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Be called Fire boy  作者: タブル
第二章
14/65

#6 臨機応変デフォルターⅠ

 土曜の朝のことである。

「お兄ちゃん」

「ん?」

「わたし、ケータイが欲しい」

「お前にはまだ早いだろ」

「わたしだって、もう大人だもん!」

「小学生低学年のくせに」

「うー」

「だいたい、お前、買っても使い道ないだろ」

「あるもん!」

「何すんだよ?」

「電話してメールするの」

「ふぅん。誰と?」

「かれしと」

 かれし?

 かれし……かれし……ああ、彼氏。

「彼氏とか。ふぅん……彼氏と、ね。…………ン、ブフッ、げほげほっ!」

「お兄ちゃん、きたないよー」

 (すす)っていた味噌汁を噴き出してしまった。

「はあ⁈ 彼氏⁈」

「彼氏だよ?」

「お前が?」

「わたしが」

「お前何歳だよ! まだ一桁だろうが」

「おにーちゃーん! ケータイが欲しいー」

「ふざけんなっ! 何がケータイだ。ゲームじゃないんだぞ。高いんだぞ」

「彼氏と電話したいの。それに、ライトバンク同士の通話料はすごーく安くなるんだよ!」

 ライトバンク。携帯電話の某大手企業である。

「それ、意味分かって言ってんのか?」

「ん、なんとなく」

「お前、彼氏って言葉の意味も分かってんのか?」

「うん。将来、一緒に―――」

 こんな早朝から、朝食中から、なんでこんな話になってしまっているのだろう。

「―――将来、一緒に婚姻届を出す人のことでしょ?」

「間違ってはないが、なんかピントがズレてるぞ。我が妹よ」

「間違ってないってことは正解なんだよね♪」

「正解でもない」

「お兄ちゃん。言ってる意味が分からない」

「正解と不正解の中間。その曖昧さだ。それこそ日本人の美徳なんだぞ」

「お兄ちゃん、何言ってるの?」

「その言葉、そっくりそのまま返してやる。彼氏だと? お前がか? 面白い冗談だ」

「冗談じゃないもん! 私のこと、好きって言ってくれてるもん!」

「へぇ……最近の小学生はませてるもんだなぁ」

「ふふっ、彼氏もいないお兄ちゃんが子供なだけだよ」

「なんだとっ! こんな歳の離れた妹に子供扱いされるとは……」

 それと、普通男性に彼氏はいない。

「じゃあ、お前はどうなんだ! どんな所が好きって言ってくれてるんだ?」

「ピーマンやゴーヤが食べれる所。大人だって」

「考え方が子供のままじゃねえか!」

「いつも給食でピーマンくれる優しい人」

「そいつ、絶対ピーマンが嫌いなだけだ!」

「その時、いつも、わたしのこと好きって言ってくれる」

「お前、騙されてんぞ」

「だからわたしも、大好きなの。相思相愛―――」

「じゃないからな」

 利害関係が一致しているだけだ。

「わたしの恋にいちゃもんつけないで」

「いや、だから、それは」

 我が妹が箸を置いた。

「それは、何?」

「それは偽物だ。にせもの。苦手な食べ物を食べてもらうための理由付けなんだって」

「違うもん。そっちが嘘だもん。彼、ちょっとツンデレってる所あるもん。『別にお前のためじゃないからな。俺はピーマンが苦手なんだ』って」

「ツンデレじゃねえ! それが本音だ!」

「だーかーらー、お兄ちゃんー! わたしにー、ケータイ買ってー」

 ダメだ、こいつ……。早くなんとかしないと。

「はぁ。朝から兄妹で何言い合ってんのよ。真人、買ってあげなさいよ」

 それまで無言だった美鈴が口を挟んだ。

 朝食の場。テーブルに三人で着いている。

「はあ? なんで」

 ごちそうさまでした、と言って、食器を片付けて、美鈴は続けた。

「別にいいじゃない。減るもんじゃないし。増えるもんでしょ?」

「俺の金は減る」

「そんな些末(さまつ)なことはどうでもいいの。可哀想だとは思わないの?」

「美鈴おねーちゃん、いいこと言うー♪」

 最近、やたら二人の仲がいい。

 女子同士、気が合うのだろうか。

「いや、可哀想と言うなら、彼氏ができたと勘違いしてケータイを欲しがる妹がとても可哀想なんだが。もう哀れというか」

「うるさい。このウジ虫野郎」

「怖い怖い怖い。言い方こえーよ」

 真顔で言われた!

