遭逢
─流れる川の音、燦燦とした大地
─緑満ち溢れる木の葉、少しひんやりとした風が木や草をなびかせる
それにしても、ここらへんは何もないな・・・。
人気がなさすぎるのも気になるが・・・静か過ぎて不気味なものだな。
とはいっても、育った環境に近い場所にいると落ち着くのは自然なもの・・・か。
とても気分がいい。だがどこか寂しい気持ちが芽生えてくる・・・。
今頃、あいつ等どうしているのだろうか・・・。
いや、今そんなことを考えていても仕方がない。あいつ等なら大丈夫だ。そう信じたい。
俺は俺のやるべきことを成し遂げなければ・・・あいつ等に会わせる顔がねぇ。
せめて、自分がやってしまったことぐらいは自分で何とかしなけば・・・。
─そう心の中で思い込みながら、彼は川の水をビンの中に汲む
ふむ・・・喉乾いたし、ついでに水でも飲むか。
─濁りなき水を手のひらに救い上げる
ゴク、ゴク
旅人「・・・うまい。やっぱり天然の水が一番・・・か。」
あまりの美味しさに声を出してしまった。
さて・・・と、次の目的地までどのぐらいあるのだろうか。
聞いた情報だと、あの先にある山を登っていけば、町が見えるらしいが・・・。
・・・相当な距離だな。
女性「あら、珍しいですね。こんなところに人がいらっしゃるなんて。」
─後ろから女性が声をかける
旅人「!」
旅人「・・・誰だ。」
女性「そんな顔で睨まないでくださいよ。私はただ、水を汲みに来ただけですよ。」
─彼女は微笑みながらそう言う
旅人「・・・そうかい。」
女性「こんなところに何の用があるのかは知りませんけど、観光なら他のところが良いですよ。」
旅人「・・・それは気遣いか?それとも馬鹿にしているのか?」
女性「本意で言ったまでですよ。こんな何もないところに居ても仕方ないでしょ?」
─そう言いながらも、彼女は川の水を汲む
旅人「あんた、この辺りに住んでるのか?」
女性「ええ、もう少し向こうの村で生活してますけどね。」
旅人「わざわざこんなところまで来なくても、村なら水ぐらいあるだろ。」
女性「ちょっと色々と訳があって、汚染・・・されているんです。だから私たちが生活できる水がないんです。」
旅人「なるほどな。」
女性「かれこれもう数年は経っているんですけど、状況は悪い方向ばかりで・・・。」
旅人「そいつは大変だな。まぁ俺はそろそろ行くとするよ。」
女性「お気をつけて。ここの下りは岩場で足元がふら付きやすいので。」
旅人「大丈夫だ。さっきここを通ってきたんだ、余計な心配はいらない。」
女性「そうですか・・・。では、またどこかで。」
旅人「?」
旅人「またどこかで・・・って、また会うわけでもないだろ。」
女性「いえ、まぁそうなんですけどね、あはは。」
─彼女の笑顔を見た後に、彼はその場から立ち去っていく
そういえば・・・この先に滝があったような・・・。少し遠回りするか。
女性「よいしょっと、あー重たい・・・。」
女性「やっぱり、もう一人誰か連れてこればよかった・・・。一人じゃ重過ぎるよこれ・・・。」
─そう言って彼女は村へ向かう