第57話『光』
俺は目を閉じた。
暴走する魔王の絶望の魔力が、津波のように俺に迫ってくる。
死ぬのだろうか。
まあ、それも悪くないか。
俺が、あんたの絶望をすべて受け止められるなら。
そう思った、瞬間だった。
「―――させるかぁっ!!」
俺の後ろからアリアの絶叫が響いた。
彼女は俺と魔王の間に割り込むように飛び込んできた。
その手には盾。
俺が彼女に贈った、あの盾を構えている。
「ケンタ殿! 貴様が一人で全てを背負うことなど、私が許さん!」
「アリア!?」
「我々は仲間だろう! だったらその絶望も四人で、いや五人で分け合うのが道理だろうが!」
彼女の隣にレオンが立つ。
「ええ、その通りですとも。こんな世界の真理がひっくり返るような最高の研究対象を、みすみす見逃すわけにはいきませんからね!」
ポポロもグリを抱きしめながら、小さな体で俺の前に立ちはだかった。
「お兄ちゃんを、一人にはしない!」
仲間たちが俺を守ろうとしている。
俺が一人で受け止めようとした絶望を、一緒に受け止めようとしてくれている。
ああ、そうか。
俺はまた、間違えるところだったのか。
一人で全部抱え込もうとして。
俺はもう、一人じゃないんだった。
その時。
暴走する魔王の魔力が、俺たちに到達した。
世界が終わる。
そう、覚悟した。
だが、その絶望の奔流は、俺たちに届く寸前で別の力と衝突した。
金色の光。
天から降り注いだ、無数の【祝福】の光。
【神託】:……行かせられるかよ
【神託】:こんな後味の悪いエンディングで、終われるか!
【神託】:俺たちの物語を、勝手に終わらせるな、ケンタ!
【神託】:軍神マルス:今こそ示せ! 神々の意地を!
【神託】:知恵の神オーディン:ああ。我々もまた、この物語の当事者だ!
【神託】:美の女神ヴィーナス:愛を、見せなさい!
神々が俺たちに力を送ってきていた。
それはもはや「娯楽」のためではない。
彼ら自身の意志。
この物語をバッドエンドで終わらせないという、彼らの魂の叫び。
魔王の、底なしの絶望。
俺たち人間の、ちっぽけな絆。
そして、神々の身勝手だが強大な意志。
三つの全く異なる力が玉座の間で衝突し、混じり合い、そして暴走した。
世界が、真っ白な光に包まれた。
音も匂いも、何もかもが消えていく。
意識が遠のいていく中で、俺は最後に聞いた気がした。
佐藤拓也の、どこか安らかな声を。
「……ああ。これが、俺が見たかった、光か……」
第57話を更新しました。
ここから、新しいエンディングへと向かう、エピローグの始まりです。
ケンタの自己犠牲を、仲間たちが、そして、神々が、許しませんでした。
絶望、絆、そして神々の意志。
三つの力が衝突し、世界は、光に包まれます。
前のルートでは、この光は「終わり」を意味していましたが、今回は、違います。
これは、「終わり」ではなく、「始まり」の光。
「強制的な再構築」が、今、始まろうとしています。
そして、魔王(佐藤拓也)の、最後の言葉。
彼の絶望は、この光の中で、どうなっていくのでしょうか。
物語の、新しい結末。
ぜひ、お楽しみください。
お読みいただき、ありがとうございました。




