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ブレイン・フィールド  作者: 小鳥遊彰吾
エピソード4
16/20

エピソード4-4

 今考えてもあの戦闘は自分にとって転機だったと確信している。

 特にバトルマスターの最後の攻防。必殺技がくることはわかっていたはずで、彼の実力からしたら発動する前に避けよることもできた。

 しかしその選択をしなかった。なぜか?

 答えは簡単。しのぎ切れれば絶好のチャンスだったからだ。たとえ自分がダメージを追ったとしても死ななければ、痛みに耐えて懐にさえ入れれば硬直した敵にとどめを刺すのは簡単だ。


「口で言うほど簡単じゃないけど……」


 ゲームということで安全面を考え、痛みは弱いショックだけになっているが人は弱い。腕を切られたという思いこみは相応なショックとなり冷静さを失う。だが痛みを乗り越えてしまえば勝利への道が開けていた。

 学んだのはそれだけではない。めまぐるしく動くからといってもAP残量のチェックを怠らないこと。相手のペースを乱すこと。敵を分析し行動パターンをよむこと……。


 この事件でニーナは称号を得る資格を得た。

 「真戦組」はゲーム社サイドからも少々手を焼いていた存在だったので感謝の意味もあったのだろう。多少納得がいかなかったがもらうことにした。最強の男に少しでも近づくために。

 そのとき手に入れた「天使の衣」は最初こそ扱いづらかったが頭で飛ぶことをイメージできるようになってからは快適だった。うまく扱おうと時間さえあればイメージの訓練をしていたので戦闘でも常にイメージで動く癖がつき急速に強くなっていった。

 「天使の衣」のSPのボーナスによりバトルマスターを凌駕したスピードも使いこなせるようになり、デュエルで初めて勝利もした。確実に最強に手が届きかけた。そう確信していた。


「うかうかしてられませんね」


 いつものように平然とした口調だったが確実に危機感を持たせた。その証拠に彼は一つの打開策を取った。

 そして結果、また引き離された。

 

 サン・オブ・バトルマスターは新しい武器を入手した。

 銘を「三日月」。名の示す通りの形状の大型のブーメランの外側には鋭利な刃物が打ち付けてあり、内側には3カ所ほど手で握るための穴が開いてある。

 その武器をメイン装備にするとバトルマスターが言ったとき、ニーナはチャンスだと思った――最強になる。

 どう考えてもブーメランは扱いにくい上、強力な武器ではない。ただ投げただけでは手元に帰ってこない。回転や角度を考えなければならない。

 もちろんこの手の武器は扱いやすいように特殊技能がある。

 それが「操作」――バトルマスターは当然のごとく入手した。

 もっともこれにも欠点がある。確かに投げたモノを自分の意志で動かすことができるが、その場合本人は武器を持っていない状態で敵と対峙しつつ、ブーメランによる攻撃がくることをわかりきっている敵に当てなければならない。つまり同時に自分とブーメランの2つを同時に動かさなければならない。

