表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
依代と神殺しの剣  作者: ありんこ
55/100
PR
32/98

あの窓を見よ!

 今回はいろいろとすごい回になっております。内容が折り返し地点でもありますし、ほのぼのパートがほぼ終わる回でもありますし、それに。

 鏡に向かって、パジャマを脱ぐ。下着にも手をかけて、肌をさらす。それから、まじまじと鏡の中の自分の裸体を見つめた。何か変わったところは……ていうかどこをチェックすればいいんだ。

 チェックポイントは素人だからわからないけれど、こうして見る限り性的暴行の痕跡はなし……と。性的どころかありとあらゆる暴力の痕跡がなかった。疑ってごめんね、壮二。

 腹を蹴られたはずだけど、痛みもない。痣もない。吹っ飛んだのが嘘みたいだ。何かが砕け散る音もなかったことになってない?

 それで困るかって……困りはしないけど、何だか変な気分よね。寝て起きたら完全回復って、何クエストの主人公かって。我が家は宿屋かって。

 寝ていた時間は……エレベーターで長かったから正しく測れない。起きた時間が6時30分で、それから朝食をとって、家を出たのが8時過ぎだ。

 で、今、午後三時?お腹の減り方で言うと、もうちょっと早い時間だと思われるな。ただ、果物でいっぱいになったから腹時計も怪しい。どのくらい寝ていたのか、何とも言えない。

 今度はストップウォッチでも持って降りてみるかな、ジオフロント。我ながらいいことを思い付いた。でもなあ。ストップウォッチ持ってないのよ、私。あとで百均にでも行くかなあ。どうせ今日はサボりなわけだし。

 りんごん、と呼び鈴が鳴った。二度目が鳴っても誰かが出る気配がないということは我が家のものらしい。この長屋の呼び鈴なんか今日まで鳴ったのを聞いたことがないもんで、すぐにはわからなかった。

「はーい、ただいま」

 パジャマのままだが、玄関を開けて応対した。

 閉めた。

「どうしてしめるの。よりちゃん。あけて。あけて。あけてってば。よりちゃん。はなしがあるんだよ」

 どんどんどんと長屋の薄い扉が叩かれる。鍵を閉めた。開けるか。開けるものか。扉の向こうには弓削の魚兄さんこと弓削敬一さんだ。私が命の危機を感じる神話生物。多分原産地はインスマウス。開けるわけがない。

「まどからだってはいれるんだよ。でもきょうはげんかんからいれてほしいんだ。へいわてきだろ?」

 言われてぞわっとした。そうだ、思い出した!魚と言えば窓に!だが……この長屋に窓はない。だって安普請だもん。窓なんかないやい。両端の部屋にはあるかもしれないけど、この部屋にはない。

 他の出入り口は……裏口は鍵を閉めてあるし、キッチンには換気扇があるだけだ。フラグは回避した。はっはっは。

 触手を駆使し、三秒で服に着替える。パジャマはタンスの中に戻してっと……さあ、敬一さんはまだあきらめてないのかな。

 見てみた玄関の格子の間から、そこもすりガラスなのだが、人影は変わらずそこにあった。黄土色のスーツ。紺色のネクタイ。顔は見えないが、輪郭から魚らしさがにじみ出ている。ひいいいい怖いよう!

「……いっそこのながやごと、はかいこうせんでふきとばしたっていいんだよ」

 玄関を開けた。それは勘弁してほしい。いらっしゃい。敬一さんは扉を閉めると靴を脱いで上がってきた。お魚の柄の入った靴下、だと……?ファンシーすぎる。

 和室の方にある変な形のちゃぶ台を囲む。ビーンズ型?だっけ。豆はこんな曲がった楕円じゃないと思うけど。もっと福々しく膨らんだ半月型でしょ。

「よりちゃん、ごめん」

 いきなり敬一さんが頭を下げたもんだからびっくりして腰を抜かしそうになった。

「ごかいしていた。きみもひがいしゃだったんだね」

「ひ、被害者って何ですか」

 驚いた拍子に上ずった声が出た。

「もちろんあれの。ぼくはきみが、あれのつまだとおもっていた。でもきみはほんとうにきぬがわよりだったんだね。きづけなくって、ごめん」

 あれ……ていうのは、壮二のことでいいのよね?被害って言うほど何かされてるわけでもないからちょっと腑に落ちない。むしろ紳士的というか親戚のおじいちゃんみたいなんだけど私は被害者でいいのかな。

「ひがいしゃとはおもわない?めずらしいこだね。ふつう、かみさまとかかわったにんげんは、しゅくふくをうけたにんげんは、じぶんのことをひがいしゃだとおもうものだけど」

「そうなんですか?そ……あのおじいちゃん、別に何もしてきませんけど」

 くくふ、と喉の奥で敬一さんが笑う。だって壮二呼びは状況的にまずいものね。この呼び方は苦肉の策だわ、確かに。

 でもおじいちゃんという形容は外れているとは思えないの。まず口調がおじいちゃんだもん。口をとがらせていたらさらに笑い転げる魚兄さん。何よもう。

「いや、ごめんごめん。あれを、おじいちゃんなんてよぶのは、はじめてきいたものだから。ほんとうは、とてもおそろしいかみさまなんだよ。ぼくがつかえているあのおかたとはくらべものにならないくらい、こわい。なんていうか、せんとうきょうみたいなっていったらちょっとちがうけど、そんなところがあるから」

 やだー想像できないー。お姫様抱っこどころか椅子になろうとしたひとなのに。

 あぁ、それはそれで別の意味で怖いか。

 改行と空白を除いたらちょうど2016字だったんです。信じられますか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