第四十三話 絵画展
コンテストに選ばれた作品は、沢山の人が集まる絵画展に展示されていた。
美鈴の作品も数多くある展示の中に、額で飾られていた。
「あっ、これじゃん。美鈴、あったよ!!」
「もー、鈴。ここは走ったら駄目なんだよ~」
美鈴と鈴、あと、車いすに座っている柊が絵画展に遊びに来ていた。
美鈴の絵を見つけて、一番興奮しているのは、なぜか鈴。
美鈴は、柊の車いすを押しながら、ゆっくりと自分の絵の前に立った。
タイトルは、また違うものが頭に浮かび、今回は変更していた。
三人で見ていると、鈴が急に目を細め口を開く。
「それにしても、なんだか不思議な経験だったよねぇ〜。これを見るたび、今回のことは思い出しちゃうかも」
「確かに。私も忘れないと思う。多分、柊先輩も」
柊は、まだ完全に感情が戻ったわけではなかった。
けれど、人の会話を脳で処理することはできるようになり、今の美鈴の問いかけに、小さく頷いた。
これは、美鈴達が毎日毎日、声をかけていたからだ。
絵についてや、学校生活についてなど。なるべく楽しい話を聞かせてあげていた。
「――――それじゃ、次行こうか」
「うん」
美鈴と鈴が、その場から居なくなる。
車いすの音を鳴らしながら、姿が消えた。
また数分後、美鈴の絵の前に影が現れた。
立っているのは、ポロシャツを着ている明人と、少年姿のカクリ。
レーツェルは絵画に興味がないと、今日は共に居ない。
カクリも正直興味はないため、なぜここに来たのかわからず明人を見上げた。
「明人よ、なぜこんな所に来たのだ? まさか、依頼人の絵が気になったのかい?」
「んなわけあるか、阿保」
明人は、美鈴の絵画のタイトルを見て、「ほぉ」と、関心の声を上げた。
「これは、面白いな」
「なんと書いているのだ?」
タイトルは漢字一文字。そのため、カクリは読めない。
明人に聞くと、面白そうに答えた。
「これは、匣と読む」
「はこ? なぜ、これが《《箱》》なのだ?」
「さぁな。だが、これは面白い。俺も使わせてもらおうか」
クククッと喉を鳴らし、明人は歩き始める。
また、なにかよからぬことを考えているんだなと思いながらも、カクリは明人の後ろをついて行った。
「あの作品のタイトルに使われている匣と、カクリが勘違いした箱は、少しだけ意味が違ったはず」
ブツブツと呟きながら明人を横目に、カクリは眉を顰めた。
「感情に蓋をする、それを開ける。くくっ、これからは俺の力の説明も、簡単そうだ」
「明人?」
カクリがまた質問しようとするが、明人は何も言わずに歩き続け、絵画展を後にした。
毎度、置いてけぼりにされているカクリはまた顔を赤くし、怒りながら明人を追いかけた。
「何を考えているのか教えるのだ、明人!!」
ここから、二人の物語が大きく動き出す。
様々な依頼を受け、様々な感情に触れていく。
そんな未来を一切考えていない明人は、新しい言葉を頭に刻み、ただ真っすぐ前だけを見て、歩き続けた。
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