表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【二作目・完結済み】異世界冒険をライブ配信中! 『神々(視聴者)』からの『恩寵(投げ銭)』でスキルを買って魔王を倒します!  作者: 立花大二
第一部:配信者と勇者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/64

第14話『配信者、ハヤト』

 胡散臭い魔法使いレオンを仲間に加えて数日が経った。

 あいつは意外と、いや、宣言通り非常に有能だった。

 斥候として先行し、罠や魔物の気配をいち早く察知する。野営の際には火や水を魔法でちょいちょいと作り出し、俺の保存食に「風味を良くする魔法です」とかいう怪しげな魔法をかけて、本当においしくしてしまった。

 ポポロはすっかりレオンに懐き、「レオンお兄ちゃん、すごーい!」とはしゃいでいる。

 アリアも最初は警戒していたものの、彼の豊富な知識や的確な判断力を認め始めているようだった。


 俺を除いた三人の間には、早くも一種の連帯感が生まれつつある。

 俺だけが、まだレオンに心を許せずにいた。

 あいつは俺が何か行動するたびに、じっと観察している。

 特に俺が【神託】に反応して眉をひそめたり、スキルショップを開いて宙を眺めたりしていると、その眼鏡の奥の目がキラリと光る。

 まるで未知の生物の生態を観察する研究者のように。その視線がたまらなく居心地が悪かった。


 その日の夜も、俺たちは森の中で焚き火を囲んでいた。

 アリアが剣の手入れをし、ポポロがレオンに教わって木の枝で人形を作っている。平和な光景だ。

 そんな中、レオンが不意に俺に話しかけてきた。


「ケンタ殿。少し、興味深い魔法をお見せしましょうか?」

「……なんだよ、急に」

「『遠見とおみの窓』という魔法です。遠く離れた場所の今の様子を水鏡に映し出すことができるのですよ。もっとも魔力消費が激しく、場所を正確に指定しないとどこに繋がるか分からないのが難点ですが」


 レオンは言うと、持っていた水筒の水を近くの水たまりに注ぎ、呪文を唱え始めた。

 水面がぼうっと光り、さざ波が立つ。やがて、そこに映像が結ばれた。


【神託】:お、すごい魔法

【神託】:これ、他の配信者のチャンネルを観る機能みたいなもんか?

【神託】:軍神マルス:ほう、面白い。例のもう一人の勇者とやらを映してみろ。


 マルス様の神託に、俺はどきりとした。

 見たい気持ちと見たくない気持ちが、胸の中でせめぎ合う。


「……試しに、もう一人の勇者、ハヤトとやらを映せるか?」


 俺が言うと、レオンは待ってましたとばかりににやりと笑った。


「ええ、お安い御用です。彼の魔力反応は特徴的ですから、おそらく捉えられるでしょう」


 再び呪文を唱えるレオン。水鏡の映像が乱れ、切り替わった。

 そこに映し出されたのは薄暗い洞窟のような場所。

 そして、その中心に一人の青年が立っていた。黒髪、鋭い目つき。掲示板で見た似顔絵と同じ顔――ハヤトだ。

 彼は一人で、巨大なミノタウロスの群れと対峙していた。


【神託】:うお、ハヤトじゃん!

【神託】:ミノタウロスの巣か? あんなの、普通は大規模な騎士団で攻略する場所だぞ

【神託】:ケンタのパーティじゃ、入り口で全滅だな


 やかましい。

 俺は水鏡の映像に釘付けになった。

 ハヤトの戦い方は異常だった。

 彼はほとんどその場から動かない。ミノタウロスが突進してくる。その巨体とハヤトの体が接触する寸前、彼は最小限の動きでひらりと身をかわす――フレーム回避、という言葉が頭に浮かんだ。

 そして、すれ違いざまに手にした短剣で、ミノタウロスの足首の腱だけを的確に切り裂いていく。

 派手な剣技も強力な魔法もない。

 ただひたすらに効率的。

 敵の攻撃を完璧に見切り、最小の労力で確実に敵の戦闘能力だけを奪っていく。それは戦いというより、精密な機械が行う「作業」のようだった。

 一体、また一体と、ミノタウロスが足の腱を切られて地面に崩れ落ちる。

 ハヤトの服には返り血一つついていない。


 アリアが息をのむのが分かった。

「……なんだ、あの動きは。人間業ではない」


 レオンも興奮した様子で呟く。

「素晴らしい。まるで敵の行動パターンをすべて記憶しているかのようだ。いや、それだけではない。敵が攻撃を繰り出すコンマ数秒先の未来を、完璧に予測している……?」


 やがてすべてのミノタウロスが動けなくなると、ハヤトは一体ずつ、眉一つ動かさずにその眉間に短剣を突き刺し、とどめを刺していった。

 すべての作業が終わると、彼は懐から手帳のようなものを取り出し、何かを書き込む。討伐数か、かかった時間か。

 顔には達成感も安堵も、何も浮かんでいなかった。


 その時、彼がふとこちらを見た。

 水鏡の向こうから、俺たちを見ているかのように。

 その冷たい目が俺の心臓を射抜いた。


 ――お前は、そこで何をしている?


 そう問われた気がした。


天覧者数ハヤト】:21548

天覧者数ケンタ】:1124


 水鏡の隅に、視聴者数らしき数字が見えた。

 その、圧倒的な差。

 俺は何も言えなくなった。

 焚き火の炎が、やけにちっぽけに見えた。

 第14話を更新しました。

 今回は、ライバル勇者ハヤトの戦闘シーンを、初めて具体的に描写しました。

 ケンタとは全く違う、彼の「RTA走者」としての異常な強さ、感じていただけたでしょうか。

 派手さはないけれど、無駄がなく、どこか人間味を感じさせない。そんな不気味な強さを表現したつもりです。

 

 レオンの「遠見の窓」という便利な魔法のおかげで、これからは時々、こうしてハヤトの様子を覗き見ることができるかもしれませんね。

 

 そして、突きつけられた圧倒的な【天覧者数】の差。

 これを見たケンタの心境は、いかばかりか。

 アリアやレオンも、ハヤトの戦いを見て何かを感じたようです。

 

 自分とは違う、もう一人の勇者。

 その存在は、ケンタの旅に、そして心に、大きな影響を与えていくことになります。

 

 お読みいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