「いい? 貴方は妹にケータイを買ってあげるの」

「いやだね。俺は買わない」

「買ってあげるの」

 キィィン……

「買わない」

「貴方は買うの」

 キィィィィン……

「誰が買うかよ」

「買え」

 キィィィィイイイン……

「はい……喜んで」

 気がつけば、その日の朝、俺は妹と、妹のケータイを買いに走っていた。


 結局、保護者同伴じゃないと当然手に入る代物ではなかったので、母さんもついてきた。更に美鈴も。

 そして、我が妹は最新機種を購入。それに伴い俺の貯金が大きく減ってしまった。俺が払わせられたのだ。

 その時、明らかに俺は気がおかしくなっていた。というより、美鈴の催眠にかかっていたと思われる。俺は……喜んで金を払っていた。なんの疑問も抱かず。

「おい、美鈴。金返せ」

「返せって……また、意味が分からないこと言わないで。お金は貴方が自分からライトバンクに払ったんじゃない」

「そんなこと自分からするわけないだろ」

「事実、自分から払ってたじゃない。最高に笑顔だったわよ、貴方」

「いや、おかしいだろ……絶対お前のせいだ」

「証拠は?」

 証拠は……無い。

「……」

「言いがかりはやめてよね。貴方が愛すべき妹にケータイを買い与えたんじゃない」

「ちくしょう……」

 反論したいのに、出来ない。

 美鈴の言うとおり、俺は自分から払っていたのだ。自分でも覚えている。ほとんど無自覚状態だった。

 だから反論できない。なにしろ美鈴の技には証拠が残らない。

「覚えてろよ」

「何を?」

「全部だ!」

 美鈴は余裕な表情で漫画をめくっている。

 ちなみに場所は俺の部屋のベッドの上だ。いつも美鈴はここで漫画を読む。特に理由は無いらしい。自分の部屋を得たくせに、ここで読む美鈴は正直邪魔でしかない。

「はぁ……」

 大きな溜め息。

「何よ。せっかく人が気持ちよく漫画読んでるのに、近くで溜め息とかつかないでくれる?」

「悪いな。ここは俺の部屋だ」

「で?」

「だから俺の自由だろ?」

「あたしが漫画読んでるじゃない。今、いい所なの。そんなどうでもいい理由で邪魔しないで」

 どうでもいいって……

「何よ。もう……」

 バタンッ。

 美鈴は漫画本を閉じた。

「どうしたのよ。今日の貴方、元気無いわ。なんかあった?」

 元気、ね。

 俺はずっと、この間のことが気に掛かっていた。マデュアとか。

 色々考えて、だけど答えがでなくて。

「なあ、俺って一体なんだ?」

「はあ? カス」

「そうじゃなくてだな。……いや、待て。俺はカスじゃない! マデュアとか、その辺のことだよ」

「それがどうしたのよ?」

「俺って、どんな立ち位置になるんだ。マデュアの人間ってことになるのか?」

 マデュアの人間だとすると。既に俺は深く関わり過ぎているのではないか。そんな思考が(よぎ)る。

 ―――関わるな。

 そう言われた気がする。リョウさんは悪い人ではない。

 彼を信じるならば……

「貴方はね、そう、マデュアに知り合いがいる一般人ってとこかしら」

「え、まだそんなもんなのか?」

「ええ。貴方、もしかして自分を過大評価してるつもり? あたしの前では一度だって活躍したことないわよね?」

 マデュアに知り合いがいる一般人。

「あと、観察対象って感じかしらね」

 美鈴は再び本棚から漫画本を取り出しはじめた。

「観察対象?」

「そう。また、あんなことが起こらないか、どうか。ま、あたしの処分も含めてだけど。だからこうしてここでこうしてるんじゃない」

