セバスチャン
「近くで見れば見るほどドン!!って効果音でそうね」
「そんなことないよー」
やっと勤の家の前にたどり着いた佳奈の感想は正しい。
無駄にでかい門から家の周りをやたらでかい塀が囲んでいる。屋敷どころではないもはや城だ。
「そういえば、さっきインターホンみたいなの押したときいろんな犬が出てきて犬ぞりしてくれたけど・・・、まだいんの?」
「ああ、いるよ。ケルベロスから始まり、フェンリルでしょ、犬○叉でしょ、パトラ○シュでしょ、「ああ、もういい、もういい。あんたの名前のセンスはありえない。子供が生まれてもあんたには絶対に名付け親にはさせないわ」
その言葉を聞いて勤はさっと顔を覆う。
「子供って、まだ早いよ・・・」
そっちかよ!そうつっこみたい。ここに彼らのほかに誰かいればそう突っ込んでくれるだろう。
「ふふふ・・・、勤は可愛いなぁ・・・。グへへへ・・・」
佳奈もこういう人間なのだからそんなツッコミするわけがない。
恥ずかしがる勤の後ろに周り佳奈は勤の尻を撫ではじめる。
「はぁはぁ・・・、どう?いいと思うんだけど。慣れ親しんだ家の前で汚されるって?どうどう?そういうプレイ・・・。ハァハァ・・・。」
「そ、そんな・・・、あっ・・・、ケルベロスが・・・んっ、見てるから」
勤は佳奈のテクニックによって喘ぎ始める。その声に比例するかのように佳奈の変態度数も上がっていく。
キモい、最大限にキモい。さすがのケルベロスも気分が悪くなったのかささっと走って家の中へ入ってしまった。
「ほら、もう見とらんよ?あの子空気読んで家の中入ったよ?それなら、その心遣いに甘えようやぁ?ね、ね?うちとあんただけじゃけん・・・。」
どこかスイッチがはいった佳奈はおかしな勘違いをしてさらにヒートアップする。
少し背伸びして勤の髪に鼻を当てスゥーっと息を吸い込んだ。
「ほ、方言出てるよぉ・・・」
「すぅ、はぁぁ・・・。もうダメ限界・・・。ヤル、今すぐヤル・・・「・・・お止めください「うるさいわ・・・。止められるわけ無いじゃろ・・・。ん?」
行為を始めようとしたとき佳奈の耳にしわがれた声が聞こえた。勤の声とは違う年老いた声だ。
その方向を振り向くと真っ黒な燕尾服を着た背の高いメガネの老人がたっていた。
(・・・執事?)
老人は勤に抱きつく佳奈を引き剥がした。そして、乱れた勤の服装をただし、ついでに髪の毛を櫛で整える。さらにシュッと香水をかけた。
すると、満足したのか老人は勤と佳奈から一歩はなれ、深くお辞儀をした。
「お久しぶりです。勤坊ちゃま」
「セバスチャン!」
「反応遅すぎだろ!」
セバスチャン、そう呼ばれた老人を佳奈はじっと見る。
背は高いが・・・特に外人というわけでもない。目は黒いし、肌も白いわけでもないし、顔の彫りが深いわけでもない。
「どのツラ下げてセバスチャンって名乗ってんだ!!」
と言おうとするのを抑えて自己紹介を始める。
「ええっと、はじめまして。八島佳奈です。勤くんの彼女です。よろしくお願いします」
ニコリと笑って佳奈が手を出すとセバスチャンも笑いながら手を出した。
「はじめまして。セバスチャンでございます。坊ちゃまのことは生まれた時からお世話させていただいております。お話は聞いています。あなたが泥棒猫ですね。よろしくするわけねーでしょう。殴られたいんですか?」
そう言って佳奈の差し出した手をパンとはじく。
「え?」
呆然とする佳奈を見てセバスチャンは馬鹿にしたような笑いを浮かべる。いや、馬鹿にしたようなではない馬鹿にしている。
「ハッ!泥棒猫女は耳にゴミでも詰まってんでしょうか?聞こえなかったんですか?この薄汚いメス豚が!私の可愛い坊ちゃまを!!!」
セバスチャンは憤怒の形相で佳奈を睨みつけ勤の手を取る。
「ささっ!坊ちゃま。旦那様がお待ちです。中へ入りましょう」
ニコニコと勤と手をつなぎ屋敷へ入っていったセバスチャンを見て佳奈は拳を握り締めた。
「・・・そこは私の場所だぞ・・・クソジジイ・・・ッ!」
佳奈は決意した。セバスチャンの前では特に勤とラブラブしよう。いや、それ以上のことをしてもいいかもしれない、と・・・。