 どう贔屓目に見ても不利の一言である状況を彼はものともしなかった。

 それどころか最強の地位を不動にした。

 彼は驚くべきことにブーメランを自在に操り、そのうえで自分も今までの通りに動いた。元々手癖足癖が悪かったのだ、素手でも十分人並み以上だった。

 彼のよくやるパターンとして「三日月」を最初に投げ素手で攻撃し、忘れたころに「三日月」でとどめを刺す。相手次第では素手だけで勝利したということも少なくはなかった。

 もちろん「三日月」を普通に剣として戦っても強かった。タチの悪いことにいつの間にか「三日月」を投げており気がついた時にはすでに遅い状況という状況もあった。


「最強の男がぁ~、最強の武器を~手に入れましたねぇ~」


 と同じ四天王で「重戦車」の称号を持つモエが言った台詞。

 それは大方の見方であったがニーナには腹立たしいこと無かった。

 自分でも事実だと思っているからなおさらだ。


「三日月は使い方次第では切れ味無限だしなぁ」


 そのことを証明された事件ことを思い出す。




「ハ、ハハハハハ! いかにサン・オブ・バトルマスターとその四天王といえどこの状況ではさすがにどうしようもあるまい!」


 黒地の司祭風の服装の男は高笑する。

 アンガスンと名乗った顔も身体も貧粗な男だがその気持ちもわからなくはない。自分は十数メートルはあろうかという巨人を模したゴーレムの肩に乗り、下を見下ろしている。

 巨人の足下には彼が司祭を務める邪教グリンベルの武装した信者百人足らずが陣取っている。

 対峙するは最強と名高いパーティーとはいえどたったの5人。NPCといえどもこの状況は愉快かもしれない。


「グリンベルの巨神は無敵だからな」


 笑いながら叫ぶがうっとうしさにニーナは眉をひそめる。

 彼女たちは邪教グランベルがいにしえの兵器を復活させて暴れまくっているから退治してくれと言う依頼を受けた。

 邪教グランベルはゲーム側が事前に用意した悪の組織。各地にモンスターを放ったりしているらしい。らしいというのは組織の実態を知るものが少ないから。

 最強のパーティーとして行動しているというのに今まで司祭はおろか信者すら見たことがなかったのだから。


「古代巨人型兵器『グランベルの巨神』か……。街一つを簡単に消滅させる攻撃力を持つとわな。正直腹が立ったぜ」


 クロードが苦々しく言う。足取りを追う際に見た破壊された町。大きなクレーターに街らしき残骸。多くのプレイヤー、ノンプレイヤー問わず犠牲になった。


「……ここまでバランスの悪いのだすなよ、何考えてるんだ? ゲームマスターは」


 あら、めずらしいとニーナはバトルマスターを見る。彼の素の言葉を聞くのはそうそうない。それだけ憤っているようだ。


「でもぉ、バランスが悪いっていうのはぁ~サンちゃんのほうだと思いますけどぉ~」

「……確かに」


 人さし指を頬に当てて言うモエの台詞に若干考えてランディが答える。

 今ここにいるのは5人。バトルマスターは来るもの拒まず去る者追わずの精神であるので昔からパーティー希望するプレイヤーが多かったのだがいまここにいるニーナ、モエ、ランディ、クロードだけ。常に激しい戦闘を要求するバトルマスターに低レベルのプレイヤーはついてこれない。四天王と呼ばれる彼らとて最強の男との差を感じているのだから。


「ひどい言われようですね。……そんなことよりニーナ」

「ん、何?」

「飛んでいってあそこの司祭を倒してきてもらえるかい?」

「……いいの?」


 獲物を譲ってもらうことに対しての遠慮として言ったのではない。その後の結果のことを考えていったのだ。しかしバトルマスターはすべて理解しているという表情で、


「ええ、頼みます」

「はいはい、翼よ!」


 仕方ないかとニーナは頷きその場で羽をはためかし空を飛ぶイメージをする。

 一気に飛んでいくと巨神の攻撃を受ける可能性もあるので確実の攻撃範囲外のところでアンガスンと同じ高さまで上昇する。

 それを見て彼は慌てて訴えかける。


「ちょ、ちょっと待て! 私を殺してみろ。巨神は制御を失い無差別に暴れまくるぞ! それでも……」

「かまわない!」


 最後まで言わせることなくバトルマスターが遮る。


「同じだろう、生かしておいても。結局暴れる。なら目障りで耳障りなヤツから始末することにしよう」

「貴様正気か!」

 

 巨神の太い首に手をやり支え、下を見る。自分の狂気を棚に上げよくも平然と言う。


「いたってね」


 大きく肩をすくめる。しかし隣のモエはようやくいつもと違うことに気がついたようだ。


「ホントぉ~ですかぁ?」


 バトルマスターはようやく自分の地が出ていることに気がつく。フウとひとつ深呼吸をしモエに微笑む。


「ええ、大丈夫です。ここまでバランスの悪い敵を出されたあげくその尻ぬぐいをさせられることに少々イラついただけですから。……安心してください。僕は勝算のないことは言いません」

「ならぁいいです~」


 そのいつもと代わらぬ丁寧かつ強気な発言にモエは安心したように頷く。


(尻ぬぐいか、言い得て妙ってやつね)


 バトルマスターは戦闘を選り好みする。好きなのは自分への挑戦者と自分以外では倒すのが難しいモンスターなどを倒すという危険な戦い。まるで他人がより楽しめるように。この巨神にはすでに相当な数のプレイヤーが倒されている。そういう意味では彼が好むべき戦闘ではあるのだがニーナにはなぜか違和感を感じた。


