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依代と神殺しの剣  作者: ありんこ
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逡巡

 サラダはマヨネーズ派ですか?ドレッシング派ですか?いいえ、どちらでもありません。私はサラダ食べない派です。

 このやり取りってどこか変なところありますかねえ。

 今度から用心のために、家の周りに結界を張っておきましょうか。その……アレとは関係なく。

 アレって何のことかわからないって?もうここまで来たら察しが付くでしょうに、あなた鈍いのね。ああ、謝らなくてもいいわよ。明言しなかった私も悪かったわ。

――神殺し。

 そのうえ成り代われって言うの。あはは、おばちゃんも大それたこと言うわよねえ。おじいちゃんもきっと殺させたいのね、だって私に……ま、これは後にしましょう。

 まったく、誰も彼も、名状しがたき神の見えざる手のようなものが活用できて、肉の器を脱ぎ捨てて、無意識に神の力を使えるだけの女子高生に何を期待しているのかしら。

 神殺し?無理に決まってるじゃない。たとえ殺せたとしても、そのあと成り代わって神様やってく自信がないわ。他をあたって頂戴な。

 しかし、と逆接を使った。しかし、やらないと、おじいちゃんを助けられないわ。おじいちゃんの「助けて」にはここまで含まれていた。

 こういう存在になってしまった私も、場合によっては私にかかわりのある人たちも、無事じゃすまないでしょうね。殺すしかないのよ。

 しかし、とまた逆接を使う。しかし……本当にこれしかないのか?

 おじいちゃんを助けるには奥さんを殺すしかないのか?例えば、そっとおじいちゃんを助け出して、脱出して、どこかへ逃げてってことはできないの?

 逃げ場なんかない。知ってる。なりかけの私でもこの街の中が自分の足の指を数えるみたいに把握できるわ。完全な神ならきっと地球上どこに隠れたって無駄でしょう。太陽系外に逃げるしかないわね。行くまでにみんな寿命で死ぬわね。

 でも大体知り合い全員になんて、どうやって説明するっていうの?だからそれは無理。わかってるわ。

 解放したおじいちゃんに、一対一で奥さんと話をつけてもらうっていうのはどう?それができたらこうはなってないはずね。

 奥さんを封じてみたら?そっちのほうが残酷だわ。いっそ殺してしまったほうがましよ。

 隙をついて、おじいちゃんを解放して、地球を離れてもらって、あとは大怪獣バトルでも何でもやっといてもらうってわけにはいかないかしら。

 やれたらそうしたいけど、もし首尾よく解放できて、地球からも離れてもらったとしても、奥さんも戦神なのよね?200万年封じられてたおじいちゃんに倒せる相手とは思えないどころか、ひょっとするとまた封じられそうなくらいだわ。

 それ以前にあの方々が顔を出すだけで街に黙示録が訪れるからどのみち無理なんだけどね。

 猛ダッシュしてもらえば……町ががれきと死んだ人の山になるだけで無事に済む、かも?どう見ても無事じゃないわね。

 やるしかないのか?いや、やるしかない。わかってるけどわかりたくない。まだ迷っていたいわ。

 横になったけれど眠れない。風呂場の包丁を拾ってみたら刃こぼれを見つけた。現実逃避に飢えていた私はそれを短絡に研ぐことにした。

 砥石は前の住人が遺していったのがひとつあるの。両面で目の粗さが違う上等なやつよ。

 台所の電気もつけずに、流しで包丁を研ぐ。もう遅いの、電気なんかつけたら近所迷惑でしょ。両面が均等になるように、鋭くなるように研いでいく。暗い中で、金属が削れる音が小さく、断続的に耳に響く。

 早く朝が来ればいい。そう思ったわ。朝より先に、別のものが来たけどね。

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