書くの厳しいかなぁ、と思ったので、勇者編です。皆さんも、この前の勇者編の続き、気になります、よね?それでは、どうぞ!
ーーーside 東宮 明
国王は既に陸魔を殺しているのではないかーーー
須臾と刹那がそう言った瞬間、場が凍った。
確かに、そう思うのも無理はないだろう。陸魔は全く見つからず、目撃情報さえない。恐らくは『変装』のようなスキルを持っているのだろうとは思うが、そうでなかった場合。国王が既に殺ってしまった可能性は高い。
凍った場で、最初に口を開いたのは、アルガネス王国第一王女、リンシア・アルガネスだった。
「お、お待ちください!お父様はそのようなこと・・・」
と、2人の意見を否定しようとするが、それを遮るように、
「申し訳無いのですが。」
「私達は国王様に。」
「「お聞きしたいのです。」」
「っ・・・」
と、須臾と刹那が言った。尋ねている相手が国王なので、2人がそういうのも分かる。リンシア王女も、2人の雰囲気に黙らされた。
ーーーそして、肝心の国王本人の反応は・・・
「・・・そう思われても仕方が無いとは思うておる。しかしながら、余はそのようなことはしておらぬ。手掛かり一つ見つけられておらぬ身で、そう申しても疑念は晴れぬであろうが、どうか信じてもらいたい。」
だった。やったにしろやってないにしろ、そう言わねばどうしようもないだろうから、その言葉は予想していたものとほぼ同じだった。
「そうは申されましても。」
「信じたいのは山々ですが。」
「「やはりどうにも納得がいきません。」」
信じようとは思うが、どこか納得がいかないのも事実。まずいな・・・このままじゃ、味方内(主に勇者側と国王側)でギクシャクした空気になっちまいそうだ・・・どうすりゃいいか・・・
「ふむ・・・では、余がどうすれば納得がいくであろうか?」
俺が悩んでいると、国王がそう言った。そうだよ、2人の要求を先に聞かなきゃ、対応のしようもなかったぜ。全く、陸魔みてぇなミスしちまうところだった・・・
んで、国王にそんなことを言われた2人はーーー
「「・・・」」
無言で顔を見合わせていた。それはつまりーーー
「何も考えてねぇのかよッ!!」
思わず大声で突っ込んだ。その声に全員が注目し、俺は全員の視線を浴びることになった。やめろ!俺は「1 対 1」か、「1 対 知り合い数人」程度でなら問題ないが、「1 対 大勢」だとアガるんだ!地味にあがり症なんだよ!
と心の中で暴走するも、外面は必死に取り繕っていた。
「だったら、その、あーあれだ。一旦この場はあれして、あれをそれして・・・」
クソっ!自分でも緊張しまくって支離滅裂じゃねぇか!やばい、全員の目線が地味に生暖かくなってる気がする!
「と、とにかくだ!今は国王・・・様への疑念を晴らす方法が無いんだったら、もうしばらく様子を見て、国王・・・様にまだ殺ってないって証拠を用意して貰えば良いじゃねぇか!」
どうにかこうにか案を出す。俺のキョドり様が凄かったのか、しばらく全員が呆然とした後、どこかから吹き出すような声が聞こえてきた。そしてーーー
「ぷっ・・・くく・・・」
「くふっ、ふふふ・・・」
「あはははははは!!!」
笑いは全員に伝染し、さっきまでの張りつめた空気を切り裂いた。
「お、お前ら!んな笑うこたぁねぇだろうが!?」
俺は羞恥に赤面しながら、照れ隠しに怒鳴った。
・・・死ぬほど恥ずかしい思いをしたが、まぁギクシャクしたままになるよりマシだったかと、俺は諦めることにした。
「くふ・・・東宮君の言う通り・・・ふふっ。」
「ふっ・・・しばらくは国王様の・・・くすっ。」
「「ご様子を見させて頂きます・・・ふっふふっ!」」
2人は、必死に笑いを堪えながら、国王にそう言う。・・・最後は堪えきれてなかったが。
「う、うむ・・・くっふ・・・余の方も・・・んんっ!何か証拠になるものを・・・っ用意しておこう・・・くっくく・・・」
国王まで未だに笑っていやがった。
「いつまで笑ってんだ!いい加減にしてくれ!」
俺がそう叫んだのも無理はない・・・はずだ。