「クソ! ならば返り討ちにしてやる! おい、お前たちも攻撃をしろ! グランベルの巨神よ、あのハエをたたきつぶせ! 」


 アンガスンはバトルマスターが本気だとわかるとすぐに決心した。下にいる信者と巨神に怒声で指示。

 すると信者たちは何の迷いも躊躇もなく、数十メートル離れたバトルマスターに向かう。

 巨神はアンガスンの指示で目が黄色く光ったかと思うと長い腕をニーナに伸ばす。ハエ呼ばわりされたことにムッとしながらニーナは腕をかわす。スピードが遅いので一気に腕をかいくぐり詠唱しながらアンガスンに向かう。


「モエ、巨神の足止めを。ランディとクロードは僕と一緒に。信者を倒す。ノルマは1人最低30」


 三日月を振りかぶりながらの指示をとばす。その指示に三者三様の反応。


「了解」


 ランディが槍を構え、まず飛び出す。


「ったく、簡単にいいやがる」


 クロードは口でグチりながらもどこか嬉しそうだ。


「構いませんけどぉ、あんなの足止めするのにはぁ~、弾に限りがありますよぉ」


 モエの持つ銃の中でも一番威力のある原始分解砲を構え、照準を合わせようとする。


「45秒。それだけ時間を稼いで。後は僕が何とかしますから」


 バトルマスターは三日月を敵の密集したところに投げ、数人葬る。


「はーい、まかされましたぁ」


 返事と同時にトリガーを引く。数瞬後、巨神は小さく揺れた。まともに胸にぶつかったというのにヒビ一つ入っていない。

 単発式で射出速度は速いモノではない。だが命中したら並の防御力なら即死クラスのダメージを与えれるというのに。

 その堅さに舌打ちしつつもニーナはチャンスと思い速度を上げアンガスンに近づく。揺れは小さくともアンガスンはバランスを崩し両手をつき肩にしがみついている。


「てい!」


 ニーナは全速で体当たりしアンガスンに体当たりかます。


「ウワァァァァ!」

「フォースロンド」


 アッサリと落ちていくアンガスンに念のため魔法を使う。

 この司祭は攻撃力も防御力も無い、単に巨神を復活させる存在だと予想はしている。この高さから落とすだけでも十分だと思ったが逃げられては他の仲間に何を言われるかわからない。

 光の弾が当たるのがはやいか、地に落ちるのか先かはニーナの高さからは判断できなかったが確実に消滅した。

 ホッとするのも束の間、急に巨神が勢いよく暴れ出す。――まるで今まではアンガスンが邪魔で本来の力がだせなかったといわなかったばかりに。

 身体を大きく揺らし両手でニーナをはたこうとする。一撃食らえば終わりそうなほどの威力を持った攻撃を避けながら先ほどのアンガスンの言葉を思い出す。


(……ハエってこんな視点なんだ)


 先ほどは比喩されことに腹立たしく思ったが、いまとなっては言い得ても妙な気もする、癪な話だが。

 離れて地に降りようかと思ったが、下には信者がひしめいているし、モエも完全には巨神を足止めできるとは思えないので囮になることにした。

 巨神の顔の前でうろちょろしておけば仲間に攻撃は行かないだろうし、下手に動かれて大きな足に踏みつぶされることもない。ニーナは余裕を持ってかわしながら下の仲間を見る。


「大変そう」


 モエは信者をかわしながら巨神を狙おうとしているがなかなかうまくいかない。

 クロードが「超加速」を使いちょくちょくファローしている。縦横無尽に移動し敵を斬っている。

 ランディとバトルマスターは敵の密集したところで2人で背中合わせになり、近寄ってくる敵を倒している。バトルマスターは武器を投げたままなので手数がいる分大変そうに見える。


(しかたないわね)


 端末を見てAP残量のチェック。空を飛んでいるのでマメにチェックしなければならない。特に魔法を使おうとするときには。APが〇になりこの高さから落ちて即死というのは笑い話にもならない。まだ余裕があるの派手なのを使おうと決め、詠唱する。


