表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【二作目・完結済み】異世界冒険をライブ配信中! 『神々(視聴者)』からの『恩寵(投げ銭)』でスキルを買って魔王を倒します!  作者: 立花大二
第二部:世界の亀裂

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/64

第34話『サーカスのピエロ』

「ケンタ殿! 行くな!」


 アリアの制止の声が背後から聞こえる。

 だが、俺は足を止めなかった。

 リリスが作り出した場違いに優雅なティーテーブル。その前に置かれた椅子に、俺はゆっくりと腰を下ろした。

 リリスは満足そうに微笑んでいる。


「ふふ、勇気があるのね、勇者様。それとも、ただの愚か者かしら?」

「……何の真似だ」

「あら、怖い顔。ただ、少しお話がしたかっただけですわ。敵を知り己を知れば百戦危うからず、と申しますでしょう?」


 彼女は俺の前に紅茶のカップを置いた。透き通った琥珀色の液体から、ふわりと花の香りが立ち上る。見たところ毒が入っているようには見えない。だが、油断はできなかった。


【神託】:ケンタ、バカ! 何考えてんだ!

【神託】:罠に決まってるだろ!

【神託】:ケンタ行くな!

【神託】:でも、この展開……嫌いじゃないぜ


 神々もこの予測不能な事態に、混乱と興奮が入り混じっているようだった。

 遠巻きにアリアとレオンが、いつでも飛びかかれる体勢でこちらを警戒しているのが分かる。ポポロはグリを抱きしめて、不安そうに俺たちを見ていた。


「それで、話とは何だ」

「せっかちですわね。……では、まずはこちらの映像をご覧くださいな」


 リリスがテーブルの上で、すっと指を滑らせる。

 するとテーブルの表面が黒い鏡のようになり、そこに映像が浮かび上がった。

 それは、どこかの城下町。人々が平和に暮らしている。

 次の瞬間、その平和な街に巨大なゴーレムが現れ、破壊の限りを尽くし始めた。人々の悲鳴が響き渡る。

 そこに、一人の勇者が現れた。

 黒髪の青年。ハヤトだ。

 彼は例の如く無駄のない動きでゴーレムの核を破壊し、あっという間に街を救った。人々が彼を「英雄だ」と称える。


「……ハヤトの活躍か。わざわざ俺に見せて、どういうつもりだ」

「ええ。素晴らしいご活躍ですわよね。まさに物語の英雄」


 リリスはくすくすと笑った。

 その笑い声には、どこか憐れむような響きがあった。


「でもね、勇者様。おかしいとは、思いませんこと?」

「何がだ」

「あのゴーレム。あれは、わたくしが、あの街に『配置』したものですの」


 ……は?


「配置? どういう意味だ」

「言葉通りの意味ですわ。あのゴーレムはもともと魔王様の城で眠っていたもの。わたくしがわざわざあの街の近くまで転移させ、暴れさせた。なぜだか、お分かり?」


 分からない。

 俺が黙っていると、リリスはうっとりとした表情で続けた。


「もちろん、勇者ハヤト様に活躍していただくためですわ」

「……!」

「彼、最近少しマンネリ気味でしたでしょう? 魔王様も神々も、少し退屈していらっしゃった。だからわたくしが、ちょっとした『イベント』を用意してさしあげたのです。おかげで彼の配信もずいぶんと盛り上がったようで、何よりですわ」


 頭を鈍器で殴られたような衝撃だった。

 魔王軍が、勇者を活躍させるためにイベントを用意する?

 そんな馬鹿な話があるか。敵対しているはずだろう。


「……信じられるか。そんな戯言」

「あら、信じられない? では、これはいかがかしら」


 リリスは再びテーブルを操作する。

 今度映し出されたのは、俺の映像だった。

 泥まみれになってオークと格闘している無様な俺。

 グリフォンの雛を前に呆然と立ち尽くす愚かな俺。

 神々の【祝福】に歓喜し、【呪詛】に絶望する滑稽な俺。


「あなたもそう。あなたの冒険も、すべて見させていただいてますわ。あなたの喜びも、悲しみも、苦悩も……すべてが本当に素晴らしいエンターテイン-ment。神々が夢中になるのも分かりますわ」


 リリスは心底楽しそうに言った。


「あなたもハヤト様も、同じ。あなた方はこの世界の主役。英雄ですわ。

 ――そして同時に、あなた方は神々の娯楽のために踊る、哀れなサーカスのピエロでもあるのよ」


 ピエロ。

 その言葉が、俺の心臓に冷たく突き刺さった。

 管理人イリスに言われた言葉が脳裏に蘇る。

 ――あなたの人生は、今日からエンターテインメントになりました。


 俺たちが必死に生き、戦い、悩んでいるこの冒険は、すべて壮大な「やらせ」だというのか?

 魔王軍すらも、この茶番劇を盛り上げるための「役者」だというのか?


「……ふざ、けるな」


 俺は震える声で、それだけを言った。

 目の前の女の美しい顔が、悪魔のように見えた。

 第34話を更新しました。

 魔王軍幹部リリスとの、奇妙なティーパーティー。

 彼女の口から語られたのは、衝撃的な事実でした。

 

 魔王軍は、ただの敵ではない。

 彼らもまた、この「配信」という名の壮大な茶番を盛り上げるための、仕掛けプロモーターだった……?

 

 ハヤトの英雄譚も、ケンタの苦悩も、全ては彼らの手のひらの上で踊らされているだけなのか。

 

 「サーカスのピエロ」

 

 この言葉は、ケンタが今まで薄々感じていた、この世界の違和感、理不尽さの正体を、的確に言い表していますね。

 

 物語の核心に触れる、大きな謎が提示されました。

 リリスの言葉は、真実なのか。それとも、ケンタを惑わすための嘘なのか。

 

 次回、ケンタの心が、大きく揺さぶられます。

 お読みいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