#10 結集Ⅳ
地下。
どれくらい降りたのかはっきりしないが、恐らく地下1階や2階じゃないだろう。体感だと5階分くらいか。
下が真っ暗闇で高さが分からなかった分、恐怖は薄れた。たぶん見えていたら、足がすくんでしまうような深さだったのだろう。
お父さんが一体何を考えて地下を作ったのか。
降り立った底は真っ暗だった。当然、電気などもなく、辺りがどうなっているのかさえ全く分からない。
周りを見渡すと、暗闇の中に光る棒状の物が落ちていた。
蛍光色の光を放つその棒を拾い上げる。
それは百均でも売っていそうな、子供のおもちゃ。所謂、子供の心を揺さぶる光る棒だった。
「凍鬼……これ」
「ああ、それはさっき私が落としておいたものです」
「さっき?」
「ここに降り始める前に。底が見えないのは少々不安でしたので」
だから、これを落としておいたというわけか。
さすがは凍鬼だ。
凍鬼が懐から小型ライトを取り出した。
「どうも暗くてかなわないな」
凍鬼がライトをつけた。
ようやく辺りを把握できる。
俺たちが降りてきた先はコンクリートで四方囲まれた空間。その中に一つ、扉が据えられていた。
「……行きますか」
まるで、俺たちを向こうへ誘うかのよう。
「ああ」
だが、俺たちに選択肢はなかった。
扉の向こう。細い道に重い扉が三つほど続き、その先には見覚えのある廊下に出た。
病院を思わせるような形式化された廊下。白い蛍光灯が道を照らしている。
「ここ、俺と志村が来た地下と全く同じだ」
「当たり、でしたね」
周囲を確かめてみると、近くに階段があった。上は5階、下は7階。
「ここは六階か。俺がいたのは確か……5階だった」
地下5階。エレベーターに乗る前に確認していた。
「普通に考えれば、地下奥深くに跳躍機は隠されていると思うべきですね」
「ということは地下10階」
「ひとまずはそちらへ向かいましょう」
と、その前にだ。
「その前に、近くに志村がいるなら合流したい。少し心配なんだ」
「トラブルメーカー、ですからね。しかし、いいのですか?」
「何が」
「彼が、どうしようもないような問題を引き起こした場合」
「あいつは放っといても起こすだろ、そのくらい」
「だから結局同じことだと。……真人くんは優しいですね」
優しくなんかない。
志村の保護というのもあるが、それと同じくらいの別の目的がある。
志村の監視だ。
時空間跳躍機。あれを見つけた時の志村の様子を思いだす。あの様子だと、俺たちよりも先に奪い返せば、すぐにでも志村は使ってしまう。それじゃ、俺と凍鬼の計画は破綻。
綾乃は救えない。
「あ、そういや……」
志村からメールが来ていたことを思いだした。リョウさんと話しているとき開きかけたが読まずに閉じたメール。
ケータイを取り出し、文面を見る。
『 遠藤。お前がいつこのメールを見ているのか分からないが。今、どこにいるんだ。ひとまず合流しよう。僕はここで待っている。メールを見たら返事をくれ』
メールには画像が添付されていた。
大きな地下の地図の前で一点を指差しつつ、笑顔でピースしている志村の画像が。
階段を使って5階へ上り、指定された場所へ向かうと、志村が腕を組んで待っていた。
「よう、志村」
「よう、……じゃねえよ! 今までどこほっつき歩いてたんだよ!」
「ちょっとな」
凍鬼へと目配せする。
「ま、遠藤のことだから、どうせ綾乃ちゃんが心配で外に駆け出したんだろ」
「…………ああ」
「それで。凍鬼はここにいるけど、綾乃ちゃんは? 遠藤、一緒じゃないのか?」
「……志村。あのな───」




