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【二作目・完結済み】異世界冒険をライブ配信中! 『神々(視聴者)』からの『恩寵(投げ銭)』でスキルを買って魔王を倒します!  作者: 立花大二
第一部:配信者と勇者

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第24話『偽善者』

 神殿での一件から数日が過ぎた。

 俺の【呪詛】状態はまだ解けていない。祈力も依然として大きなマイナスのままだ。相変わらず体は重く、スキルも使えなかった。

 だが、神託欄の雰囲気は明らかに変わっていた。

 俺を直接的に罵倒するような言葉はほとんど消え、代わりに俺たちの今後の動向を静かに見守っているような、そんな空気が流れていた。炎上の嵐は過ぎ去り、今はまだ煙がくすぶっているといったところか。


 俺たちの日常は大きく変わった。

 パーティの活動の中心は、クエストの攻略ではなく「グリフォンの雛の世話」になった。

 俺たちは雛に「グリ」と安直な名前をつけた。名付け親はポポロだ。

 グリはまだ自分では餌を食べられない。レオンが薬草をすりつぶして作った栄養満点の流動食を、スポイトのようなもので俺たちが交代で与えていた。

 最初は俺の手を怖がっていたグリも次第に慣れてきて、今では俺が木箱に近づくと、ピィと小さな声で鳴いてくれるようになった。


「……よしよし。ちゃんと食べるんだぞ」


 俺はグリの小さな嘴に、そっと流動食を垂らしてやる。

 ポポロがその様子を隣で嬉しそうに見ていた。アリアも少し離れた場所から、穏やかな目で見守っている。

 パーティの空気は以前よりもずっと温かいものになっていた。

 皮肉なものだ。俺が功績を焦ってパーティを壊し、その結果として生まれたこの小さな命が、今度は俺たちのパーティを本当の意味で一つにしている。


【神託】:グリ、かわいい

【神託】:育児配信になってて草

【神託】:まあ、たまにはこういうのもいいか

【祝福 +50】

【祝福 +100】


 神々もこの穏やかな日常を、それなりに楽しんでくれているようだった。

 少しずつ、少しずつだが【祝福】が送られ、マイナスだった祈力がほんのわずかずつ返済されていく。

 このままゆっくりと信頼を取り戻していけばいい。

 俺はそう思い始めていた。


 もちろん、すべての神が俺たちを許したわけではなかった。


【神託】:で、いつまでこんな茶番続けるわけ?

【神託】:好感度稼ぎ、見え見えなんだよ

【神託】:自分で殺した親の子供を育てるって、最高の偽善者だな、ケンタ


 偽善者。

 その言葉は、ぐさりと俺の胸に突き刺さった。

 否定できなかった。

 そうかもしれないと、俺自身も心のどこかで思っていたからだ。

 これは俺の自己満足じゃないのか。罪悪感から逃れるための、ただのパフォーマンスじゃないのか。

 本当にこの子のことを考えての行動なのか?


 俺の手がぴたりと止まる。

 そんな俺の葛藤を見透かしたかのように、レオンが声をかけてきた。


「……どうかしましたか、ケンタ殿。手が止まっていますが」

「……なあ、レオン」

 俺は呟くように言った。

「俺は、偽善者なのかな」


 レオンは少し驚いたように目を見開いた。おそらく、俺の視線の先に浮かぶ【神託】を彼なりに推測したのだろう。

 彼は少し考えるそぶりを見せた後、静かに口を開いた。


「偽善ですか。面白いテーマですね」


 彼はいつも通り、どこか学者然とした口調だった。


「ですがケンタ殿。偽善と善行を分ける境界線は、一体どこにあるのでしょう?」

「え……?」

「結果としてこの雛が救われるのであれば、その動機が自己満足であろうと罪悪感の表明であろうと、何か違いがあるのでしょうか。動機などしょせんは本人にしか分からない曖昧なものです。重要なのは、行動とその結果ではありませんかな?」


 レオンは眼鏡の位置をくいっと直した。


「少なくとも私は、こうして雛を助けようと行動しているあなたを偽善者だとは思いませんよ。むしろ、非常に人間らしい興味深い行動だと評価しています」


 彼の言葉は慰めでも同情でもなかった。

 ただ、淡々とした事実の分析。

 だが、その言葉が俺の心の靄を少しだけ晴らしてくれた。


 そうか。

 動機なんてどうでもいいのかもしれない。

 俺が偽善者だろうが自己満足だろうが、どうでもいい。

 ただ、今目の前にあるこの小さな命を救う。

 重要なのはそれだけだ。


「……サンキュ、レオン」


 俺は短く礼を言った。

 そして再び、グリの世話に戻る。

 もう俺の心に迷いはなかった。


【神託】:レオン、言うじゃん

【神託】:確かに、結果が全てだよな

【神託】:……ごめん、偽善者って言ったの、撤回するわ

【祝福 +500】


 俺の覚悟は一部の神々にも届いたようだった。

 偽善者。

 ああ、そうかもしれない。

 でも、それでもよかった。俺は俺のできることをやるだけだ。

 第24話を更新しました。

 今回は、育児パートと、ケンタの心の葛藤を描きました。

 グリと名付けられた雛、かわいいですね。書いている私も癒やされます。

 

 しかし、そんな穏やかな日常にも、心無い【神託】が飛んできます。

 「偽善者」

 これは、ケンタにとって一番痛いところを突く言葉だったでしょう。

 

 そんな彼の迷いを打ち破ったのは、レオンの言葉でした。

 彼の、どこか突き放したような、しかし的確な分析は、今のケンタにとって何よりの救いになったようです。

 レオン、仲間になってくれて本当によかった。

 

 「偽善でも、善は善」

 これは、現実世界でも時々議論になるテーマですよね。

 あなたなら、どう考えますか?

 

 迷いを振り切ったケンタ。

 次回、彼らは、新たな一歩を踏み出します。

 

 お読みいただき、ありがとうございました。

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