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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

腐った世界。

掲載日:2014/04/20

ネタ短編なのでUPしようかどうしようか、悩みましたが勢いでUP。

※食傷気味になる、という話です。

 どんな美味しい食べ物でも、あからさまに食べすぎると気持ち悪くなる。

要は、食傷気味になるということだ。


「おえっぷ」


 私は今、ゲロを吐くか否かの瀬戸際にきていた。

口元を手の平で覆う。勢いよく飛び出しそうな胃液を頑張る精神力で抑え込み、我慢に我慢を重ねた。頬がピクピクと痙攣する。正直、私はよくやっている、と思う。吐き出さずにいるため、せり上がる怒涛の嘔吐感を我慢し続けているのだから。平素であればぶっちゃけ迸っている。今日は調子が良い。

 ただし。

目の前にいる、いわゆるとある方々にとっての食事、がこれ以上の展開に進まなければ、の話だが。

 残念ながら、現在進行形で、留まるところを知らないようだ。


「嗚呼、可愛い……」

「う、会長様……そんなこと、」


 そんなも何も、糞もない。

壁の向こう側での出来事であったはずなのに。

どうして、こうなってしまったのだろう。

私は、冷や汗をダラダラたらしつつ、放課後の裏庭というシチュエーションで、男同士が、互いの体を制服の上からまさぐり合っている様子をうっかり視野に入れてしまい、こうして、逃げられなくなってしまったことを無念に思った。

何故に今日に限って、ショートカットの道を選んできてしまったのだろう。いくら帰宅を早めたかったからといって、非常に残念な結果になってしまった。いや、これから、が本番か。私に忍耐力が試されている。いよいよこれからが本番だとばかりに二人が重なった。まずい。胃液が! 逆流してしまう! なんてことをしてくれる! 


「っぷ」


 セーフ! 危機一髪!

必死にお口の中でせり上がるゲロリズムを抑えるために、両手で踏ん張っているが私の限界は底なしではない。我慢パラメータも目減りするのである。

ヒートアップする現場の状況に比例するがごとく、私の胃液はいったん落ち着いたフリを終了してさらなる上昇をし始めている。鼻の奥が、つん、と胃液の匂いがして悲しい。目尻が熱い。涙目なのを自覚する。

 さて。

吐き出さずにいるべきか、吐き出すべきか……あるいは、目の前の二人を……。

さくっと。


「うぅ……」


駄目だ、動くことができない。やっちまえない。

一歩でも動いたら、負けである。何に? 自分に。

でも、でも……! 

このままじゃ……!


「ま、まふ、そふ、……!」


目の前でBLってる奴らを前にして、学校の裏側にて、胃液と戦っていた女性ひとり。ぷるぷると、生まれたての小鹿みたいに蹲っている。

 が。

結果は……敗戦はスピーディかつ迅速であった……。


 


 異世界トリップ、というものが、文庫を賑わしている現代。

小説も読むのが大好きな私も、当然のごとくはまっていた。

もちろん、アッーな世界も。

俗にいう、腐女子であった。

新刊は言わずもがな、インターネット上に氾濫するデータを徘徊し、常に最新更新データを把握する日々。商業非商業問わず、私はありとあらゆるBLネタを愛していた。そう、ラブってた。リア友よりも詳しかったと自負している。リア友もそれなりの理解を示してくれていたが、いかんせんオタクではなかった。むさくるしく語る私を、生温かに見守って、うんうん頷いてくれるだけ、素晴らしき友だと考える。そう、私はそんな日々とオサラバしてしまったのであった。友人がにこやかな笑みを浮かべて、手を振っている姿が瞼の裏に見えるようだ。

 ある日、私は、死んでいたようだった。

というのも、気付けば異世界なのである。

これは当然、かつての私は死んだのだろうと思う。なんせ、周囲は美形ばかりである。いわゆる日本人顔がいないのであった。

というか、それ以前にアジア系がいない。白人ちっくな奴らばかりである。なんてこった。褐色アジア的優しさあふれるアッー、がいないではないか!

