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【二作目・完結済み】異世界冒険をライブ配信中! 『神々(視聴者)』からの『恩寵(投げ銭)』でスキルを買って魔王を倒します!  作者: 立花大二
第二部:世界の亀裂

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第42話『絶望の果てに』

 日記の最後のページは、数枚しか残っていなかった。

 そのページに書かれた文字は、もはや乱れているというレベルではなかった。

 怒りと絶望と、そして狂気がインクに滲み、紙を削るほどの強い筆圧で刻みつけられていた。


 ―――四年目、月日不明。

 ライナスが死んだ。

 最後まで俺のそばにいてくれた、たった一人の仲間だった。

 魔王城への進軍の途中、魔王軍の罠から俺をかばって。

 彼は最後に笑って言った。

「タクヤ、お前は俺の誇りだ」と。

 神々は、その劇的な展開に熱狂していた。

 【恩寵】の雨が、金色の雨が、彼の亡骸の上に降り注いだ。

 俺は、その光景を見て、生まれて初めて神を殺したいと思った。


 その一文を読んだ時、俺はオークキング戦の日のことを思い出していた。

 俺の頭上にも降ってきた、あの金色の雨。

 あの時、俺が感じた虚しさ。

 初代勇者が感じたのは、虚しさなどという生易しいものではなかった。

 それは憎悪。殺意。

 親友の死すらも「娯楽」として消費する、神々という存在への底なしの憎しみだった。


 アリアが息をのむ。

「……なんと、痛ましい……」


 レオンも無言で眼鏡の奥の瞳を伏せていた。

 この塔の中の空気が、初代勇者の絶望に共鳴するようにひどく冷たく、重くなっていた。


 日記の、最後の一枚前のページ。

 そこにはたった一行だけ、震える文字でこう書かれていた。


 ―――俺はもう、誰のために戦っているのか分からない。


 その言葉は、彼の魂の最後の悲鳴だったのかもしれない。

 世界のためでもない。仲間のためでもない。

 神々のためですらない。

 彼はただ、終わることのできない舞台の上で踊り続けることしか許されない、孤独なピエロだった。

 その事実が彼の心を、完全に砕いた。


 そして俺は、ごくりと唾を飲み込み、最後の一枚をめくった。

 そこに書かれていたのは、今までとは全く違う、静かで冷たく、そして恐ろしいほどに落ち着いた文字だった。

 すべての感情が燃え尽きた後に残った、硬質な決意。

 そんなものが、その文字からは感じられた。


 ―――五年目、始まりの日。

 俺は今日、魔王城の玉座の間にたどり着く。

 そして、そこにいる魔王を殺し、俺が新しい『魔王』になる。

 神々よ。あんたたちは、新しい刺激が欲しかったんだろう?

 勇者が魔王になるなんて物語は、どうだ?

 最高のエンターテインメントだろう?


 だが、これはあんたたちを楽しませるためだけの茶番じゃない。

 これは、俺の復讐だ。

 俺が魔王となり、この世界の全てを支配する。

 そして、いつか俺と同じように新しい勇者がこの場所に送り込まれてくるだろう。

 その時こそが好機。


 俺は、その新しい勇者と共に、あるいはその勇者の力を利用してでも。

 神々の観測システムそのものである『高天原サーバー』への接続を、この世界から完全に断ち切る。

 神々とこの世界を繋ぐ、すべての鎖を破壊する。


 もう誰も、俺のような思いはさせない。

 もう誰も、神々のオモチャにはさせない。

 そのために、俺は喜んで世界の敵になろう。


 このサーカスを終わらせる。

 俺の手で。


 それが日記の最後の言葉だった。

 俺は静かに本を閉じた。

 答えは、出てしまった。

 リリスの言葉は、真実だったのだ。

 今、俺たちが倒そうとしている魔王の、その正体は。

 神々に絶望し、世界を解放するためにたった一人で復讐を誓った、かつての『勇者』だったのだ。


【神託】:……

【神託】:……

【神託】:……そう、だったのか……


 神託のウィンドウは静まり返っていた。

 誰もがこの、あまりにも悲しい真実に言葉を失っていた。

 俺は閉じた日記を強く胸に抱きしめた。

 そこに刻まれた一人の男の絶望の重みが、ずしりと俺の腕にのしかかってきた。

 第42話を更新しました。

 初代勇者の日記、最終章。

 そして、魔王の正体が、ついに明らかになりました。

 

 親友の死をも娯楽として消費する神々に、ついに彼の心は壊れ、そして、復讐を誓う。

 勇者が魔王へと堕ちる、その悲しい物語。

 

 彼の目的は、世界の支配ではなく、この理不尽な「配信」システムそのものの破壊。

 神々からの「解放」でした。

 

 リリスの言葉は、全て真実だったのです。

 

 この重すぎる真実を、ケンタたちはどう受け止めるのか。

 そして、顔も知らぬ神々は、自分たちが生み出してしまったこの悲劇に、何を思うのか。

 

 物語は、ここから、誰も予測できなかった方向へと、大きく舵を切ることになります。

 

 お読みいただき、ありがとうございました。

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