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【二作目・完結済み】異世界冒険をライブ配信中! 『神々(視聴者)』からの『恩寵(投げ銭)』でスキルを買って魔王を倒します!  作者: 立花大二
第一部:配信者と勇者

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第16話『三人、初めての依頼』

 オーガとの戦いで俺が負った傷はレオンの治癒魔法のおかげで、数日でなんとか塞がった。

 だが、パーティの空気は傷口のように膿んだままだった。

 アリアは必要最低限のことしか話さない。俺の無謀な行動が彼女の騎士としてのプライドを深く傷つけたのだろう。レオンはあからさまに俺を避けている。彼にとって俺はもはや、合理的な判断のできない危険人物にしか見えていないのかもしれない。

 ポポロだけが変わらず俺のそばにいてくれたが、その気遣いが逆に俺の胸を締め付けた。


 そんな最悪の雰囲気の中、俺たちは街のギルドで一つの依頼を受けることにした。


『依頼:隣村までの薬草商人の護衛(Eランク)』


 今の俺たちには分相応、いや、それ以下の簡単な依頼だった。

 俺が独断でグリフォン討伐のような高難易度の依頼に手を出すのを、レオンが暗に牽制したのだろう。

 俺は何も言わず、その依頼書を受け取った。

 依頼主は人の良さそうな小柄な老夫婦だった。

 荷馬車いっぱいに薬草を積んでいる。


「おお、あなた方が護衛をしてくださる冒険者様ですか。どうぞ、よしなに」


 老人はにこにこと俺たちに頭を下げた。

 その屈託のない笑顔が、今の俺にはひどく眩しく見えた。


 旅は静かに始まった。

 荷馬車のゆっくりとした速度に合わせて、俺たちは黙々と街道を歩く。

 俺は自分の犯した失敗の重さに押しつぶされそうだった。

 どうすればアリアとレオンの信頼を取り戻せるのか。

 その答えが見つからないまま、ただ時間が過ぎていく。


【神託】:まだギスギスしてんなぁ

【神託】:ケンタ、元気出せよ。失敗は誰にでもあるって

【神託】:いや、今回はさすがに擁護できん


 神々の声もどこか遠くに聞こえた。

 そんな俺の様子を見ていたのだろう。

 隣を歩いていたポポロが、俺の袖をくいっと引いた。


「……ケンタお兄ちゃん。元気、ないね」

「……ああ。すまないな、心配かけて」

「ううん。……ポポロね、お兄ちゃんが生きててくれて、よかったって思ってるよ」


 そのあまりにも純粋な言葉に、俺は胸を突かれた。

 そうだ。

 俺は死んでいたかもしれないのだ。

 生きて、ここにいる。

 それだけで十分幸せなことじゃないか。

 俺は、何を焦っていたんだろう。


 その時、レオンが俺のもう片方の隣に並んだ。


「……ケンタ殿。一つ、よろしいかな」

「……なんだ」

「焦る気持ちは分かります。ですが焦りは判断を鈍らせる。信頼とは、大きな手柄を一つ立てて取り戻すものではありません。小さな、誠実な行動の積み重ねによってのみ、再構築されるものです」


 彼の言葉は皮肉っぽくもあったが、的確な助言だった。

 小さな、誠実な行動。

 今の俺にできることは、それしかないのかもしれない。


 話しているうちに、道は森の中へと入っていた。

 その瞬間、道の両脇の茂みから数匹の緑色の小鬼――ゴブリンが棍棒を手に飛び出してきた。


「ひいっ! 魔物じゃ!」


 依頼主の老夫婦が悲鳴を上げる。

 アリアが即座に荷馬車の前に立ち、剣を抜いた。


「……ゴブリンか。数は五。ケンタ、レオン、両翼から回り込め。ポポロはご老人のそばを離れるな!」


 アリアが冷静に指示を飛ばす。

 以前の俺なら、ここでまた「俺がやる!」と前に出ていたかもしれない。

 だが、今の俺は違った。


「―――了解した」


 俺は短くそう答えると彼女の指示通り、右翼からゴブリンの側面に回り込んだ。

 レオンも左翼から魔法の詠唱を始めている。

 アリアが正面の三匹を一人で引き受ける。

 俺は残りの二匹に斬りかかった。

 スキルは使わない。

 ただ、アリアに教わった剣の基本に忠実に。

 一体の棍棒を受け流し、その勢いを利用してもう一体の胴を薙ぐ。

 その隙にレオンの放った火の玉が一体を焼き尽くした。

 完璧な連携だった。

 あっという間にゴブリンの群れは片付いた。


 戦闘の後、アリアが俺の肩をぽんと叩いた。


「……悪くない動きだった」

「……お前こそ」


 俺たちはどちらからともなく、少しだけ笑った。

 まだぎこちなさは残っている。

 だが、凍りついていた俺たちの間の氷が、ほんの少しだけ溶けたような気がした。


 隣村に無事に老夫婦を送り届けた後、彼らは報酬の金貨とは別に俺たちに包みを差し出してきた。

 中から湯気の立つ手作りの木の実のパイが現れる。


「本当にありがとうございました。心ばかりのお礼ですじゃ」


 その温かいパイを、俺たちは黙って分け合って食べた。

 甘くて優しい味がした。

 誰かのために戦う。

 その当たり前の意味を、俺は少しだけ思い出せた気がした。

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