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【二作目・完結済み】異世界冒険をライブ配信中! 『神々(視聴者)』からの『恩寵(投げ銭)』でスキルを買って魔王を倒します!  作者: 立花大二
第一部:配信者と勇者

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第13話『もう一人の』

 レオンに絡まれた翌日、俺たちはアリアの怪我が回復したのを確認し、そそくさと街を出る準備をしていた。

 あの探るような目がどうにも気味が悪い。これ以上関わると秘密を根掘り葉掘り探られそうでたまらなかった。


 宿を出て街の門へ向かう。

 朝の市場は活気に満ち、野菜を売る威勢のいい声や香辛料の混じった異国の匂いが鼻をくすぐる。

 ポポロが果物を山積みにした露店を見て、目をきらきらさせていた。


「ケンタお兄ちゃん、あれ、なあに?」

「リンゴみたいなもんだろ。美味そうだな」

「たべたい!」


 俺は財布から銅貨を数枚取り出し、店主から赤い果物を三つ買った。

 一つをポポロに渡すと、彼女は満面の笑みで受け取り、小さな口でシャリッと音を立ててかじりつく。

 その姿に俺もアリアも、自然と口元が緩む。

 こんな何気ない時間があるから、まだこの理不尽な世界で正気を保っていられるのかもしれない。

 もう一つをアリアに渡そうとすると、彼女は少し逡巡した顔で首を横に振った。


「いや、私は……」

「いいから。こういうのは、みんなで食うから美味いんだろ」


 半ば強引に押し付けると、アリアは仕方なさそうに受け取り、小さくかじった。

 その硬い表情がほんの少しだけ和らいだように見えた。気のせいかもしれない。


【神託】:青春かよ

【神託】:ヴィーナス様、鼻血出してそう

【神託】:美の女神ヴィーナス:出してるわよ!!! 【恩寵:1000祈力】


 もはや通常運転だ。

 そんな和やかな空気を台無しにする声が、背後から聞こえた。


「――お待ちください、ケンタ殿!」


 振り返ると、案の定魔法使いのレオンが息を切らせて立っていた。

 手には研究者らしからぬ大きな荷物を抱えている。


「……何の用ですか。俺たちはもうこの街を出ますけど」

「存じております。ですから、私もご一緒させていただこうかと」

「は?」


 俺とアリアの声がきれいにハモった。

 レオンはにこやかに微笑んだまま、とんでもないことを言い放つ。


「私もこの街には少々飽きてきましてね。あなた方の旅に同行させて頂ければ、新たな研究対象……いえ、新たな発見があるのではないかと思いまして」


 明らかに俺の力の秘密を探るつもりだ。断る。絶対に断る。


「迷惑です。俺たちは、ただのしがない冒険者なんで」

「ご謙遜を。オークキングを討伐する冒険者がしがないはずもない。それに、私がいればきっとお役に立てますよ? 魔法による攻撃はもちろん、野営の際の火起こしや水の確保、魔物の生態に関する知識もあります。ポポロ君の体調管理も、薬学の知識がありますからお任せを」


 彼は、こちらの事情を的確に分析しメリットを提示してきた。

 確かに魔法使いが一人いれば旅は格段に楽になるのは事実だ。ポポロのこともある。だが……。

 俺が答えに窮していると、アリアが進み出た。


「貴様、目的は何だ。正直に言え」

「目的ですか。それはもちろん、知的好奇心を満たすことですよ」


 レオンは臆面もなく言い切った。


「私はこの世界のあらゆる法則を解き明かしたい。あなた、ケンタ殿が使う『法則の外の力』は、私にとって何よりも魅力的な研究テーマなのです」


 ここまで正直に言われると逆に清々しい。

 だが、だからといって受け入れるわけにはいかない。

 俺が再度断りの言葉を口にしようとしたその時、街の広場が急に騒がしくなった。

 人々が掲示板のような場所に集まり、何かを指差して口々に噂をしている。


「おい、見たか! 西の国からの速報だ!」

「ああ、もう一人の勇者様がまたやったらしいぞ!」

「グリフォンを、たった一人で討伐したとか……!」


 もう一人の勇者――その言葉に、俺の胸がなぜかちくりと痛んだ。

 俺たちは人波をかき分けて掲示板を見た。

 そこには魔法で映し出された簡単な記事が張り出されている。


『西の勇者ハヤト、空の王者グリフォンを単独討伐。王都への帰路を確保』


 ハヤト――もう一人の勇者の名前らしい。

 記事の横には簡素な似顔絵が添えられていた。

 鋭い目つきをした黒髪の青年。どこか冷たい印象を受ける顔だった。


【神託】:お、ライバルの情報きた

【神託】:ハヤト、すげーな。こっちの勇者(笑)とは大違いだ

【神託】:おい、今の神託、ケンタに失礼だろ!

【神託】:でも事実じゃん。あっちは自力でグリフォンだぞ。こっちは富豪神の力でやっとオークキング


 神託がざわつく。

 比べられている――俺と、そのハヤトという男が。

 顔も知らない相手なのに、腹の底から黒くて重い感情がせり上がってくる。嫉妬か、あるいは焦りか。

 その時、隣にいたレオンが興味深そうに呟いた。


「ほう、もう一人の勇者。面白い。実に、面白い」


 彼は俺の顔をちらりと見て、にやりと笑った。


「ケンタ殿。どうです? 彼に負けてはいられませんでしょう。そのためにも、優秀な魔法使いが一人、必要なのではありませんか?」


 悪魔の囁きだった。

 俺はその囁きに抗うことができなかった。

 もう一人の勇者ハヤト――その存在が、俺の判断を確かに鈍らせていた。

 俺は大きくため息をつき、レオンに向き直った。


「……分かったよ。好きにしろ。ただし、俺たちの秘密を探ろうとしたら、その時は……」

「ええ、分かっておりますとも」


 レオンは満面の笑みで頷いた。

 こうして俺たちのパーティに、探究心の塊のような厄介な魔法使いが加わることになった。

 なぜか、胸のざわめきはまだ収まらなかった。

 第13話を更新しました。文字数、いかがでしたでしょうか。

 レオン、強引に仲間入りです。

 彼の口の上手さと、タイミングよく(悪く?)入ってきたライバルの情報。ケンタも、断り切れませんでしたね。

 パーティの頭脳役として、これから活躍……してくれるといいのですが。

 

 そして、ついにその名が明らかになった、もう一人の勇者「ハヤト」。

 こちらは正統派の英雄、といった感じでしょうか。神々の力に頼らず、自力で功績を上げているようです。

 

 彼の存在が、ケンタの心に小さな影を落とします。

 「借り物の力」で英雄になったケンタと、「自力」の英雄ハヤト。

 この対比が、今後の物語の大きな軸の一つになっていきます。

 

 パーティも四人になり、旅はますます賑やかになりそうです。

 読んでいただき、ありがとうございます。次回もよろしくお願いします。

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