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【二作目・完結済み】異世界冒険をライブ配信中! 『神々(視聴者)』からの『恩寵(投げ銭)』でスキルを買って魔王を倒します!  作者: 立花大二
第一部:配信者と勇者

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第8話『小さな温もり』

 泥まみれのバズ事件から数日。

 俺の所持祈力は、ちょっとした富豪レベルになっていた。

 アリアに新しい盾をプレゼントした。

 彼女は最初「私に構うな」と断ったが、「パーティ全体の戦力アップのためだ」と理屈をこねて、半ば無理やり押し付けた。

 受け取った時の、少しだけ嬉しそうな困ったような顔。俺は見逃さなかった。


【神託】:美の女神ヴィーナス:きゃー! 今の表情! 今の表情よケンタ! よくやったわ! 【恩寵:3000祈力】


 ヴィーナス様、ありがとうございます。

 少しずつアリアとの間の空気も和らいできた気がする。

 旅の道中、彼女の方から話しかけてくれることも増えた。「あの森には珍しい薬草が自生している」とか、「この辺りは盗賊が出るから気をつけろ」とか。まあ、会話の九割が実用的な情報だけど。


 その日、俺たちは隣町へ向かう街道を歩いていた。

 道の真ん中に一台の荷馬車が止まっている。よく見ると車輪が壊れていて、周囲には屈強な男たちが何人か倒れていた。

 そして、荷馬車の檻の中から、何かが小さく鳴く声が聞こえる。


【神託】:ん? イベントか?

【神託】:奴隷商人っぽいな

【神託】:面倒ごとには関わらないのが吉


 俺もそう思った。関わりたくない、と。

 だが、アリアが眉をひそめて荷馬車に近づいていく。


「待て、アリア」

「だが、中に誰かいるようだ」


 彼女が檻に近づくと、中から小さな女の子が怯えた目でこちらを見ていた。

 ボロボロの服。汚れた顔。そして、頭にはふわふわの犬みたいな耳がついていた。

 獣人という種族らしい。


「……助けて」


 か細い声だった。

 その時、倒れていた男たちの一人がうめき声を上げて立ち上がった。


「てめえら……何者だ。これは俺たち『黒蠍団』の商品だ。邪魔するなら容赦しねえぞ」


 男は錆びた斧を手に、よろよろとこちらへ向かってくる。どうやら奴隷商人で間違いないらしい。


【神託】:うわー、テンプレ悪役

【神託】:アリアさん、どうするの?

【神託】:ここで助けたら絶対面倒なことになるぞ


 神託の言う通りだ。こいつらを倒してこの子を助けても、俺たちに何の得もない。

 むしろ厄介な組織に目をつけられるだけだ。合理的じゃない。

 配信的にも、地味な人助けがウケるとは限らない。

 俺はアリアの腕を掴んだ。


「行くぞ、アリア。関わるな」

「……しかし!」

「いいから!」


 俺は彼女を引っ張ってその場を離れようとした。

 その時。

 檻の中の少女と、目が合った。

 大きな黒い瞳。その瞳には絶望の色が浮かんでいた。

 俺に向けられた、小さな、小さな諦めの視線。


 ――ああ、この人も見捨てるんだ。


 そう言われた気がした。

 気づいたら、俺はアリアの腕を離していた。

 そして、ゆっくりと奴隷商人の男に向き直っていた。


【神託】:お?

【神託】:ケンタ、どうした?

【神託】:まさか……


 理屈じゃない。

 損得でもない。

 ただ、あの目を見て見過ごすことができなかった。

 衝動というやつだ。人間らしい、矛盾した行動。


 俺は何も言わずに鋼の剣を抜いた。

 その意味を、アリアは正確に理解した。彼女も無言で剣を構える。


「……愚かな奴らだ!」


 奴隷商人が斧を振りかざして襲いかかってきた。

 後のことは、よく覚えていない。

 何人かの仲間を呼ばれた気もするし、アリアが俺の背中を守ってくれていた気もする。

 俺は、ただ夢中で剣を振るった。

 気がつくと、奴隷商人たちは全員地面に倒れていた。

 俺は檻の鍵を剣で叩き壊した。

 中から獣人の少女がおずおずと出てくる。


「……あの」

「もう大丈夫だ。どこか、帰る場所はあるのか?」

「……ない。パパもママも、この人たちに……」


 少女の目から大粒の涙がこぼれた。

 どうする。この子を、どうすればいい。

 俺が困っていると、少女は俺の服の裾を、小さな手できゅっと掴んだ。

 その手のひらから伝わってくる小さな温もり。

 それはなぜか、今まで手に入れたどんな恩寵よりも温かい気がした。


【神託】:あーあ、厄介ごとしちゃった

【神託】:でも、まあ……

【神託】:軍神マルス:くだらん感傷だ。だが、悪くはない。

【神託】:美の女神ヴィーナス:……いいじゃない。ロリゲット、おめでとう。【恩寵:5000祈力】


 神託は賛否両論だった。

 でも、どうでもよかった。

 俺は目の前の小さな命を守ってしまった。

 その事実だけが、そこにあった。

 第8話の更新です。

 新しい仲間(?)との出会いでした。

 獣人の少女、ポポロです。(今、名前を決めました)

 

 今回は、ケンタが初めて、損得勘定を抜きにして、自分の意志で動いた回かもしれません。

 いつもは神託コメントの顔色をうかがってばかりの彼ですが、やっぱり根っこには、見過ごせない優しさがある……と、作者としては思いたいです。

 

 もちろん、神様たちの反応はバラバラ。

 「面倒ごとだ」と言う神もいれば、「悪くない」と評価する神もいる。ヴィーナス様は相変わらずですね(笑)。

 

 こうして、ケンタのパーティは三人になりました。

 無口な女騎士と、幼い獣人の少女。

 ますます賑やか(で、大変)になりそうです。

 

 お読みいただき、ありがとうございます。

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