「そうか」

 あんなこと……百五十回ほど繰り返したという、あの日のこと。

 少し理解できた。

 が、何か、膨らんでいく不安感は拭えないでいた。



 昔の俺はお父さんっ子だった。いつもお父さんについてまわる子供だった。幼い俺は寝る時も、食事の時も、遊ぶ時だって一緒だった。

 お父さんが大好きだった。

 だからお母さんのことは殆ど覚えていない。顔すら思い出せなくなった。元々子供が好きではなかったのか、素っ気ない態度ばかりとっていたのは覚えている。全く愛されていなかったわけではないが、愛が薄かった。

 そのうち、知らない間に両親は離婚していた。

 それでも生活そのものは、ほぼ変わることはなかった。それまでと同じ、変わらないの生活。

 そして何年か経ち、お父さんは今のお母さんと再婚した。数年経つと、女の子も産まれた。アイと名付けられた。

 その子が、俺の唯一の妹だ。

 しばらくして、お父さんは消えた。俺を残して。

 そこで初めて、俺にとって、世界が大きく変わった。変わったように見えた。

 お母さんは、それまでと変わらず俺と接してくれた。実の母親ではないのに。むしろそこに本物の母親より、母親の愛を感じた。だが、まだ小さかった俺には、まだ分からなかった。

 いや、心の奥底では分かっていても直視することができなかった。

 最愛の肉親が、消えたから。

 確かな愛を感じていた。

 それがまた消えてしまうんじゃないかって思ったから。

 ―――少し時間が流れて。

 妹はすくすく大きくなった。体だけでなく、頭も良くなった。利口になった。口も達者になる。文字も書けるようになり、どこからか難しい言葉も覚えてきた。

 普通の子と変わらない成長。普遍的な過程。

 平々凡々なこと。

 ただ一つ違うのは、その速度だった。

 異常に速い。いわゆる、天才だった。救い、というべきなのか、アイは成長は速かったが精神年齢は他の子と変わらなかった。理由は不明。

 そのおかげで普通の女の子として生活ができている。

 頭がいい。勉強ができる。興味を示すもの、やりたいことなどが他の子よりも早い。成長し過ぎている。

 しかし、どこか精神年齢が低い面があり、考え方や好きなものが歳相応のモノで収まっている。

 そんな―――俺の妹。

 俺の知る、唯一無二の肉親で、大切な、大切な妹。



 月曜日。

「―――で、その小学生の妹の持つケータイが最新の機種っていうのが気に食わないんだ」

 俺は綾乃に愚痴を(こぼ)していた。

「だいたい、まだ俺はガラケーなんだぜ。なのに、妹は最新型のスマホだ。ゲームもできる、動画も見れる、最高画質の写真機能、なんかよく分からないが音声認識機能にも長けているらしいし」

「あらあら、そうなんですか」

 綾乃の席の隣に座り、話す。

 美鈴は志村に絡まれて、どこかに避難していた。完全に友達認定されているから、志村はとことんしつこい。

「そうなんだよ。ったく、どうかしてるよな」

「そうですか? 妹の方が最新型というのはよくある話じゃないですか」

 綾乃は本を読みながら話してくれる。

 小説。ミステリー物なのは判るが、厚くて難しそうだ。それを、かなりのスピードで読みながらの返事。

 綾乃の特技その一。難しい本を高速で読みながら会話できる。

「よくある話?」

「未来から来た青い猫型ロボットより、未来にいる黄色い妹の方が性能がいいじゃないですか」

「それは後に生まれたからだ」

「そういうことですよ」

 どういうことだ?

