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【二作目・完結済み】異世界冒険をライブ配信中! 『神々(視聴者)』からの『恩寵(投げ銭)』でスキルを買って魔王を倒します!  作者: 立花大二
第二部:世界の亀裂

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33/64

第33話『魔王の幹部』

 『嘆きの霧の森』での壮絶な、しかしどこか奇妙な冒険は、大成功に終わった。

 俺たちは神々(視聴者)との新しい形の強い絆を、確かに感じていた。

 そして俺自身も、ただ攻略を目指すだけではない「配信者」としての確固たるスタイルを見つけ出すことができた。

 仲間たちの知らなかった過去や心の傷に触れたことで、俺たちのパーティの結束は以前とは比べ物にならないほど強く、そして温かいものになっていた。


「―――さあ皆の者、刮目せよ! 今宵は待ちに待ったお祭り!

 勇者ケンタの、有り金全部溶かすまで終われない、地獄のガチャ配信だーっ!!」


 霧の森を抜けて数日後。野営の焚き火の前で、俺は高らかにそう宣言していた。

 霧の森の攻略で、俺の所持祈力は過去最高の五十万祈力にまで膨れ上がっていた。

 これをどう使うか。神託欄でアンケートを取ったところ、「ガチャに全ツッパしろ」という意見が圧倒的多数を占めたのだ。


【神託】:きたああああああああああ!

【神託】:よっ! 待ってました!

【神託】:50連! いや、100連いけるぞ!


 スキルショップの隅にある「ガチャ」の項目。

 一回五千祈力。大当たりは伝説級の武具や唯一無二のユニークスキル。ハズレはただの石ころ。

 まさに天国と地獄。


「ケンタ殿……。本当にやるのか? 五十万祈力もあれば、我々全員の最高級の装備が揃えられるのだぞ……」


 アリアが心底信じられないという顔で俺を見る。


「まあまあアリアさん。これも神々との重要なコミュニケーションなのですよ。いわゆる祭事ですな」


 レオンはなぜか分析的な目で、俺のガチャを見守っている。


「がちゃ? なになに? お祭り?」


 ポポロは意味も分からずはしゃいでいた。


「よし、まずは景気づけの10連! 行くぞォ!」


 俺はウィンドウの「10回引く」ボタンをタップした。

 目の前に十個の光の玉が現れる。

 結果は……!

 石ころ、石ころ、ただの草、石ころ、ちょっと綺麗な石ころ……。

 爆死だった。


【神託】:wwwwwwwwwwww

【神託】:安定の爆死芸、あざーす!

【神託】:5万祈力が一瞬でゴミになったなw


「……まだだ! まだ慌てるような時間じゃない!」


 俺はヤケクソでさらに10連、20連と回していく。

 だが、結果は芳しくない。

 たまにそこそこの性能のポーションや短剣が出るくらい。

 あっという間に所持祈力は半分以下になった。


「……ケンタ殿」


 アリアの視線が痛い。

 まずい。このままでは終われない。


「……こうなったら願掛けだ! ポポロ!」

「はーい!」

「お前のその幸運を、俺に分けてくれ!」


 俺はポポロに最後の10連のボタンをタップさせた。

 ポポロが小さな指でぽちっと押す。

 その瞬間。

 十個の光の玉のうち一つが、今までとは比べ物にならない虹色の輝きを放った!


【神託】:!!!!!!

【神託】:虹! 虹だ!

【神託】:きたか!?


 光が収まり、そこに現れたのは一つの小さな首飾りだった。

 月の光を閉じ込めたような美しいペンダント。

 レオンが鑑定魔法を使う。


「こ、これは……!

 装備した者の精神状態を安定させ、幻惑や精神干渉系の魔法を完全に無効化する伝説級の装飾品……!

『月の涙』……!」


 大当たりだ!

 最後の最後で、とんでもないレアアイテムを引き当てた!


【神託】:うおおおおおおおおおおお!

【神託】:神引き!

【神託】:ポポロちゃん、マジ女神!


