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【二作目・完結済み】異世界冒険をライブ配信中! 『神々(視聴者)』からの『恩寵(投げ銭)』でスキルを買って魔王を倒します!  作者: 立花大二
第二部:世界の亀裂

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第50話『泥だらけの拳』

 魔王城へと続く荒野。

 俺とハヤトは剣を構え、睨み合っていた。

 乾いた風が二人の間を吹き抜けていく。仲間たちは少し離れた場所で、固唾をのんで俺たちの戦いを見守っている。


【神託】:ついに始まった……勇者対決!

【神託】:どっちが勝つんだ!?

【神託】:性能ならハヤトが上だろ……。ケンタ、大丈夫か?


 神々の言う通り、純粋な戦闘能力スペックで言えば、おそらくハヤトの方が上だ。

 彼はこの世界を「ゲーム」として、誰よりも効率的に自分を強化してきたのだから。

 だが、俺は負ける気がしなかった。

 この戦いは、強さだけの戦いじゃない。


 先に動いたのはハヤトだった。

 予備動作のない、最短距離の踏み込み。

 以前、水鏡で見たあの人間離れした動きだ。

 彼の剣が俺の心臓を正確に狙ってくる。


 速い。

 だが、今の俺には見える。

 俺は彼の剣を、自分の剣の腹で受け流した。

 キィン、と甲高い金属音。

 ハヤトの目に、初めてわずかな驚きが浮かんだ。


「……ほう。今のを防ぐか」

「お前の動きは、もう知ってるんでね」


 ハヤトの動きは確かに速くて正確だ。

 だが、それはあくまで「最適化」された動き。

 そこには感情の揺らぎも迷いも、アドリブもない。

 一度見てしまえば、そのパターンは読める。


 今度は俺から仕掛けた。

 スキル【身体強化】を発動させ、渾身の力で斬りかかる。

 ハヤトはそれを最小限の動きで、ひらり、ひらりと、かわしていく。

 俺の剣は彼の服をかすりもしない。


「無駄な動きだ」


 ハヤトは俺の攻撃の合間を縫って、的確にカウンターを叩き込んでくる。

 俺の腕に、足に、浅いが確実な傷が増えていく。

 じりじりと、俺は追い詰められていた。


「どうした、ケンタ。お前の戦いはそんなものか。仲間との絆とやらで得た力は、その程度か」


 彼は挑発するように言った。


【神託】:くっ……やっぱりハヤトの方が一枚上手か!

【神託】:ケンタ、このままじゃジリ貧だぞ!

【神託】:何か、何か手はないのか!


 手、か。

 ああ、あるさ。

 とっておきの、手がな。


 俺は大きく息を吸い込んだ。

 そして次の瞬間、俺は手にしていた剣を地面に放り投げた。


「なっ……!?」


 ハヤトの完璧なポーカーフェイスが、初めて大きく崩れた。

 武器を、捨てる?

 彼の「攻略データ」には、そんなありえない選択肢は存在しなかったのだ。


「……何をする気だ」

「お前を倒すのさ。俺のやり方でな」


 俺は無防備なままハヤトに向かって突進した。

 彼の剣が俺の肩を深く切り裂く。

 激痛が走る。

 だが、俺は止まらない。

 その痛みすらも利用して、彼の懐に潜り込んだ。


 そして、俺は泥だらけの拳を握りしめた。

 スキルも魔法も、神々の加護も何もない。

 ただの鈴木健太としての、生身の不格好な一撃。

 それをハヤトの整った顔面に、叩き込んだ。


 ゴッ、と鈍い音がした。

 ハヤトの体がくの字に折れ曲がり、地面に倒れる。

 俺も肩の傷のせいでバランスを崩し、彼の上に倒れ込んだ。


 そこからは、もうめちゃくちゃだった。

 俺たちは剣も何もかも忘れて、ただ殴り合った。

 馬乗りになり、泥にまみれ、互いの息が切れ、膝が笑うまで。

 それはもはや「決闘」などという綺麗なものではなかった。

 ただの子供の喧嘩だった。


 お前は間違っている。

 いや、お前こそ。

 そんな言葉にならない思いを互いの拳に込めて。

 俺たちは、ただひたすらに殴り合った。

 空の上で神々が呆然と、俺たちのこの泥臭い戦いを、見ているのが分かった。

 第50話を更新しました。

 ケンタ対ハヤト。

 ついに、火蓋が切られました。

 

 純粋な剣の腕では、やはりハヤトに分があるようです。

 追い詰められたケンタが取った行動は……まさかの、武器を捨てること。

 

 これは、アリアとの初対決の時にも見せた、彼の「型破り」な戦い方ですね。

 ハヤトのような、データと効率を重んじる相手には、こういう「予測不能」な行動が、一番効くのかもしれません。

 

 そして、スキルも魔法もかなぐり捨てた、泥だらけの殴り合い。

 勇者同士の戦いとは思えない、なんとも人間臭い決闘になりました。

 

 彼らの戦いは、ただの憎しみ合いではありません。

 互いの「正しさ」を、不器用にぶつけ合っているだけなのです。

 

 次回、この泥仕合に、ついに決着がつきます。

 最後に立っているのは、どちらの勇者なのか。

 

 お読みいただき、ありがとうございました。

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