「つまり、どういうことなんだよ」

「妹には、最高のモノを与えて然るべきです」

「お前まで……」

 ……そうか。

 綾乃も……そういえば、妹という種類の人間だった。

 綾乃は味方してくれると思ったが、間違いだったか。

「妹の絶対的権利です」

「そうなのか……」

「はい! それはもう」

 だめだ。

 綾乃は綾乃で妹主義者(シスタリアン)だ(今、命名した)。

 彼女達には一生敵わない気がしてきた。

「……綾乃の兄貴ってさ、どんな人なんだ?」

「私の兄ですか? そうですね……とても紳士みたいな優しい人ですよ」

「紳士か」

 なんか綾乃の兄らしいといえば、兄らしい。

「綾乃の兄貴、名前、なんつったっけ」

凍鬼(とうき)。凍るに鬼と書いて凍鬼です」

「へぇ。……なんだか、すげー強そうな名前だな」

 自分で、人の名前聞いてその感想はなんなんだ、とは思ったが、言ってしまったものはしょうがない。

 後悔先に立たずだ。

「強そう……ですか。そうですね。真人さんの言うとおり、強いですよ。ものすごく」

「体格が良いとか?」

「スマートでスリムですね」

「スマート……賢いのか」

 直訳。だが、もっぱら別の意味で使われることの方が多い。

 まるで揚げ足取りみたいになってしまった。

「あー、賢いですね。天才的と言われています」

 が、問題無し。

「なんか色々とすごいな」

「はい。カッコいいですし、私と違って取り柄が多いです」

 一旦、肘を机について眉間に手を添える形で、ちょっと情報を整理してみる。

 ええっと、なになに。

「内面は紳士。外見はスリムでイケメン。何やら強くて……その頭脳は天才的。……何者だよ、綾乃の兄貴って……」

 全てを兼ね備えてやがる。

「凍鬼は凍鬼です。他の何者でもありません」

 綾乃の顔は、少し誇らしげだ。

 確かにそんな兄を持ってたら、そんな顔もできる。

 兄妹ってのは、いいもんだよなぁ。

「俺の妹も、無駄に頭が良くてなぁ」

「そうなんですか」

 それで頭の回転が速くて。

「小学一年生のくせして、ケータイ欲しいとか言いやがる。しかも小学生一年生の恋愛にしろ、自分の都合の悪い方向へは頭が働かない」

 なんて妹だ。

「いいじゃないですか」

「ん」

 綾乃はにこやかに言った。

「そんな話も全て、真人さんの妹さんと信頼し合えてるからこそですよ。歳の差大きいじゃないですか」

「そんなもんか?」

「はい」

 コンコン……

 何かを軽く叩く音が俺が座っている席のつくえから聞こえた。

 頭を上げ、目をやると、そこに女子が一人立っていた。

「あ、ごめん。ここお前の席だったか?」

「ううん。気にしなくていいよー。わたしゃ、まだ、いいから」

 そのまま、そのままとジェスチャーされるまま、立とうとしていた体勢から再び座り戻される。

「それで綾乃ちゃん。何の話してたの? コイバナですかい?」

 女子生徒は綾乃に尋ねる。

 癖っ毛の髪にショートヘア。イルカの模様をあしらったヘアピン。どことなく幼さが顔に残る可愛らしい女の子だ。

「コイバナじゃないですよ、レンちゃん」

「ありゃ、そうなの。なんか恋っぽーいワードがちらほら聞こえてきたからさ、あたしすっかり恋について語ってるのかと」

「恋っぽいワード?」

 心当たりがなく、つい俺が聞き返していた。

「恋愛とか、信頼とか、歳の差とか! これって、そういう系の話かと。ケータイとか聞こえてたから、ケータイトラブルかなぁって」

「そんなんじゃねぇよ。それ、たぶん妹の話だ」

