表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/43

第二十三話 強制睡眠

「「はぁぁぁぁぁぁあああ」」


「お疲れ様だな」


 二人が林を出たことを確認すると、カクリと明人がソファーに座り、項垂れた。


「疲れた……、眠い」


「私もだ。ここまで考えなければならないとは思わんかった」


 明人は何度も欠伸を繰り返し、カクリは天井をぼ〜っと眺めている。

 そんな二人を見て、レーツェルはクスクスと笑う。


「それにしても、今回、ここまでうまくいくとは思わなかったなぁ。カクリが必ず途中で突き放すと思っておったぞ」


「突き放したかったですよ。だって、めんどくさいですし、私にはあの二人の関係がどうなろうと興味はありません」


 カクリが天井から目を離し、レーツェルを見た。


「それに、突き放してしまえば意味はないのでしょう? 思ったことを口にしてと言われていたため、突き放す以外の疑問をすべてぶつけたのです」


「それが、良い方向へと進んだのだな。よくやったぞ」


 褒めるように、カクリの頭をレーツェルが撫でた。


「人間の思考には、偏りがある。思い込みで現実を見えていないことは多々ある。それをカクリが見せたのだ。客観的かつ、感情に身を委ねないカクリだからこそ、純粋な言葉だからこそ、あの人間に届いたのだろう」


「そう、なんですか」


 まだ、はっきりと理解出来ていないカクリだったが、褒められたのだろうと少し照れる。


 顔を背けると、レーツェルが次に目を向けたのは、座っているのがやっとの状態である明人だった。


「人間よ、力はどうだ?」


「どうだとは、どういうことだ。何が聞きたい」


 顔を上げることすらせず。明人は質問を質問で返した。


「力を使い、明人は二人の人間の記憶を覗いた。あの二人の関係性、すれ違い。それを見て、心は痛くなかったか? 心は、疲れてはおらんか?」


「それこそ、なぜ聞く」


 ゆっくりと顔を上げる。

 明人の表情が暗く、瞼は重そう。

 顔が青く、疲れているのが目に見えてわかる。


「なぜ、俺が心を疲れさせないといけない。そもそも、二人の関係性など、俺には関係ないんだ。余計なことを聞くな。俺が必要なのは、これだ」


 言いながら、明人は拳をレーツェルに突き出した。

 握っている指の隙間から、微かに光が漏れている。


「上手く抜き取れたらしいな。先ほどの人間が持っていた、記憶の欠片を」


「これ、どうすればいいんだ? なにか握っている感覚があるわけじゃねぇけど、確実に俺は、なにかを握ってるよな」


 指から見える光を見て、明人は眉を顰めた。

 レーツェルは「待っておれ」と、懐から小瓶を取り出した。


「これに、注ぐように入れるのだ」


「へいへい」


 見た目は、普通の小瓶。

 本当に大丈夫なのかと思いながらも受け取ると、なんとなく違和感を感じた。


 いぶかし気に小瓶を見るが、違和感の正体はわからない。

 口では説明できない感覚に、眉を顰めた。


 疑い深い明人を見て、レーツェルは苦笑いを浮かべた。


「それには、俺の力を込めている。だから、入れても問題はないぞ。今、手で握っている物を注ぐように入れると、記憶をずっと保管できる。やってみろ」


 レーツェルに指示を出され、明人は片眉を上げながらも、言われた通りに小瓶を開け、注ぐように光を入れた。


 その光は、小瓶に入ると液体へと変わる。

 淡く光る、透明な液体が小瓶の中で揺れていた。


 蓋を閉め明人が覗き込むと、美鈴と鈴のすれ違っている関係の記憶が覗き見えた。


「これ……」


「覗き込んだ時に見えた光景は、俺の力を持っている者にしか見えん。それが、俺達の力となり、強くするのだ」


 明人から小瓶を受け取り、レーツェルが覗き込んだ。


「ほぉ〜。これはまた、綺麗な物を抜き取ったな」


「駄目なのか?」


「いや、欠片だから問題はない。本人も、抜き取られたことに気づいてすらいないだろう」


「そういうもんなのか?」


「そういうもんだ」


 小瓶を懐にしまうと、レーツェルは明人を見下ろした。


「なんだ」


「いや、初めてにしては上出来だと思ってな。だが、疲れはたまっておるらしい。今は、ゆっくり休め」


「もんだいねっ――……」


 問題ない。そう言おうとしたら、なぜか急に明人の身体がグラッと傾いた。


 倒れ込む直前、レーツェルが明人を支えたため、ソファーから落ちることはない。

 不思議に思ったカクリはレーツェルの隣に移動し、明人を覗き込んだ。


「何をしたのですか?」


「この男は素直ではない。休めと言っても、休まんだろう。だから、強制的に眠らせたのだ」


 カクリが耳を傾けると、確かに明人から寝息が聞こえてくる。


「人間にとっては、我々妖の力は強すぎる。俺がほんの少し分け与えた力だとしても、このざまだ。使い慣れるまで、時間がかかりそうだな」


 明人の頭を撫でると、ソファーへと横にした。


 レーツェルを見上げているカクリは、今しかないと思い今まで抱えていた疑問をぶつけた。


「レーツェル様、お聞かせ願います。なぜ、このような人間を構うのですか?」


 明人はもともと親に捨てられ、知人に捨てられ、一人で生きて来た人間だった。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