 二発目のモエの攻撃が巨神の肩に命中。バランスを崩したのか大きく揺らめく。好機と悟りニーナは上昇し、巨神の頭上に移動する。


「ギガ・プラズマ」


 ニーナが杖を振り下ろすと本物の落雷とも思えるような目を眩ませんばかりの光と鼓膜を強く振動させる音を持った稲妻が一直線の巨神の脳天に突き刺さる。ゴーレムが苦手とする雷系の属性でニーナが知る限りこれがゲーム中で最高威力。


「ガァァァァァァァァァッ!」

 

 悪魔のような怒号が大気を振るわす。


「……冗談、キツッ」


 稲妻の高熱の影響で所々からプスプスと煙が上がっているし若干焦げたような気がする。が、ダメージらしきモノがあるように見えない。

 これを上回る威力の魔法のストックはあるにはある。だが効果があるかどうかは非常に不安だった。傷なり、ヒビなどがあり、その脆くなったところを直接狙えば可能性もあろうが今のところそんな場所はない。


――バァァァァン!


「危なっ!」


 巨神は不意に両手を勢いよく上げ、頭上で大きな音をたて合わせた。一個一個の動作は遅いので不意を突かれてもかわすことができたが、それだけに威力が怖い。


――ウィィィン………………


 その魔力を一点に集めるのに似た音がどこから聞こえるのかニーナには初めわからなかった。

 それが自分のすぐそば、先ほど巨神が合わせた手からだとわかった時に背筋に寒気が走った。

 指と指の隙間からは青白い光が漏れている。先ほどのはニーナを狙った攻撃ではなかった。これからの攻撃の予備動作だった。


「みんなー! 逃げてぇぇぇ!」


 ニーナは声を限りに叫ぶ。まるでそれを合図にしたかのように巨神は青白くなった手を自分の足下に叩きつける。


――――――


 脳を直接揺さぶるかのような爆発音。お世辞にも気持ちのいいものではない。


「って。と、と」


 地面を叩いた衝撃で起きた風圧がニーナのいる高さまで遅い、バランスを崩す。冷静に頭の中で風に乗り立て直すイメージをし、立て直す。


「――――!」


 ホッと息をついた瞬間、見えた惨憺たる有様の地上にニーナは愕然とする。

 巨神の足下を中心に半径50メートルくらいのクレーターができていた。そのあたりにあった街道や木々、岩などすべてを無に返す威力。信者もまだ半数近くいたはずだがそれらも見あたらない。

 巨神はというと地面に手をついた状態でピクリとも動かない。

 プレイヤーでいえば必殺技クラスの技だったせいか硬直している。威力が桁外れのせいか時間も比例して長い。


(……これを何度も繰り返して街を破壊したのね)


 まともに食らったらと考えるとゾッとした。


「…………ちょ、ちょっとみんな無事!」


 仲間のことを思い出し叫びながら探す。

 最初から離れた位置にいたモエ。クレーターの外側で倒れ込んでいる。彼女の防御力がハンパではないので心配することはないと判断する。


(姿見えてるんだからとりあえず生きてるってことは間違いないし)


 次に発見したのがクロード。

 彼はモエより遠い位置で膝をつき、ゴーレムのつくったクレーターを見て眼を丸くしている。ニーナの言葉にとっさに反応した彼は「超加速」を使って全速で逃げたのでダメージは軽微。

 

 ランディは巨神から30メートルくらいの位置の地面から出てきた。信者をまとめて盾にし、地面に伏せるということでダメージを最小にしようとした。だが鎧の損傷から見てダメージは大きそうだった。


(……いない?)


 だが肝心のバトルマスターだけは見あたらない。ニーナは少し低く飛び目をこらす。最後に確認した時はランディのそばにいた。ランディが生きていて彼がいないはずがないと探すがやはり見あたらない。


「……ウソ、でしょう」


 力無く呟く。信じられない、いや信じたくなかった。大声で取り乱すくらい叫びたい衝動にかられるが頭の中に残っているほんの一握りの冷静な部分がそれを止める。

 バトルマスターが死んだというのはあまりにも現実感がない。


――シャシャシャシャシャ……


 自分よりもさらに高い位置で何かが風を切る音が聞こえた。見上げると高速回転しながら落ちてくる物体がある。


「……三日月?」


 三日月の進む先にあるは巨神の頭。サン・オブ・バトルマスターの武器が主なしでここまで狙ったように動けるわけがない。


「マスター!」


 今度は声を出して呼ぶ。


(そうよ、あいつがあたし以外に倒されるはずがない!)


