唇
唇は最後にとっておきたかった…
すみません。甘い展開は不可能みたいです。
私は目の前の青年をできるだけ真っすぐ見据えた
「私のいるべき場所は元の場所です。戻れないなら死んだ方がましだ。他の世界に行くなんて、冗談じゃない。」
「君の居場所はそこにあったのか?」
薄い唇から紡がれる言葉に不快感と何故か焦りを覚えた。
軽く息を吸ってその問いに答える。
「あるに決まっています。家族も友達もみんな私を待って…」
「そうではない。君の帰りたい君の居場所はあったのかときいているんだよ」
「だから、あるといっているでしょう!!」
何が言いたいのだ
「確かに君は世界に不満があったわけではないよね、でもそこまで依存してたわけでもない。ときどき自分の足が地についてるのか、ココは自分のいるべき世界か、そう思う瞬間があっただろう。違うかい?」
「ちがっ」
わない…
「期間は季節が二つ巡るまで。その間に自分がどうしたいのか考えるんだ。安心しろ暦は元の世界と変わらない。ただ、季節は秋だがな。言葉や文字の心配はないだろう。異世界トリップの特殊技能とかではなくお前がもともと持っている系質で十分やっていける。もし季節がめぐって帰りたいって時は、俺が運命捻じ曲げても絶対返してやる」
少し口調が荒れた彼は、何か決心したような強い眼をしていた。
「すまない私は元々気の短いほうなんでね。ここまでの説明を加えたことを譲歩と思ってほしい。では、幸運を祈る」
「待って」言う間もなかった。
こうして私意識はまた落下した。