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【二作目・完結済み】異世界冒険をライブ配信中! 『神々(視聴者)』からの『恩寵(投げ銭)』でスキルを買って魔王を倒します!  作者: 立花大二
終章:配信の終わり

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第54話『神々の声』

 魔王――佐藤拓也が玉座から立ち上がった。

 その瞬間、彼の背後から溢れ出したどす黒い魔力が凝縮し、形を成していく。

 漆黒の鎧。歪んだ角。そして絶望そのものを鍛えて作ったかのような、巨大な魔剣。

 それはもはや人間の姿ではなかった。

 彼が永い年月をかけてその身に溜め込んできた、憎悪と絶望の化身。


「さあ、始めようか。勇者ケンタ」


 その声はもはや彼のものではなかった。

 複数の人間の声が不協和音のように混じり合った、禍々しい響き。


「お前の、最後の仕事を」


 彼は魔剣をゆっくりとこちらに向けた。

 圧倒的なプレッシャー。

 肌がびりびりと痺れる。

 これが魔王。

 これが一人の人間が絶望の果てにたどり着いた、力。


 俺は剣を抜き、構えた。

 階段の下で、仲間たちが息をのむのが分かる。

 アリアが叫んだ。


「ケンタ! 我々も加勢する!」

「来るな!」


 俺は振り返らずに叫び返した。


「これは、俺とこいつの問題だ!」


 これは勇者と魔王の戦いだ。

 俺と同じ世界から来た、俺の先輩の最後の戦いだ。

 誰にも邪魔はさせない。


 その時、俺の視界の端で神託のウィンドウが、かつてないほどの凄まじい勢いで流れ始めた。


【天覧者数:50万……100万……測定不能!】

【神託】:きたあああああああああああああ!

【神託】:最終決戦!

【神託】:伝説の瞬間を見に来ました

【神託】:全財産、【祝福】にぶっこむ!

【神託】:がんばれケンタ! 魔王を倒せ!

【神託】:お前が俺たちの最後の希望だ!


 熱狂。

 興奮。

 期待。

 ありとあらゆる神々のポジティブな感情が奔流となって、俺に流れ込んでくる。

 それは今までとは比べ物にならないほどの巨大な力だった。


`【祝福】が限界を超えました。`

`システムが一時的にあなたのリミッターを解除します。`

`スキル【勇者の覇気】が自動で発動しました。`


 俺の体から金色のオーラが立ち上る。

 力がみなぎってくる。

 ハヤトとの戦いで受けた傷が癒えていく。

 疲労が消えていく。

 これが神々の全力の応援。

 彼らは、この最終決戦という最高のエンターテインメントに熱狂しているのだ。


 魔王が俺を見て、ふんと鼻を鳴らした。


「……そうだ。そうでなくてはな。神々の寵愛を一身に受けた輝かしい勇者。それこそが、俺を殺すにふさわしい」


 彼は少しも怯んでいなかった。

 むしろ俺が強くなればなるほど、嬉しそうにすら見えた。

 彼は本気で俺に殺されたいのだ。


【神託】:いけええええええ!

【神託】:倒せ! 倒せ! 倒せ!

【神託】:伝説になれ、ケンタ!

【神託】:FINISH HIM!


 神々の声が俺の頭の中に直接響いてくる。

 彼らは最高のクライマックスを求めている。

 勇者が魔王を光の剣で打ち倒す。

 そんな使い古された英雄譚を。


 ああ、そうか。

 あんたたちは、まだ分かってないんだな。

 初代勇者がなぜ魔王になったのか。

 あんたたちのその無責任な熱狂が、彼をここまで追い詰めたっていうのに。


 俺は目の前の絶望の化身と化した魔王を見た。

 そして次に、俺の視界の端で狂ったように流れ続ける光の文字を見た。

 神々に向かって、俺は初めて自分の意志ではっきりと告げた。

 それはスキルでも魔法でもない、ただの俺自身の心の叫び。


「―――黙って、見ててくれ」


 その瞬間。

 あれだけ騒がしかった神託のウィンドウが、ぴたりと静まり返った。

 まるで時間が止まったかのように。

 俺は、もうあんたたちの声は聞かない。

 俺は、俺の戦いをする。

 第54話を更新しました。

 最終決戦の、火蓋が切られました。

 そして、神々の、最後の熱狂。

 彼らは、このクライマックスを、最高の娯楽として、消費しようとします。

 

 その無自覚な残酷さが、皮肉にも、ケンタの力を、極限まで高めてしまう。

 

 しかし、ケンタは、もう、彼らの声には、従いません。

 

 「黙って、見ててくれ」

 

 それは、操り人形だった彼が、初めて、操っていた者たちに、突きつけた、反逆の言葉。

 配信者が、視聴者に、「黙れ」と言った瞬間です。

 

 神々の加護を、自らの意志で、振り払ったケンタ。

 彼は、ここから、本当の意味で、たった一人で、魔王と向き合うことになります。

 

 次回、ついに、最後の剣が、交えられます。

 

 お読みいただき、ありがとうございました。

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