第14話 愛の成就、満月の夜の逆転劇
国会議事堂を見下ろす、都内某所の古いカフェ。
黒木圭介は、窓際の一番奥の席で、静かにコーヒーを飲んでいた。外は、約束の**満月の夜**。
（彼女は来ない。観星会の指令を拒否し、身を隠した。…だが、彼女は必ず**『愛の証明』**を残していく）
圭介の左腕の紋様は、微かに熱を帯びている。彼の心は、再会への焦燥と、裏切りのトラウマが交錯し、張り裂けそうだった。
**チッ**。彼のセキュリティ端末が、短く振動した。
（来たか。身を隠す前に送られた、**愛と裏切りのメッセージ**）
それは、葵が身を隠す直前に送った、**「観星会の裏情報」**が保存された端末メモリの**「受け取り場所」**を示す暗号コードだった。
圭介は、そのメモリを、すぐに蒼鷹会のメンバーに解析させる手配をした。
しかし、その直後、カフェの入口に、不審な影が差した。
（罠か。葵は裏切らなくても、**観星会は、この「愛の布石」を罠として利用する**と計算していた）
圭介は、即座に、自分のテーブルの下に仕掛けておいた「小型の通信ジャマー」を起動した。
その影が、窓際の席に近づいてくる。彼らは、**「ハニートラップの決行」**が失敗したと見て、**「情報強奪と口封じ」**に切り替えた観星会の実行部隊だ。
「黒木補佐官。少し、お話を」
男の一人が、圭介の前に立ち、冷笑を浮かべた。
「ご冗談を。ここは、過去の愛を清算するための、二人だけの場所だ」
圭介は、その言葉を吐き出すと同時に、未来の記憶が持つ「格闘スキル」で、男の懐に飛び込んだ。最小限の動きで、男の頸動脈を狙う。
（チートが示す、彼らの行動パターン。全てが予測の範疇だ）
**その男が、葵に銃口を突きつけた王毅然の部下である**という未来の記憶が、圭介の脳裏に一瞬グリッチした。**彼は、愛する者を弄ぶ者への激しい怒りを、その拳に込めた。**
男は、圭介の圧倒的な速度に、一瞬で顔面蒼白になった。
**数秒後**。
カフェの裏路地。圭介は、実行部隊の数名を無力化し、彼らが持っていた「葵を再び罠に嵌めるためのツール」を回収した。
彼は、誰にも見られぬよう、汚れたスーツを払い、激しい息切れを抑えた。**この戦いのすべてを、知っているのはイーロンと、そして未来の記憶を持つ彼だけだ。**
（葵が残した情報と、僕が回収した「罠のツール」。これで、彼女が仕掛けた裏切りが、すべて無効化できる）
彼は、夜空に浮かぶ**満月**を見上げた。
（君は逃げた。だが、君の愛は、僕の手に残った。あとは、僕が「赦し」という名の、究極の愛を証明するだけだ。君の罪も、僕のトラウマも、すべてこの夜、終わらせる）
**その満月は、二度目の人生で初めて見る、混じりけのない、清らかな希望の色をしていた。**
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【Xにて設定やイラストを補足しています】https://x.gd/vIi51