 などという、奇妙な意見を内に秘めて、私はこの世界で生き残ることになった。

もちろん、赤子からのスタートである。言語把握に努めねばならないため、私はとてつもなく苦労を背負わねばならなかった。英語っぽい意味不明な言語を、日本語に翻訳して暮らす日々。異世界における親の顔も覚えねばならず、平凡な脳みそを持つ私には大変な苦行であった。

 ……幸いにも、私の家はお札の余りある成金であった。

偏狭な振る舞いをする私を、家族は生温かな目で見守ってくれている。

妙におとなしく人生経験がすでにある私を、優秀なお子様であると認知され、次期総裁として素晴らしく真綿に包まれた生活を送ることができた。それもこれも、溺愛してくる両親の物種である。私は良き人生をスタートしたようだった。

 実際、満足している。過去を思い出すと、目端がじわりとするが、仕方がない。どれだけ泣いたところで、戻れるものでもなし。事実、戻れない。異世界らしく魔法的なものはあるが、微々たるもの。

基本的に王宮に隔離され、大事にされている魔法使いどもに接触できるチャンスはなく。貴族の恐ろしさを巷で散々噂として耳に入れていた私、さっそくながら、元の世界に戻ることは諦めたのである。それに加え地道に生きて働ける環境があるし、平和、何より私は金持ちの子、というとんでもないアドバンテージがある。

 いずれ調べることのできる環境にいることだし、両親に情が湧いてもいた。この世界から離れたいという気持ちがすっかり萎んでいたことは、否めない。美味しいものを毎日食べられ、跪かれる毎日。悪い気はしない。かつての家族、友人を思うことはあれども。危険を冒してまですることではなかった。現状維持を選択。それに何より、今の私は、ガキンチョである。扶養されている。命の危機もなし、不安はあれども、動くことはできなかったし、なかった。すくすくと伸びる身長に、ほくそ笑むだけ。そう、前世の身長は低かった。頭をぶつけるなんて奇跡を起こすことが可能になったなんて、信じられないことだった。まぁ、元来より、この世界の人間は基本的身長の平均が高いけども。

 それから、しばらくして。

私は、この異世界のとんでもないところを、知る羽目になるのである。


 まず、同性愛が普通であった。

当然のごとく、男同士が手をつないで歩いている。

私にはそれはとても、衝撃的に映った。

幼少で、生まれて初めて目にした光景にびっくりした。

いやはや。

一面、男ばかりの……。

え?

なんかのドッキリですかね。コレ。

公園デビューとやらに張り切っていた私の、幼い外見の、見た目幼女、中身腐ってる私には、到底、信じられないものを目にした動揺で、はっきりいって震えている。

 女がいない。

私と母の二人しか、この公園には実質、存在していなかった。


「と、父様……?」

「ん、あぁ、我が娘には衝撃的だったかな?」


はっはっは、と笑う父の二段、いや、三段腹が揺れている。

いやいやいや。

私は、そんな笑い話には見えない。

何故に公共の場で、野郎どもがいちゃついているのか……。

男女カップルもいるにはいるが、私の家族のみでしかいない。というか、ほぼすべて九割五分二厘が……まさかのホモっプル? アレ? 昼間ですよね。夜じゃないですよね、発展してる場じゃないですよね?


「この国では、何故か女性が少ないのだ。

 いつからだったかは、分からないが……、

 突然に、男ばかりが生まれるようになったのだよ」


 ……そういえば、私の母は、この国の人間ではなかった。

輸入……もとい、移民から女を求めるのは、この国特有の現象であったらしい。

そうして、そんな国にて、女という性別で生まれた私は、結構、珍しい生き物であったりする。

ひとつのアイスを食べあっているオッサン二人をしり目に、私はなんとはなしに、今後の人生がとてつもない嫌な予感によって彩られてる気がして、寒気を催していた。


 そうして、それは現実のものとなった。

リアルであった。


 ……私は、散々書いたが、前世が腐女子であった。

だから、好物だと思っていた。嗜好が合わぬジャンルでも、なんとか平らげられる、あるいは、耐性があるとばかり考えていた。

 だが、違った。

この世界では、ありとあらゆる場所で、溢れかえっていた。ナニが? ナニです。

そのため、はじめは、物珍しさゆえに、ありとあらゆる書物、それこそ、この国の神話にまで現るBLの豊かさに、心の底からヒャッホイしたものだが……美形ばかりがたむろってる美人産出国と言われるこの国に生まれて、素晴らしく嬉しかったという過去……学生になると、目につきやすいからか、その数が目に見えて増えていき……まぁ、同級生たちは学生だから、初心な男が多い。だからか、街中ほど意識しなくてすんでいた。

 だのに。

 

 だんだんと、その。

駄目になったのだ。


 苦しくなった。

始めの頃は、あれ、なんだろう。

ただの風邪かな?

