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第三十三話 心残りな言葉

 柊の家がわからない二人は、ひとまず一番近い精神外科を探し、連れて行った。

 そこから警察まで動き、少し騒ぎとなってしまった。


 家にも連絡が入ったらしく、母親らしき人が警察署へと来たところまでは、二人は柊の姿を確認出来ていた。


 親が来たからもう大丈夫だよと警察に言われてしまい、二人は心配しながらも帰るように促される。


 抗うことも出来なかった為、その後どうなったのかわからない。

 わからないけれど美鈴と鈴は、何やら嫌な予感が頭に走っていた。


 その日の夜も、心配で仕方がなかった。

 落ち着かず、習慣となっていた絵も描けなかった。


 仕方がないと思い、美鈴は布団にくるまりそのまま眠りについた。


 次の日は土曜日だったため、学校はお休み。

 だが、やはりまだ、一人で家にいるのは落ち着かない。


 美鈴は、部屋着のままベッドの上に寝転がっていた。


 早く、テーマを決めたのだからコンテスト用の絵に手を付けたいと考えるが、体が動かない。


 昨日の出来事が頭にこびりつき、離れない。

 明人の言葉と、鈴の言葉が何度も何度も頭で繰り返される。


 どっちも正しくて、どっちも間違っている。

 明人は、現実を見て言葉を発し、鈴は理想も混じって言葉を放っていた。


 そう考えると、明人の考えの方がこの世界では当たっているのかもしれない。

 だが、それだけではあまりに無情だ。


 なにか救いが欲しい。

 そう考えるのは、美鈴が自分に甘いからだろうか。


「…………柊先輩、大丈夫だろうか」


 明人の言葉にも捕らわれていたが、柊が今どうなっているのかもわからない。

 元に戻ったのだろうか。普通に、話せるようになったのだろうか。


 連絡先も住所も、何もかも知らない。

 知っているのは、名前と年齢だけ。


 趣味は、絵だと思う。

 けれど、それ以外は? 普段は何をしているのだろうか。


 今までは当たりが強く、今以上に関係を悪化させないように必死に関わらないようにしていた。

 けれど、今のような状況になり初めて、後悔した。


 悪化を怖がらず、もっと仲良くなれるように努力をすればよかった。

 当たりが強いことを恐れず、声をかけ続ければよかった。


 でも、今考えても仕方がない。

 仮に、過去に戻れたとしても、また同じことの繰り返しだろう。


 それなら、今できることを考える方が合理的だ。

 そう考えた美鈴は、眉を吊り上げベッドから起き上がる。


 瞬間、スマホが震えた。


 出鼻くじかれたと思いつつもスマホの画面を見ると、すぐに通話に出て耳に当てた。


「鈴!?」


『よかった、出てくれた!』


 着信は鈴からだった。


「どうしたの?」


『柊先輩の家がわかったの。先輩の同学年の人に聞いたんだ。心配だし、行ってみない?』


「行く」


『即決、さすが!! それじゃ、善は急げ。これから行こう!』


 すぐに電話を切って、出かける準備を始める。

 待ち合わせ場所は、学校。そこからの方が柊先輩の家には近いらしい。


 近くに合ったパーカーとジーンズへと着替え、スニーカーで外に出た。

 全速力で走り、学校へと向かう。


 息が切れ、汗が流れ始めた頃に学校へとたどり着いた。

 すぐに鈴も学校に着き、息を整える。


「やっぱり、気になるよね。柊先輩のこと。でも、美鈴はいいの?」


「いいのって、何が?」


 鈴が改めて言うように美鈴へと問いかけた。

 その内容がふわふわしている為、美鈴は何が言いたいのかわからず首を傾げた。


「美鈴は、今まで先輩に酷いことされていたんだよね? だから、いいのかなぁって、思って……」


 そういうことか、と美鈴は薄く笑みを浮かべた。


 おそらく、明人の言葉がまだ、鈴の頭にも残っているのだろう。

 それに縛られ、美鈴が嫌々動いているのではないかと不安になっているのはまるわかり。


 美鈴は目を細め、地面へと視線を落とした。

 やっぱり、何か思う所があるんだと鈴は思い、不安そうに美鈴を見つめた。


「…………一年生の頃から、柊先輩のことが怖かった。初めて私が絵を描いてから、見せてから態度が変わって……。正直、仲良くしたくはないし、どうなってもいいという気持ちも少しはあるの」


 美鈴の素直な気持ちを聞くと、鈴は胸が締め付けられる。

 なんと声をかければいいのかわからないでいると、美鈴が顔を上げた。


「それでも、柊先輩の表情が頭を離れないの。気のせいかもしれないけど、助けを求めてきたような気がした。だから、それがどういう意図でなのか気になるし。今までの嫌がらせの理由も聞かないと。もう、なんで? と気にするだけで行動を起こさないのは嫌なんだ」


 決意が固い表情を浮かべ、鈴に言い切った。

 その言葉に驚きつつも、美鈴の気持ちがわかり、鈴は満面な笑みを浮かべた。


「強いね、美鈴」


「鈴のおかげだよ。鈴がいたから、私の考えはここまで変わったの。本当に、ありがとう」


 お互い笑い合い、すぐに柊の家の住所を確認する。

 場所を共有して、二人は走り出した。


ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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