第9話 メディアの洗礼、記者の情熱と故郷の悲哀
大手新聞社の編集局。
新城芽衣は、自席でパソコンと格闘していた。彼女の顔には、疲労と、壁にぶつかる焦燥感が滲んでいる。
(デスクの言葉は正しい。だけど、父の死の真相と、この海の不審点を、このまま見過ごすわけには…!)
デスクのベテラン記者から、彼女の原稿は何度も突き返されていた。
「新城。その記事は単なる『感情の吐露』だ。『熱意』はあるが、『裏付け』がない。世論を動かすには、お前の命以上の重みが必要だ」
**チリン**。その時、彼女のスマホに、一通の**『匿名メール』**が届いた。
送信元は不明。添付されているのは、「国際資源外交の極秘入札価格と、某国の裏取引の証拠」が記された、極秘データだ。
芽衣の瞳が、一気に大きく見開かれた。
(これは…これほど決定的な証拠が、なぜ、私なんかに…!?)
彼女は、直感的に「この情報源が、あの冷徹な補佐官、黒木圭介である」ことを悟った。
(彼は言った。「君の正義感は美しい。だが、その熱意は、命取りになりかねない」。**…あの時、彼は私の目を、ただの記者としてではなく、私という個人として見てくれた気がした**)
**彼女の正義感の奥で、圭介への、まだ小さな、しかし強い憧れの火が点った瞬間だった。**
芽衣は、キーボードを叩く指に、血が滲むほどの力を込めた。
**「論理と証拠。そして、私が命を懸けて掴んだ正義」**
彼女の記事は、国際資源外交における「日本の国益を損なう裏取引」の存在を、具体的かつ詳細に暴露した。
**翌朝**。
新城芽衣の記事は、大手新聞の一面トップを飾った。**その記事は、眠っていた国民の国益への意識を、一瞬で叩き起こした。**
「総理特別補佐官の助言か。やるな、圭介」
小林鷹志総理は、圭介に目配せを送った。
圭介の指先が、情報送信のエンターキーを押した時、そこに迷いはなかった。**それは、未来を変えるための、最も合理的な一手だった。**
(イーロンの言う通りか。**「世論という光」**が、田中の**「極秘データ」**と結びつき、新たな**「調和の欠片」**のエネルギーを生んだ)
圭介は、左腕の紋様が僅かに温かいのを感じた。
(彼女の命取りになる前に、この危険なゲームから遠ざけなければならない)
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【Xにて設定やイラストを補足しています】https://x.gd/vIi51