まぁ、そうして今回で結論を出すのはやめ、また別の日に持ち越そうと、皆が納得しかけた・・・その時、
「あ、あの・・・」
「ん?」
少しだけ手を挙げ、おずおずと注意を引いたのは、繃靜 覚だった。
「あれ?覚ちゃんどうしたの?」
繃靜に、注意を引いた真意を問うたのは、毎度お馴染みの綾小路だ。
「え、えっと・・・その・・・」
基本、教室でもあまり喋らない繃靜は、よくあるコミュ障だ。コミュ障重度を、軽度、中度、重度、超重度とするならば、繃靜は中度より、少し重いくらいだろうか。いやまぁ、コミュ障のことはあまり知らねぇけど。
・・・どうでもいい話だが、繃靜がこれでも虐められてたりしないのは、ひとえにクラスメイトの人の良さのお陰だろう。何だかんだ、良い奴多いしな。
んで、そんな繃靜がわざわざ意見があると言うことは、今かなり重要なことだと思う。そんな訳で、理由が知りたいところだな。
「こ、国王様が神凪君を殺してないという証拠ですが・・・わ、私では駄目、でしょうか・・・」
・・・・・・・・・
『・・・は?』
全員が呆気に取られた。それはもう、国王、リンシア王女、勇者達、果ては待機していた兵士でさえ。一体、どういう事なんだ・・・?
「・・・ごめんなさい、ちょっと何を言っているのか分からないので、もう少し詳しく説明してもらってもいいですか?」
そう言ったのは、これまた毎度お馴染みの桐翳だ。そしてその台詞は、まさにこの場にいる全員の心の声を代弁したと言えるだろう。
「あ・・・っと、その・・・わ、私にも、最近固有スキルが手に入って・・・でその、えと、名前は『読心術』で、その・・・こ、効果は、その名の通りで・・・相手の心が読める、というもので・・・えと、ですから・・・私のスキルで、失礼ながら、国王様の心を・・・よ、読んでみたら、し、真相が分かるかも・・・っという話でして、あの・・・」
とんでもねぇ新事実がここに発覚しやがった。繃靜、まさかの固有スキルが手に入ったのかよ。しかも『読心術』って・・・まぁ、繃靜は元から察しが良かった上に、時々人の心を読んだかのような行動をすることがあったし、不思議じゃないか。
おっと、脱線脱線。
ええっと、つまり・・・
「要約すりゃ、繃靜は『読心術』って固有スキルを手に入れたから、それを使って国王様の心を読み、それで真相を解明するって訳だな。」
俺が要約すると、繃靜がこくこくと頷く。
「そ、そうです・・・ですから、その・・・どうでしょう、か?」
「余は、それで疑いが晴れるのであれば構わぬが・・・」
「それでは。」
「繃靜さん。」
「「お願いします。」」
どうやら、双方納得のようだ。
「あ、とそれから、これを使って30秒間は・・・その、嘘がつけない、みたい、です。」
「それなら、信憑性も高いね。繃靜さん、僕からもお願いするよ。」
「は、はい・・・言われずとも、です。」
相変わらずの天然キザを発揮した聖に、少し顔を赤くしつつ、繃靜は国王を見る。
「そ、それでは・・・発動、です・・・」
繃靜がそう言うと、国王を見る繃靜の目が、少しだけ色が変化した。どうやら、使っている時は分かりやすいようだ。
「・・・はい、分かり、ました。国王様はーーー」
繃靜は、そこで一旦言葉を切り、皆に一瞬緊張が走った。そしてーーー
「神凪君を、殺してはいません・・・どころか、本当に、何の手掛かりも、えと・・・掴んで、いない・・・です。」
その言葉で、全員がホッとした。
「そうですか。それなら良かったです。繃靜さん、ありがとうございます。」
「い、いぇ・・・その、お役に立てて・・・えと、良かった、です。」
その言葉を、桐翳と繃靜が交わした後、しばらく手を付けてなかった朝飯を再び食い、俺達はまた、いつものように訓練へと向かうのだった。
読心術・・・陸魔が帰ってきた時、覚さんは一体どんな心を読むことになるのか・・・
あ、それと、ブクマ件数1000突破です!今度何か記念回でも書こうかな、、、
欲しいって方がいましたら、どうぞばんばん感想欄に言ってください。それでは、また次回。