「あ、そうか。もしかして、妹さんとの禁断の恋……ごめん。あたし、聞いちゃいけない話だった?」

「違う違う。そんなわけないだろ」

 俺はそんな人間じゃない。

 妹萌えとか、理解しづらい人種だ。

「でもね、あたし、そういうのもアリって思うなぁ。遠藤くんの自由なんだよ」

「いや、だからしねえって」

 俺の言葉を聞き、改めて思考したのち、ふふっと微笑する。

「最初は好きな男性のタイプの話かと思ったよ」

「ああ、そりゃ綾乃の兄さんの話だ。たぶん」

 それっぽく聞こえないでもない。

「そんな完全無欠な人間が綾乃のタイプか分からねえし。そんな話題じゃなかったぞ」

「あら、あたしはすっかり遠藤くんのタイプの話だとばかり……」

「?」

 …………

「勝手に人にホモフラグ立てんじゃねえ!」

「あら、失敬。このレンさんとしたことが」

 にたりと笑う。

 こいつ……

「二人とも仲が良いんですね」

 隣で綾乃が静かに笑っていた。

「真人くんが美鈴ちゃんや志村くん以外の人と話してるの、初めて見ました。本当はお友達が―――」

「いや、こいつと話すのは、これが初めてだ。綾乃」

「ちょっとー、いきなりこいつ発言。ひどいなぁ、遠藤くん」

 じーっと睨むような視線を向けられる。

「ま、いっか。そうねぇ。あたしも初めてだよ。遠藤くんと話すの」

「そうなんですか。なかなかそうは見えませんよ。二人とも馬が合うのですね」

「知るかよ。っと、そろそろ、ほんとに席を立った方が良さそうだ」

 ふと視界に入った時計の針が、授業開始わずかな時間を告げていた。

「じゃっ」

 言葉も軽く、俺は自分の席に戻る。

 自分の席についた所で、横から肩をつつかれた。

 隣の席。美鈴だ。

「さっき話してた子、知り合い?」

 美鈴が不思議そうに聞いてくる。

「知り合い……じゃないな」

「じゃあ何よ」

 俺にも分からない。

 美鈴も解せないと顔に書いてある。

 なぜ。そもそもなぜ、俺がクラスメイトと話しただけで、そんな不思議そうな顔をされる。別に普通じゃないか。

 もしや、嫉妬⁈

 ではないか。流石にあり得ない。美鈴にがそんな感情を持ち合わせているとは思えない。

 じゃあ、自分も友達になりたい、とか?

 それならば、休み時間中に寄ってきてもいいものだ。

 そうでもないとすると……

「なに考え込んでるのよ」

「え?」

「あたしは友達のいない貴方に、彼女はなんなんかって聞いてる」

 まさか……暗殺。抹殺の対象として彼女を……

 マデュアの陰謀か。

「やめてくれ。レンさんが何をしたっていうんだ」

「今、一瞬だけ心読んでたけど、こんな発想の飛躍、久々に見たわ……」

 どうしてそんなに呆れ顔なのか。俺には見当もつかない。

「志村に毒され過ぎ。……で、彼女って―――」

「ああ、このクラスの……確か、瀬河(せがわ)蓮花(れんか)さん。皆は愛称としてレンって呼んでるらしい」

「愛称って……貴方が呼んだことは」

「あるわけないだろ」

 当然だ。友達がいないのだから。

「レンさんねぇ。さっきは本当に絡まれてただけだったのね。……ばーか」

 意味も分からずバカ扱いされた。




 レンさんは綾乃の友達らしい。

 後から聞いた話。


 その時にはもう、俺にとってもレンさんは新しい友達と呼べる存在に……なったのか?

 その辺は、まぁ、曖昧なままに。


 曖昧さは日本人の美徳だから。


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