程度であった。

 

 しかし、学校というシステムがあるので、嬉々として進学し、学生生活を満喫していたころ、遅れてやってきた転校生、それも男である彼によって、生徒会がメロメロになってしまったというBLゲームみたいな展開がやってきたとき、男ばかりの親衛隊が色んな悪さをやってたり、黄色い声を上げているのを目の当たりにしたとき……、増殖していく、異世界の中の異世界を体験したとき。私は。

 右も、左も。

上を見ても、下を見下ろしても。

そればっかりな環境なんだなあ、生活の一部になってしまったのだなあ、などとぽつんと一人でぼんやりと考えてしまったとき。

私は。


「うっ」


 何か、ぷつん、と途絶えたのだろう。

分からない。

思えば、私は男女の恋愛とかよりも、前世の頃より、この異世界での生活に根差したものばかり楽しんでいたはずであった。それなのに。

 食いすぎてしまったようである。


「はい、お薬出しておきますねー」


お大事にーなどという、声を背後に受けつつ、帰宅。

やっぱり家にたどり着く前に、胃液を抑えるお薬を使いきってしまったようだ。残念。

すっかり顔見知りになってしまった診療所の素敵なお兄さん、に見送られ、トボトボと歩く。

 脳裏に描かれているのは、これからの人生設計である。

(……ここって、男ばっかりで一見ハーレムみたいだけど、みーんな、男ばっかり見てんだよね……、

男色の傾向があるのは知ってたけどさ……まさか、ここまでとは……)

 果ては、他国に引っ越さないといけないのかもしれない。

 だが、家業をおろそかにはできない。

金持ちには、それなりの理由がある。特に、私の家は、代々の成金ではあるが、この国にとって、大事な家業を商う家でもあった。それを途絶えさせるには、あまりにも惜しいものがある。人を大量に使っている、という理由もあるが。

(せめて、私に弟がいればなぁ……)

無念ながら、私は一人っ子であった。

家族仲はとても良い。ならば、自然と他国への進出という野望は、自然と萎んでいく。

(……男ばかりだから、移民といっても、ねぇ……)

他国からお婿さんを輸入、いや、見合いという方法も考えんでもなかったが、不幸なことに、この国は、他国の男にはあまり魅力的には映らないようである。掘ったり、掘られたくない、というのが他国にとって共通の価値観であった。なんでだよ! すぐにはやられないぞ! 多分!

 まぁ、綺麗どころばかりいるから、強烈に迫られてコロリといく者も多いというかなんというか。幸か不幸か、恋愛に関してだけは、情熱的な国民性ではある……。学生の今、周りが現在進行形で惚れた腫れただのしてるのでそれを実感している。

(魔性の国過ぎて難しい……)

前途多難であった。私のクラスに女子は、私ひとりであった。

そういえば、友人も男しかいねぇ。というか、なんで男友達の恋愛相談とかされてんだろうか。価値観がぐるぐると変わりすぎて、眩暈を起こしているのだろう。足元がおぼつかない。こんな年齢で、胃腸が弱くて入院とかしたくない。倒れたくもなかった。

 最初は、楽しかった。

慣れたら、ああ、いつものことか、と冷静になれた。

冷静さの中で、楽しんでいた部分はある。

だが、それも、ある程度の容量があり、超えてしまうと、本日みたいなことになる。そう、決して嫌ではない。だが、あまりに多すぎると、具合が悪くなる。

 主に、私の内蔵物が。


「くそっ……せっかく趣味が生かせるかと思ったのに……っ」


本日もまた、そうして胃薬を飲むのであった。

あと、栄養ドリンク。

この瓶詰は、私の新たなる友達である。心の友よ、今日も頑張るからな!

基本的に主人公は、胃腸と戦う人生を送る羽目になります。

※あと、主人公の実家はいわゆる造幣局の元締めでして、国家機密な家です。ですので、簡単に国から離れることはできません。昔からの生業ゆえに、スパイ(♂)を抱えており、またそのせいで無駄に主人公の胃液を刺激してくる家系でもあり、毎日憤死してそうな、なんだかややこしい人生を送りそうな主人公です。

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