「おう!」


 突如――そうまさに突如。

 何の前触れもなくバトルマスターは巨神の頭に現れる。

 いったい今までどこにいて10メートル以上の高さをどう飛んだのかはニーナには理解できなかったが何をするかだけはわかった。


「三日月、こい!」


 バトルマスターはジャンプし空中で三日月を持つ。そして回転による威力を殺さないように、いや回転によって得られた攻撃力のボーナスにさらに自分の力を上乗せさせて、


「タァァァァァァァ!」


 脳天に叩きつける。

 するとどうだろう。最高クラスの銃の一撃でも魔法でもびくともしなかったゴーレムが頭の部分だけとはいえ切り裂いた。




 頭を二つに割られてはさすがに巨神も消滅より他無かった。その攻撃力があまりにも腑に落ちなかったのでニーナが後に尋ねたところ


「破壊力は回転数に比例するから45秒『操作』つかって投げておけばあの化け物だって破壊することのできる威力は手に入れられるんですよ。だから勝ちは確信してました。……ただ時間稼ぎが一番面倒ですけど」


 そう平然と言うバトルマスターがとてつもなく癇に障った。

 ニーナはバトルマスターが嫌いではない。

 性格は少々歪んでいるし、考え方もひねくれているがそれは容認できる個性。

 強いと言うことも自分の目標が低くなるよりはよっぽどいいと思っている。

 ただどんな状況下でもまったく慌てずに最前の方法を――まるで攻略を知っているかのように――とるところが気に入らない。

 

 他にもまだある。――いま彼がいないことだ。

 四天王を残し1人でどこかに行ったこと。

 それまでは「プレイヤーの目標となる」と言ってたクセにいなくなるのが気に入らない。

 本人はでれなくなったと言っていたが。そんなヘマをする男には見えない。何かを隠していると感じる。


 気に入らないのは自分以外の四天王も同じだった。バトルマスターがいなくなったのなら糸が切れた凧のようにバラバラになったということ。

 今まで通りに行動してバトルマスター探しをしても構わなかったのになぜかそうならなかった。それぞれが自分が一番強いと思っているのか、バトルマスターが特別なのか。


「後者……よね」


 モエはバトルマスターが単純に好きなのだということは見て取れる。友達以上恋人未満の片思いの少女のソレにちかい。

 ランディは自分がバトルマスターにかなわないことを知っている。それでもライバルになりたがっている、自分を差し置いて。

 クロードはモエとは逆に彼を嫌っている。あまりにも強すぎる男をだからだろう。しかし彼のそばが一番張りあいのできる戦闘が多いということで行動を共にしてきた。


「……あたしはあいつを……」


 感情としてはクロードに近い。

 むしろよりハッキリとした負の感情。憎んでいる。

 彼がいるおかげで最強になれないだけならまだしも、今までしてきた栄光すら霞むからだ。自分にないカリスマを彼は持っている。


 ニーナは三角に組んだ足に頭をつけ、思いにふけっていると話し声が聞こえた。

 その方向を見てみると数十人のプレイヤーが歩いてくる。観察すると皆共和国の鎧を身にまとっている。

 そこでようやく気がつく。この場で共和国対帝国の戦争が始まるところだったのだと。しかもその片方を全滅させてしまったということを。


 ニーナは腕の端末を見る。すでにAPは全快している。


(最近端末見ると何か忘れてる気になるんだけど、やる気も出るのよねぇ、なんでだろ?)


 ニーナは立ち上がり頭のモヤモヤを追い出すように軽く頭を振り頬を両手で叩く。

 

 ポジティブにいこう。あいつはあいつ。あたしはあたし。自分にしかできないことがあるはずだ。今はそれを考える時。

 バトルマスターと再会した時に最強の座を奪うための準備期間なのだと。

 

 ニーナは共和国兵士の元に歩き出した。

エピソード4はコレにて終了。

次回からは最終章。『彼』がメインとなります。


仕事が月末月初はちょっと立てこむのでもしかしたらちょっと間が開くかもしれません。

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