第16話 老雄の知略と闇の将軍の終焉、総裁選、完全勝利
国会議事堂、総裁選投票日。
黒木圭介は、小林鷹志総理の陣営本部で、冷静に票の行方を見守っていた。彼の隣には、今や公私共にパートナーとなった白石葵が、情報局次席として、全ての情報を統括している。
(未来の記憶では、この瞬間、小林総理は敗北し、国は属国化の道を辿る)
チートの信頼度を示す左腕の紋様は、微かに温かい。**「愛の成就」**という最大の歪みを生んだ後、彼の心は驚くほど静かだった。
「麻生泰郎先生、小澤一郎先生の動きは?」
「麻生先生は、予定通り」
葵の言葉に、圭介は頷いた。
圭介は、事前に麻生へ、小澤が最も恐れる「未来の敗北のシナリオ」という、チートの情報を渡していた。**そのチートの裏には、「一人の女のために世界を変える」という、麻生が最も理解できないはずの狂気の信念が乗っていた。だが、老雄は、その狂気を信じた。**
**開票が進む**。
小林総理の支持率は、当初の予測を大きく上回って推移する。
**その頃、都内某所の隠れ家**。
「馬鹿な。この票の動きは…!?」
小澤一郎は、テレビ画面を見て、眼を剥いた。彼の隣には、焦燥に顔を歪ませた観星会の幹部が立っている。
麻生泰郎からの、極秘のメッセージが彼の脳裏にフラッシュバックする。
**そのメッセージは、麻生と小澤の、数十年にわたる政界での「沈黙の対話」の末に生まれた、最終結論だった。**
「時代の流れには抗えない。だが、自ら流れを選ぶことはできる」
彼は、観星会の幹部を睨みつけ、静かに告げた。
「総裁選は、これで終わりだ。君たちに、私の『未来の選択』は変えられない」
**その言葉は、彼が己の全人生のプライドを賭けて、「調和の論理」という見えない運命に放った、最初で最後の抵抗だった。**
**夕方**。
小林鷹志総理が、総裁選で**圧倒的な勝利**を収めた。陣営本部には、歓喜の雄叫びと、紙吹雪が舞い上がった。総理の瞳には、勝利の光と共に、これで「失脚」の未来が遠のいたことへの、深い安堵の涙が滲んでいた。
小林総理と、対立候補であった小泉新次郎が、固い握手を交わす。
「小泉くん。君の理想は、この政権に不可欠だ。副総理として、国を支えてくれ」
小泉は、敗北を認めつつも、そのカリスマ的な瞳を輝かせた。
「承知しました。黒木君の知略、そして、**その知略が導く『未来の光』**が、この国に不可欠だと判断しました。副総理として、その狂気の未来に、私も賭けましょう」
**その時、小泉の視線が、圭介の隣に立つ葵を一瞬捉えた。**
(小泉は、圭介の狂気の動機が、その女の存在にあることを、本能的に察知していた)
圭介は、葵と静かに視線を交わした。**その安堵の瞬間、左腕の紋様がチリッと痛んだ。**(分かっている。これほどの歪みは、当然の代償だ)
葵は、その瞳で「あなたは、あの時の裏切りを、完全に書き換えた」と、無言で伝えた。
(愛と国を救うための、最初の政治的勝利だ。葵、君の運命は、もう僕たちのものだ)
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【Xにて設定やイラストを補足しています】https://x.gd/vIi51




