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空を飛ぶのに必要なこと

作者: Ram F

僕はずっと大空の不自由さに窓枠から顔を出す鳥籠を眺めていました。


僕は人の持ち物として鳥籠に入ったことがありませんでした。

 

鳥かごを全く違う空から見下ろして、夏の暑い日差しにも、雨が強く、僕の羽が飛べなくなってしまっても、そっと見ていました。


 あなたが鳥籠を向けだしたのは、必然でした。


その日のことを、僕は忘れています。いえ、忘れていたといいましょう。あの日の空も、風の強さも。

僕はただ、あるいはきっと、羽根休めをしたかったのです。

 

 中略


鳥籠には、不自由に空を見つめる雛鳥がいました。僕は、鍵を開けてやりました。

すると雛鳥はビクビクしながらも「はい」と言うのです。

僕はどんなつもりだったのでしょう。空を知らない雛鳥に空の素晴らしさを伝えてしまった。

僕には鳥籠の中へい続けることを考えたこともなかったのです。それは思いがけない出会いでした。


窓の外は雛鳥にはどのように見えたのでしょうか。


僕は後悔したのです。空を知らない雛鳥に自由に空を飛べるには、飛びたいという意思ともうひとつ。

羽に力がなければならないのです。


 僕は、窓に飛び降りて鳥籠をみました。


そこには、雛鳥はいませんでした。


それから、幾年がたって、風の噂で雛鳥の行方がわかりました。


僕は、窓の外で雛鳥を覗き込みました。


そこには、羽の折れた一匹の鳥がいました。


僕は、このことは忘れないでしょう。会うことはできません。


顔を合わすことができそうにありません。ですが、君の羽は純粋であるいは素直で、


風当たりが強いのでしょう。


でも、きっと空を強く飛べる日が来るでしょう。もし、飛べなかったとしても広大な海があるでしょう。


僕にはできなかったことあなたにはできるでしょう。これは予言です。


ところで、最近、あなたに少しだけ似た人がやってきました。空は曇りでした。その人は、鳥籠の中にいて「世界などつまらない」と言いました。

 僕は夢見心地でした。それは懐かしい出会いでした。僕は、あの時の後悔を徐々に晴らせられると思ったのかもしれません。


 ああ、あなたは今どこで何をしているでしょうか。

 まだあの日のように、鳥籠の生活を楽しんでいないのでしょうか


 僕は、今、暗雲の中にいます。この空に、奇跡のような世界があると信じて飛び続けています。

 今いる空からは暗くて地面も見えないので、僕は目を見開いて、世界をよく見つめています。

虹の空を見逃してしまわないように

 たくさんのことを教えてくれてしまってごめんなさい。でも、飛び方を知らなくても、あなたには空にでたい気持ちと、その大きな白い翼があるじゃないか。あの時空を飛ぼうと思ったちょっぴりの勇気。

あなたには、僕にはない大切ものがあります。だから、その羽に見失わない力がこめられる日がきっと来るんだ。

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