残響
悲しい話になってしまいました。
苦手な方はバックをお願いします。
ジャンルやタグがよく分からなくて、最低限だけ付けています。付けた方が良いタグ等あったら教えて下さい。
よろしくお願いします。
アタシは子供の頃から鈍臭くて不細工で頭も悪くて、両親にも誰も彼もから『生まれてこなければ良かったのに』と言われてきた。
アタシもそう思う。
だけど、アタシにもたった一つだけ取り柄があったんだ。歌を歌うことだけは誰よりも上手かったよ。
だから、いつも歌を歌ってた。
そしたら町の人が、アタシの歌を褒めてくれたんだ。『綺麗な声ね。歌をもっと聴かせて』と言われ、嬉しくていっぱい歌った。
歌を褒めてくれる人がどんどん増えていって。いつも、公園で歌っていたら『ウチの店で歌ってみないか?』と声を掛けられて、下町の小さな酒場のステージで歌って、僅かだけどお金も貰えるようになったよ。
お金を持って帰ると、両親に『お前にも取り柄があったんだな。稼いた金は全部よこせ。今まで育ててやったんだから、恩を返せ』と、全部取り上げられてしまった。
それでも別に良かった。アタシは歌を歌えれば、それだけで良かったから。
酒場にはアタシ以外にも歌を歌う人がいて、ザビーナさんって言った。
ザビーナさんは楽譜の読めなかったアタシに、読み方を教えてくれた。そうしたら歌える歌がいっぱい増えて、嬉しかったの。
ザビーナさんは『歌はね、人々の心に寄り添うような歌を歌うと喜ばれるのよ』と教えてくれた。
だから、アタシは花が咲く季節には花の歌を、雨の頃には雨の歌を歌った。すると、みんなとても喜んでくれたんだ。
偶に恋の歌を歌うこともあったよ。
アタシが酒場で歌うようになって数年が過ぎた頃、日照り続きで雨が降らず、作物が実らなくなって食べる物が店から消えた。
不作でも領主様に払う税は変わらない。町の人たちは飢えて、子供たちがご飯を食べられなくて死んじゃった。町の人たちみんな領主様への不満を募らせていたんだって。
そんな時ザビーナさんから『こんな時こそ歌で皆を元気づけなくちゃね。だから、貴女はこの歌を歌ってちょうだい』と、楽譜を渡された。
最初は酒場のステージで。
それから、ザビーナさんに勧められて町の広場でも歌うようになった。広場で歌うと、沢山の人が泣いてくれた。
アタシの歌がみんなの心に届いたと思って嬉しかった。
でも、違ったんだ。
広場で歌っていると衛兵が来て、アタシに縄を掛けて領主様の館に連れて行った。アタシは訳が分からなくて怖かったんだよ。
立派な服を着た、おじさんがアタシに言うんだ。『お前が魔女か。領民の反乱を扇動した罪で火炙りにしてやる』って。
アタシは魔女じゃないって言ったけど、おじさんは『広場で領民に反乱を起こせと歌っていたではないか』って言うの。
広場で歌っていた歌がいけなかったの?ザビーナさんはどうしてあの歌をアタシに歌わせたんだろう?アタシには分からなかった。
一晩、領主様の館の地下牢で過ごした。最後のばんさん?とかで、今まで食べた事のないような美味しいご飯を食べさせて貰った。
翌朝、衛兵に縄を引かれて歌を歌っていた広場に連れてこられた。広場には沢山の人が集まってたよ。
衛兵が高らかに私の罪状とか言うのを読み上げる。
『この魔女は領民を誑かし、反乱を扇動した罪により火炙りの刑に処す!』
広場にいた人達の中に知ってる人がいた。いつも酒場に来てくれるおじさん、角のパン屋のおばさん。子供が死んじゃったおばさんもいたよ。みんな泣いていた。アタシの為に泣いてくれてるのかな?
高い十字架に張り付けられて、足下に沢山の木が積み上げられる。火を点けられて足が熱で痛い。
ああ、アタシここで死ぬんだなって思った。だから、アタシは歌を歌うことにしたんだ。最後の最後まで歌を歌っていられたら、それだけでアタシは幸せだったから。
アタシの歌が誰かの心に残ればいいなあ……。
…そうしてアタシの舞台は終わったんだ。
『アタシ』が死んでから、本当に領民達が反乱って言うのを起こしたんだって。作物が不作で税を取らない様にって、王様からの御触れがあったのに領主様は無視して、いつも通り税を取ってたんだ。
その反乱を起こした人達の中にザビーナさんもいたの。彼女は領民の怒りを煽って反乱に導くために、アタシにあの歌を歌わせたんだって。
アタシが歌ったら、アタシがどうなるか分かっていたのに。でも、彼女は反乱を主導する立場だったから、彼女が歌って捕まって死ぬ訳にいかなかったんだって。
そして、反乱は成功し領主様は反乱軍に討ち取られた。王様は領主様の悪行を知り、反乱を起こした領民を処罰しなかったんだって。
次に来た領主様はちゃんとした人で、町は持ち直したらしい。日照りに対処するための「かんがいようすい」を整えてくれたとか。よく分からないけど。
どうして、アタシがこんな事を知ってるのか不思議だって?
アタシが火炙りにされた後、ザビーナさん達が広場で晒し者にされていたアタシの遺体を盗み出して、ちゃんと埋葬してくれたんだ。
小さなお墓を作ってくれて墓の前でザビーナさんが、この話をしてくれたんだよ。
ザビーナさんはずっと泣いてた。
『ゴメン、ゴメンな。皆の心を纏める為には、あんたの透き通った綺麗な歌声と犠牲が必要だったんだ。あんたが殺されるのを分かってたのに利用したんだ。私の事は許さなくて良いからね…』
ザビーナさんは度々、アタシの墓に来て色んな話を聞かせてくれた。
そんなザビーナさんにアタシは歌を歌う。多分、ザビーナさんには聞こえていないだろうけど。
歌っていればアタシは幸せなんだよ。
ある時、町の片隅で女の子が生まれた。その子は小さい時から歌が上手かった。
少し古い歌を歌う、その子の事を周りの人達は不思議がった。
母親が女の子に問う。
「だって、ほら聞こえるよ。町のあちこちから歌が聞こえるんだ」
アタシは歌を歌っているだけで幸せなんだよ。
Fin
最後まで読んで頂きありがとうございます。