 俺はポポロを思い切り抱き上げた。


「やったなポポロ! お前のおかげだ!」

「えへへー!」


 アリアも信じられないという顔で、そのペンダントを見つめている。

 俺は、その『月の涙』をポポロの首にかけてやった。一番幻覚に弱そうだったからな。


 旅は順風満帆だった。

 こんな風に仲間たちと一喜一憂しながら、バカみたいなことで盛り上がる。

 戦闘だけが冒険じゃない。

 この一つ一つの瞬間こそが、俺たちの最高の配信コンテンツなのだ。

 このまま王都までこの調子で行けるだろう。

 誰もが、そう楽観していた。

 あの女と出会うまでは。


 そんな順風満帆な旅の途中。

 静かな湖のほとりで、俺たちはその女と出会った。

 夕暮れの湖畔に、一人ぽつんと佇む女がいた。

 腰まで届く銀色の長い髪。血のように赤いドレス。その肌はまるで陶器のように白く、人間離れした美しさをたたえていた。

 だが、彼女から放たれる空気は明らかに普通ではなかった。

 空気が歪んでいる。彼女の周りだけ世界の法則がねじ曲がっているような、圧倒的な違和感。

 それは魔力と呼ぶにはあまりにも禍々しい、強大な気配だった。


【神託】:……おい、なんだ、あいつ

【神託】:やばいのがいるぞ

【神託】:逃げろケンタ! アレはダメなやつだ!


 神々が初めて本気の警告を発する。

 俺も本能的に危険を察知し、剣の柄に手をかけた。アリアとレオンも臨戦態勢に入る。

 女がゆっくりとこちらを振り向いた。

 その瞳は夜闇を溶かし込んだような、深い紫色をしていた。

 そして彼女は、くすりと妖艶に微笑んだ。


「あら、お客様かしら。こんな辺鄙な場所に、ようこそ」


 その声は鈴を転がすように美しかったが、聞いているだけで背筋が凍るような冷たさをはらんでいた。


「……貴様、何者だ」


 アリアが剣先を向けながら問い詰める。

 女は、その剣先をまるで意に介さない様子で眺めた。


「自己紹介がまだでしたわね。わたくしはリリスと申します。偉大なる魔王様の忠実なる僕……いわゆる魔王軍幹部、というやつですわ」


 魔王軍幹部。

 その言葉に俺たちは息をのんだ。

 今まで戦ってきた魔物たちとは格が違う。本物の、敵。


「……勇者一行、とお見受けしました。わざわざお出迎えにあがりましたのよ」

「出迎えだと……?」

「ええ。ですが、ご安心なさって。今ここであなた方と事を構えるつもりはありませんわ」


 リリスはそう言うと、どこからともなく小さなテーブルと二人分の椅子を取り出した。

 そして優雅な手つきで、ティーポットから紅茶をカップに注ぎ始める。

 ふわりと紅茶のいい香りが、戦場にあるまじき場違いさで漂ってきた。


「せっかくの出会いですもの。少し、お茶でもいかがかしら? 勇者ケンタ様」


 彼女は俺の名前を知っていた。

 そして、俺だけをそのティーパーティーに誘ってきた。

 毒でも入っているに決まっている。

 これは罠だ。

 だが俺は、なぜか彼女の誘いを断ることができなかった。

 あの紫色の瞳の奥に、何か確かめなければならないものがあるような気がして。

 俺は仲間たちの制止を振り切り、リリスの待つテーブルへと一人、歩き出した。

 第33話を更新しました。

 自分のスタイルを見つけたケンタ。パーティの雰囲気も良く、旅は順調そのもの。

 視聴者参加型の企画など、配信者らしい活動も板についてきましたね。

 

 しかし、そんな彼らの前に、ついに「本物」の敵が現れます。

 魔王軍幹部、リリス。

 

 ただ戦うだけではない、不気味で、妖艶で、そして何か秘密を抱えていそうな彼女の存在が、今後の物語の鍵を握っていきます。

 

 いきなり戦闘ではなく、「お茶会」に誘うあたり、彼女の余裕と不気味さが表れていますね。

 

 ケンタは、なぜ彼女の誘いに乗ってしまったのか。

 この奇妙なティーパーティーで、一体何が語られるのか。

 

 物語は、新たな謎とサスペンスをはらんで、展開していきます。

 次回も、どうぞお楽しみに。

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