第62話『それぞれの答え』
俺が拓也とオーディンの依頼を独断で引き受けた後、改めて仲間たちに向き直った。
「……というわけだ。俺はやるつもりだ。
この新しい世界の『調整役』の手伝いをな。
だが、これは俺が勝手に決めたことだ。
お前たちを無理やり付き合わせるつもりはない」
そうだ。
魔王は、いなくなった。
神々の理不尽な干渉もこれからは拓也が防いでくれるだろう。
もう世界は、以前のような分かりやすい脅威に晒されてはいない。
俺たちが命がけで旅を続ける義務は、もうないのだ。
「だから、ここからは自由だ。
故郷に帰るのもいい。
新しい街で平穏に暮らすのもいい。
お前たちがどんな道を選んでも、俺は文句は言わない」
俺はそう言って、三人の答えを待った。
少しの沈黙。
最初に口を開いたのはレオンだった。
彼はやれやれと肩をすくめて、言った。
「……ケンタ殿。あなたは、どうやら我々のことを見くびっているようですな」
「え……?」
「世界の法則が書き換わったのですよ? 神々が地上に限定的に干渉してくる? システムのバグで未知の魔物が生まれている? ……こんな知的好奇心を掻き立てられる状況で、私だけが旅を降りるとでも思いましたか?」
彼の眼鏡の奥の目が、キラリと少年のような輝きを放っていた。
「私の生涯をかけた研究テーマが目の前に転がっているのです。それに初代調整役と直接対話できる唯一のパーティ。こんな最高の研究環境、手放すわけがないでしょう。
―――私は行きますよ。この未知の法則を探求するためにね」
彼は笑って言った。
次に、ポポロが俺の服の裾をきゅっと握った。
「ポポロも行く!」
「ポポロ……」
「だって、魔王様も神様も、みんなケンタお兄ちゃんと仲直りしたんでしょ? だったら、これからもっと仲良くなれるかもしれない! 神様と人間が一緒に笑って暮らせる世界になったら、すっごく素敵だと思う!」
そのあまりにも純粋でまっすぐな願い。
俺は胸が熱くなるのを感じた。
彼女は、この新しい世界に争いではなく調和の可能性を見ているのだ。
俺は、その小さな手を優しく握りしめた。
最後に、アリアが一歩前に進み出た。
彼女はオーディンと、そして拓也の半透明な姿を交互に見つめた。
そして、きっぱりとした声で宣言した。
「……私の騎士としての誓いは、もはや特定の国や王に仕えるものではない」
彼女は胸に手を当て、まっすぐに前を見据えた。
「私の剣は、この新しく、そしてまだひどく脆い世界の『秩序』そのものを守るためにある。
神々の理不尽な悪意や世界の歪みから人々を守る。
それこそが私の新しい騎士道だ」
彼女もまた、自分の新しい戦う理由を見つけ出していた。
もう彼女の顔に迷いはなかった。
レオンは、知の探求のために。
ポポロは、世界の調和のために。
アリアは、秩序を守るために。
そして、俺は。
`―――頼む、ケンタ。もう誰も、俺や、お前のようなピエロにさせないでくれ`
頭の中に、拓也の切実な声が響いた。
「……ああ。任せとけよ、先輩」
俺は空に向かって静かに頷いた。
俺たちの新しい旅の目的が、今一つになった。
それは誰かに強制されたものではない。
俺たち一人一人が、自分の意志で選び取った未来だった。
第62話を更新しました。
ケンタからの、問いかけ。
そして、仲間たちの、それぞれの、答え。
もう、彼らは、誰かに言われて、旅をするのではありません。
レオンは「知の探求」。
ポポロは「世界の調和」。
アリアは「新しい秩序」。
それぞれが、この新しい世界で、自分の、新しい「役割」と「目的」を、見つけ出しました。
彼らは、本当に、強く、なりましたね。
そして、ケンタの、新しい目的。
それは、拓也の願いを、引き継ぐこと。
パーティの、新しい旅立ちの、準備は、整いました。
物語は、残すところ、あと2話。
お読みいただき、ありがとうございました。




